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第3章 異世界で領地を経営します

50 トロルの森を抜けて

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 やっぱり異世界での楽しみは冒険だよね。

 領都からダンジョンに向かって少しづつ攻略していくぞ。
 まずは1人で様子を見ながら歩いて行く。【転移】ポイントを少しづつ進めて行くんだ。
 道が無いので、日本から持って来たトレッキングシューズを履く。

「現地の靴より格段に歩きやすいな、輸入したら冒険者達に売れるだろうか? ハーマルの社交場跡を日本からの輸入雑貨店にしようかな」

 因みにハーマルの屋敷と社交場は、既にスキルを使って修理完了しているが、まだ空家状態である。

「トロルヘイム領の特産品を売るアンテナショップにしてもいいね」


 1人で道無き山と渓谷を歩いてるので、独り言を呟いていると、

『ウフフフフ、そうね』
『ウフフフフ、そうよ』

 俺の独り言に反応したのか、小さな妖精達が集まって来た。
 スプライトやピクシーと呼ばれる者達だ。
 俺の肩や頭の上に乗って笑っている。

「こんにちは、楽しそうだね」

『ウフフフフ、そうね』
『ウフフフフ、そうよ』

 この子達は俺だけに見えているのかな?
 小さなおじさんじゃ無くて良かったな。


 トロルヘイム領主邸からダンジョンに向かうと、トロルの森を抜けて行く事になる。
 初日は森の入口まで行って【転移】ポイントを作り、2日目にオゥちゃん〈オログ=ハイはトロルの上位種〉と一緒に森に入る事にした。

 研修所で朝食を食べてから、オゥちゃんとトロルの森の入口へ転移する。

「オゥちゃん、よろしくお願いします」

「「よろしくだぁ、久しぶりに2人だなぁ」」

「そうですね」

 オゥちゃんは、珍しく本来の姿に戻ってる。5メートルを超える双頭の巨人姿である。
 本人曰く「「双頭でも1人だぁ」」と、言うことだ。


 お昼頃になったが、森に深く入り込んでもトロル達は姿を見せない。

「オゥちゃん、トロル達は何処に行ったのでしょう?」

「「隠れてるんだぁ」」


 オゥちゃんが不意に、ガシッと岩にアイアンクローをした。

「イタタタタッ!」
 ズズズズズッ!

 この前のトロルリーダーが、オゥちゃんにオデコを鷲づかみにされて姿を現した。


「「なぜ隠れていて出て来ないんだぁ?」」

「皆、新領主様が怖いんだぁ!」

「「こんな可愛い顔が怖いのかぁ?」」

「巨人の頭に乗り、雷ビリビリするのは神の使いだぁ!」

「「はーはっはっはー。巨人の頭に乗ってビリビリさせたかぁ」」

「お前様だって子分になってるじゃねえかぁ」

「「オラは親友マブダチだぁ」」

「そうです親友マブダチです」

 ポッ! オゥちゃんの双頭のホッペが赤く染まった。
 もぅ、自分から言っといて照れないで下さいっ!


「トロルの皆さんにお願いがあります! 俺の友達に成って下さい」

「「ユウちゃん、こいつらは子分で十分だぁ」」

「へぃ、子分でも結構ですが、友達でお願いしますだぁ」

「よしっ! 友達に成ったあかしに宴会をしよう」

「「「んだぁんだぁ、宴会するだぁ!」」」


「よ~し、今日は持ってる肉を全部焼いてしまおう」

 俺はインベントリー内の鹿肉と猪肉とオーク肉を全て出した。
 ハーマルの社交場から回収した高級ワイン〈マンドレイクと媚薬は入ってない〉と、街で買った焼酎と蒸留酒も全て出す。
 体の大きなトロルだから沢山飲むだろうと、惜しみなく提供した。

