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case1-2
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「やはり食べられないみたいだ。
わざわざ作ってくれたのにすまない」
「良いのよ。けれど体が心配だから、もう一度病院で見て貰った方が良いんじゃないかしら?」
「ああ、そうするよ」
妻の尚美が代替肉で作ってくれたハンバーグに視線を落としながら、私は明日のでも病院に行く事を決めた。
肉が完全に食べられなくなってから、私は一度医者に掛かった事がある。
もしかしたら肉にアレルギーでも出たのではないかと考えての行動だったが、結果は特に問題無し。
味覚も嗅覚も正常で、考えられるとすれば心理的なものではないかと診断された。
そして翌日の診断結果も私の身体に何ら問題は見付からなかった。
「食べられる物がどんどん狭まっていくのが怖いんだ」
「きっと今に良くなるから大丈夫よ。私が傍についてるから」
ソファーに座って頭を抱える私を抱き締めて安心させてくれる妻。
その優しさが嬉しくて、温もりが安心を与えてくれる。
私は妻を抱き寄せて、首筋に舌を這わせる。
「あんっ」
近頃の妻からは美味しそうな良い香りがして、彼女の肌が、粘膜が、体液が、とても美味しく感じるのだ。
彼女の作ってくれる料理よりも余程。
ソファーでの行為を終えてシャワーで汗を流す。
妻に無理な体勢をさせるのは、お腹の子供にも良くないだろう。
頭で理解はしていても、それをしなければ自分の中で何かが壊れてしまう気がして行為に及んでしまった。
「私は一体どうしてしまったんだろう」
そう呟いたところで答えが出ないのはわかっている。
肉から始まって魚、卵、乳製品、動物の骨を使った出汁、大豆を始めとした豆類、にんにくやブロッコリーなどのタンパク質が多い野菜と、食べられない食材がどんどんと増えている。
このままどこまで食べられる物が狭まってしまうのかはわからない。
何せ私の他に同様の症状を訴えている者がいないのだ。
いつか何も食べられなくなってしまうのではないかと、強い不安にかられている。
「原因は本当に精神的なものなのだろうか?」
そんな疑問を口にしたところで何かが変わる訳ではない。
しかし、何かを考えていなければ不安で押し潰されそうになるのだ。
「ああ、食べたい」
思わず口をついた言葉を首を振って打ち消した。
最悪な未来を想像してしまう自分に恐怖を覚えて、頭を掻き毟る。
湯船に入ってどうにか心を落ち着けてから浴室を出た。
ここ最近の私の体調の変化と、先程の行為で心身共に疲れていたのだろう。
妻は既に寝室のベッドで眠っていた。
私もベッドに入って妻の温もりを感じる。
「愛する妻が傍にいて、お腹には私達の子供もいる。
私は今、とても幸せなはずだ。
なのにどうして、こんなにも怖ろしい欲求が私を支配しているのだろう」
私はこのまま彼女を...そんな想像がまるで自然に浮かんで、慌ててベッドから出た。
言葉に出来ない程に怖ろしい衝動が湧き上がったからだ。
近頃の私は、明らかにおかしい。
この日から私は妻と寝室を共にする事が無くなった。
わざわざ作ってくれたのにすまない」
「良いのよ。けれど体が心配だから、もう一度病院で見て貰った方が良いんじゃないかしら?」
「ああ、そうするよ」
妻の尚美が代替肉で作ってくれたハンバーグに視線を落としながら、私は明日のでも病院に行く事を決めた。
肉が完全に食べられなくなってから、私は一度医者に掛かった事がある。
もしかしたら肉にアレルギーでも出たのではないかと考えての行動だったが、結果は特に問題無し。
味覚も嗅覚も正常で、考えられるとすれば心理的なものではないかと診断された。
そして翌日の診断結果も私の身体に何ら問題は見付からなかった。
「食べられる物がどんどん狭まっていくのが怖いんだ」
「きっと今に良くなるから大丈夫よ。私が傍についてるから」
ソファーに座って頭を抱える私を抱き締めて安心させてくれる妻。
その優しさが嬉しくて、温もりが安心を与えてくれる。
私は妻を抱き寄せて、首筋に舌を這わせる。
「あんっ」
近頃の妻からは美味しそうな良い香りがして、彼女の肌が、粘膜が、体液が、とても美味しく感じるのだ。
彼女の作ってくれる料理よりも余程。
ソファーでの行為を終えてシャワーで汗を流す。
妻に無理な体勢をさせるのは、お腹の子供にも良くないだろう。
頭で理解はしていても、それをしなければ自分の中で何かが壊れてしまう気がして行為に及んでしまった。
「私は一体どうしてしまったんだろう」
そう呟いたところで答えが出ないのはわかっている。
肉から始まって魚、卵、乳製品、動物の骨を使った出汁、大豆を始めとした豆類、にんにくやブロッコリーなどのタンパク質が多い野菜と、食べられない食材がどんどんと増えている。
このままどこまで食べられる物が狭まってしまうのかはわからない。
何せ私の他に同様の症状を訴えている者がいないのだ。
いつか何も食べられなくなってしまうのではないかと、強い不安にかられている。
「原因は本当に精神的なものなのだろうか?」
そんな疑問を口にしたところで何かが変わる訳ではない。
しかし、何かを考えていなければ不安で押し潰されそうになるのだ。
「ああ、食べたい」
思わず口をついた言葉を首を振って打ち消した。
最悪な未来を想像してしまう自分に恐怖を覚えて、頭を掻き毟る。
湯船に入ってどうにか心を落ち着けてから浴室を出た。
ここ最近の私の体調の変化と、先程の行為で心身共に疲れていたのだろう。
妻は既に寝室のベッドで眠っていた。
私もベッドに入って妻の温もりを感じる。
「愛する妻が傍にいて、お腹には私達の子供もいる。
私は今、とても幸せなはずだ。
なのにどうして、こんなにも怖ろしい欲求が私を支配しているのだろう」
私はこのまま彼女を...そんな想像がまるで自然に浮かんで、慌ててベッドから出た。
言葉に出来ない程に怖ろしい衝動が湧き上がったからだ。
近頃の私は、明らかにおかしい。
この日から私は妻と寝室を共にする事が無くなった。
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