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cannibalism syndrome Ⅰ
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カニバリズム症候群。
今から50年前に発生した原因不明の感染症。
50年前、ほとんど同時期に、全ての大陸で、凶悪な殺人事件が発生した。
殺人事件には共通点があり、犯人は被害者の死体を切り刻み、その肉を食したのだ。
所謂カニバリズムを目的とした殺人事件は過去にも存在したが、それが各地で同時に発生したのが異常事態であった。
各国の警察は事件について捜査をする上でSNS等による犯人同士の繋がりを疑ったが、そういった証拠は一つも出て来なかった。
世界を揺るがすニュースにもなった不可解な出来事であったが、あれはきっと偶然だったのだろうと鎮静化した頃に新たな事件が発覚する。
今度の殺人犯は衝動的に殺人を犯した前回とは違い、計画的に殺人を行い、そして被害者の肉を食らった。
治安の悪い発展途上国で殺人を行い、殺した人間を解体して人の肉を持ち歩いて移動をする。
そして移動した先で殺人を行って、人の肉を補充する。
動物が食料を求めて狩りをする様な本能的な殺人でもあり、事件の発覚を遅らせようとする理知的な殺人でもあった。
カニバリズムを目的とした殺人事件は続く。
発覚する件数こそ少なかったが、それでも完全に無くなる事は無かった。
そんな中ある犯人が逮捕される直前、“これは神の与えた天啓であり、自分は神の意志に従ったまでだ”と、そう言葉を残して自殺した。
その様子は犯人によって動画サイトで配信されていて、全世界に向けて拡散された。
その日から、世界各地でカニバリズムを目的とした殺人事件が一斉に広がりを見せた。
特に近年までカニバリズムが行われていたとされるアジアにおいてはいくつもの凶悪事件が発生し、10万人以上の逮捕者を出し、100万人以上の犠牲者が出た。
行方不明者も多数出て、同時に自ら命を絶つ者も後を絶たなかった。
各国政府は事態を重く受け止めて、事件が広がった要因の調査を行った。
殺人を犯した犯人達は一様にして食事を口にせず、人の肉が食いたいと口にした。
自殺者が残した遺書の多くには、食事が摂れなくなり、それに伴って人間が美味しそうな肉にしか見えなくなったと書かれていた。
食事を摂れず、人を殺して肉を得なければ餓死してしまう。
人を殺すか自分が死ぬかの2択を迫られ、自ら命を絶つ事を選んだのだと書かれていた。
先進国でも途上国でも、富裕層でも貧困層でも起こり得る、異常な食人衝動。
SNS上で誰かが呟いたcannibalism syndromeの言葉が広がりを見せ、ここ日本ではカニバリズム症候群の名で呼ばれるようになった。
人が人を食うカニバリズム症候群。
それは、人類を滅亡へと向かわせる災厄なのかもしれない。
アイ
今から50年前に発生した原因不明の感染症。
50年前、ほとんど同時期に、全ての大陸で、凶悪な殺人事件が発生した。
殺人事件には共通点があり、犯人は被害者の死体を切り刻み、その肉を食したのだ。
所謂カニバリズムを目的とした殺人事件は過去にも存在したが、それが各地で同時に発生したのが異常事態であった。
各国の警察は事件について捜査をする上でSNS等による犯人同士の繋がりを疑ったが、そういった証拠は一つも出て来なかった。
世界を揺るがすニュースにもなった不可解な出来事であったが、あれはきっと偶然だったのだろうと鎮静化した頃に新たな事件が発覚する。
今度の殺人犯は衝動的に殺人を犯した前回とは違い、計画的に殺人を行い、そして被害者の肉を食らった。
治安の悪い発展途上国で殺人を行い、殺した人間を解体して人の肉を持ち歩いて移動をする。
そして移動した先で殺人を行って、人の肉を補充する。
動物が食料を求めて狩りをする様な本能的な殺人でもあり、事件の発覚を遅らせようとする理知的な殺人でもあった。
カニバリズムを目的とした殺人事件は続く。
発覚する件数こそ少なかったが、それでも完全に無くなる事は無かった。
そんな中ある犯人が逮捕される直前、“これは神の与えた天啓であり、自分は神の意志に従ったまでだ”と、そう言葉を残して自殺した。
その様子は犯人によって動画サイトで配信されていて、全世界に向けて拡散された。
その日から、世界各地でカニバリズムを目的とした殺人事件が一斉に広がりを見せた。
特に近年までカニバリズムが行われていたとされるアジアにおいてはいくつもの凶悪事件が発生し、10万人以上の逮捕者を出し、100万人以上の犠牲者が出た。
行方不明者も多数出て、同時に自ら命を絶つ者も後を絶たなかった。
各国政府は事態を重く受け止めて、事件が広がった要因の調査を行った。
殺人を犯した犯人達は一様にして食事を口にせず、人の肉が食いたいと口にした。
自殺者が残した遺書の多くには、食事が摂れなくなり、それに伴って人間が美味しそうな肉にしか見えなくなったと書かれていた。
食事を摂れず、人を殺して肉を得なければ餓死してしまう。
人を殺すか自分が死ぬかの2択を迫られ、自ら命を絶つ事を選んだのだと書かれていた。
先進国でも途上国でも、富裕層でも貧困層でも起こり得る、異常な食人衝動。
SNS上で誰かが呟いたcannibalism syndromeの言葉が広がりを見せ、ここ日本ではカニバリズム症候群の名で呼ばれるようになった。
人が人を食うカニバリズム症候群。
それは、人類を滅亡へと向かわせる災厄なのかもしれない。
アイ
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