月が綺麗ですね

刹那 夢幻

文字の大きさ
上 下
5 / 17
第1章 彼女が綺麗ですね

第5話 沈黙

しおりを挟む
 入学式が始まろうとしている。
 僕たち1年は体育館で集合して、整列をし、花道を通る。そして、席に座った。校長の話、生徒会長の話などあったが、その間、僕は茜をチラチラ見ていた。
 茜の下を向いたりする仕草とか、人に向ける視線の元にある瞳の輝きとか、一つ一つが可愛かった。本当もうパーフェクトヒューマンだ。
 入学式が終わったあと、教室に戻った。席が決められた。偶然にも隣が茜だった。そして、後ろが太一だった。
 
 「席隣だね!」

 「あぁ、そーだね。」

 「よー誠!偶然だな!」

 「お前かよ…」

 こんな普通な会話が僕にはありえなかった。夢のような、本当何年振りだろうか。これがいつまでも続くといいなー。

 「そんな言い方ねーんじゃねーの。」

 「嘘だよー。」

 「ねねー、誠、この子は?」

 「あーさっき話しかけられた。」

 「増田太一っす!よろしくな!太一って呼べよー!」

 「うん!よろしくね!私は野田茜、茜って呼んでね!」

 誰にでも笑顔で、人との関わり方にも慣れている。あれ?俺なんか嫉妬してる?そっか、太一に笑顔だからか。この笑顔も俺のものにしたい。

 「誠。お前は何部はいるんだ?」

 「うーん。まだ決めてない。」

 「そっかーまー俺は見た目通り、野球部だな!茜ちゃんは?」

 「私は…その…忙しいから!部活は入れない。」

 あれ?なんか元気がないぞ。まー気のせいか。

 「僕も帰宅部かなー。なんもできないし。」

 「なんだよ。つれねーなー。」

 こんな会話をしていたが、この後の茜はなんか元気がなかった。まだ、あったばかりで、彼女のことについては何もわからないけど、何かあるのだろうか…。まー触れないでおこう。
 このあと、2人は一緒に帰った。

 「これからも一緒に帰れるかなー」

 ふと茜に聞いてみた。

 「多分ね…」

 やっぱり元気がない。
 
 「なんで元気がないの?」

 やばい!聞いてしまった。均衡を破ったような、そんな気がした。

 「誠には、関係ないよ。」

 「そっかー。」

 このままの雰囲気で何も話さず、2人は同じ駅で降りたあと、それぞれの道へ歩いた。


 
しおりを挟む

処理中です...