異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

まきノ助

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第3章 異世界で領地を経営します

64 暗殺者ギルド壊滅

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 ある令嬢とダンスを踊ってる時、彼女が不意に襲い掛かってきた。
 ドレスの下に毒針を隠し持っていたのだ。
 俺の首筋をチクンと針が刺す。
 と思ったが、一瞬早くチヨの手が暗殺者の手首を押さえていた。

「きれいな花には毒がある。ってね」
 チヨが陰から出てきて令嬢を拘束した。
 周囲の誰もが、何が起きたか分からなかった。


「地下牢に入れて置いてくれ」

「畏まりました」
 1番近くで側に控えていた護衛騎士が、返事をして連れて行った。


「閣下治療致します。控え室へ参りましょう」
 ナカハラ宰相が言った。


 控室にて、

「閣下……傷が見当たりません、この辺りですよね?」

「チヨが寸前で止めてくれた様だね」
 ナカハラ宰相が顔を近づけて良く見るが、傷を見付けられなかった。


「チヨ、ご苦労様」

「いいえ、ご主人様が分かってらしたので、何かお考えが有ると思い、ギリギリまで待っていました」

「うん、たぶん毒は俺に効かないと思ったんだ。それにチヨの腕も見たかったしね」


「チヨ、見事です。良く防ぎました。……閣下は危ない橋を渡らないで下さい、公爵なんですからっ」

「うん。危ない橋は壊しちゃおうか」

「それは、暗殺者ギルドの事ですか?」

「そうだね」


「はぁっ……組織が大き過ぎます、いくら閣下でもプロの殺し屋数百人を、相手に出来ますでしょうか?」

「あの~、よろしいでしょうか?」

「なんだいチヨ、言ってごらん」

「冒険者の宿の犬人族達は、人族より動きが俊敏で剣術の心得もあります」

「ふむ、犬人族の娘たちは上泉信綱殿に稽古を受けているからね」


「彼女達は、ご主人様と主従契約も結ばれてますので、現状ではご主人様の親衛隊として最適かと思います」

「うん……」


「それでは彼女たちの抜けた穴を埋める為に、研修所の職員をもっと募集しましょう。結構繁盛してますから、職員が足りなくなってしまいます」

「ナカハラ宰相、それならまずハーマルの孤児院に声を掛けておくれ。研修所の侍従長ビアンカも孤児院出身なのだからね」

「畏まりました」


「成人前の子供でも良いよ、見習いとして研修所で教育すればいいから。シスターにも了解してもらってね」

「畏まりました」


「これからも、明るく楽しい職場になるといいね」

「はい」


 〇 ▼ 〇


 俺は宴がお開きになるまで、忍耐強く接待を続けた。とても長く時間を感じた。

「ふーっ、疲れた~」

「あなた、お疲れ様でした」

「ユキもお疲れ様、ありがとう大変だったね」

「受身に徹してましたので、それほどでもありませんでした」


「何か気になる事はあったかい?」

「特にありませんが、漁業も産業も順調の様です」

「それは良かったね。魔力源泉を支配してから、土地も海も恵みに溢れてる様だね」

「はい。貴方も頑張ってますね」

「はははっ、趣味と実益を兼ねてるから、楽しく働いてるよ」

「そのようですね」



 宰相は辞令を発して、犬人族を研修所職員から、新設したノルマンド親衛隊に入隊させた。
 そして、チヨを親衛隊の教官に任命した。
 ノルマンド親衛隊員はモチヅキ・チヨ、犬人族のアンナ、カリナ、サリナ、セリナ、ハルナ、マリナ、ユウナの8人だ。
 そして、親衛隊長は俺の養女ナホコ・ユリシーズ・ノルマンドが就任した。
 幼女でも神獣で、隊員の中で最強だからね。まぁ、もう少し大人になる迄、なるべく現場には出さないけど。
 実質的に現場の指揮は、チヨが執る事に成っている。


「貴族の護衛騎士がいるから彼らを立てておくれ、親衛隊は目立たない様に行動してね。難しいだろうけど、君達に多いに期待しているからね」

「閣下のお側に仕える事ができて光栄です」
 アンナが代表して挨拶をした。


「旦那様にご報告があります、我々は上位進化に1つの条件を残して達しております。どうか、進化条件を満たして下さいませ」

「進化すると、どういう変化があるの?」

「犬の妖精『クー・シー』になると言われてます」

「見た目が犬の様になるのかい?」

「姿は人間にも犬にも変身できると聞いてます」


「今迄に『クー・シー』に進化した者はいるのかい?」

「私達は、見た事がありません」


「進化条件は何だったの?」

「はい。体力、魔力、精神力、武術、そして魔力源泉による生涯の主従契約です」

「生涯の……俺は君達に、結婚して幸せになって欲しいんだ」

「私達は旦那様に付き従う事こそが幸せなのです。私達犬人族の習性で伝統でもあります」


「結婚はしなくていいの?」

「旦那様のお許しがあれば、誰とでも結婚は出来ますが、今はそれを望んでいません。
 私達は……旦那様の子を生みたいと思っています。誰かが産めば全員で養い育てます。旦那様の後継者の為に」

