異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

まきノ助

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第4章 ワルキューレの子供

69 エリナの悩み

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 エリナは悩んでいた。

「どうして私はこうなったの?」

 確かにチートなスキルを持ってるけど、お兄ちゃんみたいにヤラカシテ無いよね。
 学校が休みのときに異世界に来て、ルミちゃん(スクルド)とコスとポーズを決めてただけなのに。
 少女にされて、魔法学院に通って、大人しく平民の振りをしないといけないなんて。

(エリナは自らアルフヘイムを訪れ、自分から【イズンの林檎】を食べたことを棚上げしてしまっていた)


 ロッテちゃん(シャルロッテ)は皆から注目されてるけど。
 私の方が魔力が高いのに、【認識阻害】のお陰で誰も私に注目してくれないし、覚えてくれないし。


 はぁぁ、コミケに参加したいな~。
 衣装はいっぱいあるけど。大人サイズで着れないしな~。
 暇だから、とりあえず少女サイズに、お直しするかな~。
 目立っちゃいけないって、辛いな~。
 授業も実習以外はつまらないしな~。
 学院に通ってる平凡な女生徒か~。

 ……プチキュン(魔法少女アニメ)みたいに活躍したら楽しいだろうな~。
 年齢もちょうどアニメと同じぐらいなんだけど~。
 はっ、顔バレしないようにコスプレすれば……。
 えへへへへ。


「エリナちゃん?」
 隣の席のユキ(ブリュンヒルデ)が声を掛けてきた。

「お姉ちゃんとお兄ちゃんの分も作っとくね~」

「何を?」

「プチキュンのコスチューム」
「まぁ」




 エリナは学院の授業が終わると、トイレからフォレブ草原の研修所に【転移】した。
 エリナは地下の創作部屋に入り、プチキュンのコスチュームのお直しを始める。


 シュィイイイイインッ!

「おっ、ちびっ子。コミケの衣装か?」
 転移してきたヤマちゃん(オーディン)に声を掛けられた。

「本当のちびっ子に成っちゃったんで、年齢制限でコミケにも出れませ~ん!」
 エリナはワザとらしく拗ねて見せる。

「うんっ! サークル参加以外は大丈夫じゃぞ。 コスプレも参加出来るはずじゃ」

「そうなの~? じゃあ、【転移】して参加してもいいんですか~?」

「勿論じゃ。もう罰を受けたのだから、何でも自由にするが良い」


「え~、平民として大人しくしてなくてもいいの~?」

「はははっ、その姿じゃ誰だか分からんじゃろう。ゼロからのスタートだと思えば良いのじゃ。ワシだってラグナロク後に、好き勝手しておるぞ」

「なんだ~、いいんだ~」

「ふむ、一応ワシの様に顔を変えるとか、隠すとかした方が良いかもな。又、貴族にされても困るじゃろう。ユウリとユキも赤の他人として活動して、貴族に取り立てられぬ様にすれば構わぬ。ゼロから始める異世界生活じゃ」


「それじゃあ、プチキュンになって、『チートでわたしツエェェェ!』って言ってもいいの~?」

「オッケーじゃあ。ただし、人族の支配者層に取り込まれない様にするのじゃぞ」

「は~い。 それと~、今度のコミケでコスプレする時は、保護者になってくださ~い」

「分かった、それもオッケーじゃあ。一緒に【異世界転移】しようぞい」

「ヤマちゃん、大好き~。チュッ!」

 エリナはヤマちゃんのホッペにキスをした。


 〇 ▼ 〇


「と、言う事だから、お兄ちゃん」

「俺達は子供の事が心配だから、当分は今のままでいいよ」

「そうなの~。でも衣装を作ったから、インベントリーに収納しておいてね」

「うん、ありがとう」


「お姉ちゃんもね~。子供のピンチの時は、変身して助けて上げれるでしょう」

「そうですね、ありがとう」

 そこはノルマンド公爵邸の私室で、ユウリの家族が揃っていた。


「カール、ロッテ。貴方達のコスチュームも作ったからインベントリーに入れて置きなさい。人並み以上の力を使う時は、変身しなさいね」

「おば様、インベントリーって?」
「ロッテ! おば様って呼ばないでっ!」

「あっ、ご免なさい。異世界一綺麗なエリナお姉様っ!」

「まぁ、お上手ね。うふふ、お世辞でも嬉しいわ……インベントリーは無限収納箱の事よ。2人供持ってるわよ」


「まぁ、お姉様は私達のステータスを見れるのですね?」

「そうよ、自分や相手のレベルとスキルにも拠るけど【鑑定】スキルで見る事が出来るのよ。自分自身を【鑑定】してごらんなさい」


「自分のステータスを【鑑定】!」

 ピッキィイイイイインッ!