 肉の焼ける匂いに誘われて、トロル達がドンドン集まってくる。
 日本から持って来た焼肉のタレに浸けた。

「焼肉はタレが大事だからね」


 タレを浸けた肉から、益々良い匂いが立ち昇る。

「ヒャッホ~! 肉と酒だ~ぁ」

「ビリビリの新領主様だ~ぁ」

「オゥログ様、久しぶりだ~ぁ」

 ドンドコドンッ、ドンドコドンッ……、
 トロル達は太鼓を叩いて、歌い踊った。

 素のまま自然のままで歌い踊るトロルに、俺も気持ち良く酒に酔う。
 そして何時いつの間にか眠ってしまっていた。


 ふと目を醒ますと、赤い毛の女トロルに膝枕をして貰っている。
 メロンのようなオッパイが、目の前にそびえていた。
 ワインと蜂蜜の甘い香りが心地良かった。



「知らない天井だ……」

 そこは木のほらの中の部屋だった。
 ベッドの中には、赤毛の女トロルが寝ていて、両手でしっかり俺に抱き着いている。

「おはよう」

「おはようございます、領主様」

「名前は、なんて言うの?」

「カルラです」

「カルラ! 良い名前だね」


 余計な事を言わずに、何気なくそっと外に出る。
 すぐ外でお茶を飲んでいたオゥちゃんと、研修所に【転移】して朝食を取った。

「旦那様、昨日の夕食はどちらで食べたのですか?」
 と、ビアンカに聞かれた。

ちなみに研修所が有るフォレブ草原はハーマル侯爵領なので、「御領主様」ではお客様の前で不都合だから、「旦那様」と呼ばせる事に統一して貰った。
「旦那様」でも恥かしいけど……。


「トロールの森で友好の為の宴会を開いて、酔って寝込んでしまったんだ。オゥちゃんと一緒だったよ」

「オゥログ様は1人で帰って来て、自分のベッドで寝てました」

「アゥッ、マジですかっ!」

「はい」


「ユウちゃんは、気持ち良さそうに膝枕で寝てたからぁ、そのままにしただぁ」

「そこは起こしてよ~」

 ざわざわざわざわっ……!

 侍従達がざわざわしてしまった。


「どちら様の膝枕ですかぁ?」

「トロルの美人さんだぁ」

「オゥちゃんっ!」

「違っただかぁ?」

 ドヨドヨドヨッ……!

 空気が悪くなってるぅ!


「トロルの森を攻略したから、今度はドラゴンの巣だね」
 話を変えた。

「呪いの龍ファフニールですね。財宝を山積みにしていて、持ち出す者に呪いが掛かると言われています」
 ビアンカが教えてくれた。

「ドラゴンを退治すると、呪いに掛からないのかな?」

「分かりません」


「宝物を盗んだ冒険者はいないの?」

「聞いた事が有りません。 ただしドラゴンは寝ている事が多く、起こさずに通り過ぎる事が出来れば、ダンジョンに辿り着けると言われてます」

「じゃあ近くに転移ポイントを確保して、寝ている時にダンジョン攻略すれば良いのだね」

「はい」


「じゃあ今日は1人で、ドラゴンの巣まで行ってみようかな」

「旦那様を1人でドラゴンの巣に行かせる事は出来ません。立場を考えて下さい、不謹慎です」

 これってお目付け役を付けられるって事だよね、信頼を失ってしまったのかな?


「ラナお嬢様、旦那様の警護役をお願い出来ないでしょうか?」
 ビアンカがラナちゃん(神獣グラーニ)にお願いした。

「は~い。 旦那様に悪い虫が寄って来たら蹴っちゃいますね」

「やっぱり女性対策なんだ……」

「当然です、疑われるような状況を作らないで下さいっ!」


「ビアンカはしっかり者だね」

「私だって、旦那様にこんな事言いたく有りませんが、これも侍従長としての仕事ですから」

「は~い、分かりま・し・たっ」

「返事は短く。はいっと言って下さい」

「はいっ!」

 ビアンカは説教先生だね、ショートカットの整った顔で言われると迫力が有るし、ちょっとゾクッとする。


「それではラナちゃん、そろそろ行きましょう」

「はい」

「オラも行くだぁ」
 オゥちゃんも一緒に行く事になった。

「トロルの森に、【転移門】テレポゲートオープンッ!」

 ブゥウウウウウンッ!


 トロルの森からダンジョンの有る山を見上げる。
 木が少なく大きな岩がゴロゴロしていた。
 道のりは厳しそうだが、この3人なら大丈夫だろう。


 1時間ほど上って行くと、中腹で日向ぼっこをしている緑色の大きな龍が見えてきた。

 ゴッゴッゴッ…スピィィィッ…

「寝てる! 寝息が聞こえる」

 ゴッゴッゴッ…スピィィィッ…


「横を通り過ぎ、ダンジョンの入口まで行って【転移】ポイントを確保しましょう」

「んだなぁ」
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