「「「……」」」
 俺と宰相とチヨは何も言えなくなってしまった。


「価値観の違いは棚上げしといて、人間に変身出来るなら上位進化を試みてもいいかなぁ」

「はい」


「トロルヘイムの魔力源泉にテレポゲートオープン!」

 ブゥウウウウウンッ!


 俺は、魔力源泉である大きなクリスタルに犬人族全員の両手を触らせる。

「アンナ、カリナ、サリナ、セリナ、ハルナ、マリナ、ユウナと主従関係を結びます」
「「「「「「「私達は生涯ユウリ様に御使え致します」」」」」」」

 パァアアアアアアアアアアッ!

 クリスタルから光が溢れ俺と犬人族を包んだ。
 光が消えると、7匹の馬の様に大きな妖精犬『クー・シー』の姿があった。
 それぞれ7人とも色が違うが、ラメを散りばめた様に体毛がキラキラしている。

「人属の姿に変身できるかい?」

 シュィイイイイインッ!

 全員が人属の姿に変身した。犬人族時代の顔の面影がしっかり残っている。


「ステータスが、かなり上昇していますね。良い忍者になれます」
 チヨが呟いた。

「チヨ、親衛隊に相応ふさわしい制服を作らせましょう。そして、お揃いのスカーフを巻きましょう」
 とナカハラ宰相が言った。


「それじゃあ帰ろうか。ハーマル城にテレポゲートオープン!」

 ブゥウウウウウンッ!


「親衛隊員を衣裳部屋に連れて行き、制服を作ってもらいます」
 宰相が隊員達を連れて出て行った。




 約1ヶ月後、

 俺は、お揃いの制服を着たノルマンド親衛隊員達を整列させた。
 そしてチヨに話しかける。

「モチヅキ教官、隊員達の訓練が出来たら暗殺者ギルドを討伐するぞ」

「すでに準備は整っています。全員優秀な親衛隊員です」


「オゥちゃんとジュンちゃん……じゃなくて、ローグ将軍とエムジェイ魔術師団長にも同行して貰うからな」

「はい。 暗殺者ギルド本部の場所はアストリアのバーリンです」

(バーリンはドイツのベルリンの辺り)


「それじゃあ、ヘイミル国王に報告して、許可を貰っておこう」

「はい」

 チヨを始め、親衛隊員達はベージュ色の真新しい制服に深紅のスカーフを巻いて、深緑色のベレー帽を被ってる。キュロットスカートにハイソックスが可愛いかった。



 その日、バーリンの町は普段通りに見えて実は違っていた。
 私服のアストリア魔術師団員達が大勢紛れ込んでいた、暗殺者達を逃がさない為に。
 ラウダ魔術師団長の合図と共に、アストリアの騎士達が近辺の住民を避難させると、パフィがドラゴンに変身して、大きな火炎弾を暗殺者ギルドの建物に豪快に打ち込んだ。

 ボワンッ、ドドォオオオオオンッ!
 ズガガガガァアアアアアンッ!!


 そして巨人に変身したオゥちゃんが突進して、門やドアを破壊しながら奥へ奥へと突き進む。

 ドガガァアアアアアンッ!
 ドガガガガァアアアアアンッ!!


 その後に、俺とノルマンド親衛隊が突入して、歯向かう者を叩き伏せて拘束する。
 親衛隊員の武器は、俺が作ったミスリルの魔法剣なので頑丈で軽い。
 しかも敵に触れるとハイボルテージの電気を流すビリビリモードと、超鋭利な高振動刃モードと、刃無しの安全モードに切り替える事ができた。
 暗殺者ギルド長は逃げ出そうとしていたが、チヨが見事に捕まえた。


「お見事、よくやったねチヨ」

 俺はチヨの頭をいい子いい子と撫でてやった。
 気が付くと他の隊員たちも頭を差し出してるので、同じ様に7人の頭をいい子いい子と撫でてやった。


「オラもして欲しいだぁ」

「オゥちゃんもいい子いい子」
「えへ~ぇ」

「パフィもいい子いい子」
「へへ~ン」

「ごちそうさまです」
 チヨが小声で、そう言った。


「ギルドは壊滅したけど、暗殺者は残ってると思うから、これからも油断しないでおくれ」

「「「「「はいっ」」」」」
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