シャルロッテ・ノルマンド
Lv2
職業 魔法学院生徒
種族 人間
HP100 MP100

[パッシブスキル]
ステータスウインドウ
レーダーマップ
インベントリーボックス
物理耐性 魔力耐性
状態異常耐性
体力回復 魔力回復
状態回復
詠唱省略 魔法遅延省略
魔力消費減 経験値倍
成長速度倍 限定解除
気配感知 危険察知

[スキル]
鑑定Lv1
生活魔法Lv2

光魔法Lv1 火魔法Lv2
水魔法Lv1 風魔法Lv1
土魔法Lv1
空間魔法Lv1 時空魔法Lv1

剣術Lv2 弓術Lv2
盾術Lv2



「入学したばかりなのに、沢山のスキルがあります。[パッシブスキル]って、なんでしょう?」

「[パッシブスキル]は、常時発動してるスキルね」


「ステータスウインドウ? あっ、鑑定しなくても、大きな表示が見えますわ」

「どれどれ、うん。お兄ちゃんと同じパッシブスキルね。私とも一緒、はっきり言ってチートね」


「チート?」

「人間離れしてるって事……ユキお姉様、エリナに『異能の力』は見えないけれど?」

「『異能の力』は人智を超える力なので、無いほうが良いのです」


「『幻麗流、紅一閃』も表示されてませんわ」

「それは、私のステータスにもありませんね」

「ふ~ん、表示されない物もあるんだ~」

「そうですね」



「ロッテ、変身する時は、今着てる服を収納して、同時にコスチュームを装着するのです。出来れば、決めゼリフを発して、ポーズを決めるのよ」

「……難しそうですね」


「私が見せて上げるから、よ~く観察するのよ」

「はい……」

「ちょっと待ったぁあああっ!」
 バリバリバリバリッ!

 突如、部屋の壁際の空間が裂けて、ルミナ(スクルド)が現われた。


「エリちゃん、変身する時は私も一緒よ!」

「ロッテに見せるだけだから……でもコミケの練習になるから、一緒にやろ~ねぇ」

「それじゃあ、イクヨ~」


 エリナとルミナは壁際に並んでコッチを向いた。

「「ダブル・クレセント・ライトニング!!」」
 ピッカァアアアアアンッ!

 眩しい光が2人の後ろかあふれ広がり、光が2人を包む。
 そして、変身したフェアリークレストが現われた。

「月の天使!クレストオレンジ!」
「月の天使!クレストピンク!」

「「ふたりはフェアリークレスト!」」

「「闇の力の魔物たちよ! さっさとお宅に帰りなさい!」」


「ルミナ・キラリン・フォーリンスター!」
 光りの粒が集約し、ルミナが更にメタモルフォーゼする。

「光る命!キラリンルミナ! 天使の心と月の意志、ミンナをひとつにするために!」


「まぁ素敵。お姉様達、美しくて綺麗でカッコいいですぅ!」

 シャルロッテは初めて見る変身シーンに感動して、目がウルウルしていた。


「ルミちゃん、キラリンルミナのポーズを練習したんだ~」

「そうよ、エリちゃんがコミケに参加するって、オーディン様に聞いたから練習していたの」

「ふわふわのツインテールが可愛いね」

「うふふ、ありがとう」


「分かったかしら。後ろから【フラッシュ】と【ライト】の魔法を照らすのがコツね」

「はい」


「あとは、コスチュームを出す時に、直接体に装着する事ね」

「はい。やってみていいですか?」

「バンバン、やっていいよ~。私と一緒にやろうね~」

「はい」


 シャルロッテとエリナは壁際に並んで、コッチを向いた。

「「ダブル・クレセント・ライトニング!!」」
 ピッカァアアアアアンッ!

 眩しい光が2人の後ろかあふれ広がり、光が2人を包む。
 そして、変身したフェアリークレストが現われた。

「月の天使!クレストオレンジ!」
「月の天使!クレストピンク!」

「「ふたりはフェアリークレスト!」」

「「闇の力の魔物たちよ! さっさとお宅に帰りなさい!」」


「キャッ、キャッ、キャッ、楽し~い。上手くできたかしら」

「ジョウズジョウズ! 楽しいでしょう、テンション上がるでしょう」

「はい、とっても」


「じゃあ、ロッテも夏コミに一緒に出る~?」

「エリちゃん、ちょっと待って下さい」

 今迄黙って見ていたユキが口を挟んだ。


「ユキお姉様……夏休みだから日本に行ってもいいでしょう?」
 エリナが聞く。

「娘のコスプレはダメなのかしら?」
 ルミナが聞く。

「いいえ、私も練習したいから教えて下さい」

 ブゥウウウウウッ!

 ユウリが紅茶を吹き出した。


「いいのかよっ!」

「あら、コスチュームを貰ったんだから、変身を練習しませんと。貴方もね」


「「ワタシタチモ~?」」
 シャルロッテの妹達2人も真似したいらしい。

「そうね。 エリちゃん、この子達にも衣装を作って下さいな」

「は~い。じゃあプチキュンオールスターみたいにしようね~」

「「ワァァァイ!」」
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