異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

まきノ助

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第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

27 コボルト討伐

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 峠を越えると気候が一気に冬へと逆行した、雪が多く非常に寒い。
 食料が無ければ、さぞ心配だろう。

 峠から下る中腹辺りの宿営用広場でまた1泊する。
 焚き火を増やし、熱々のスープを作った。

 俺は気付かれない様に【空間魔法】の【バリアシールド】を、キャンプ全体に包み込むように発動する。
 酸欠に成らない様に、上下2箇所に空気穴を作っておいた。

「食事をして温まった所為か、少し楽に成った気がするな~」

 ユングが独り言をつぶやいていた。


 オゥちゃんと俺とユキは就寝後に静かにキャンプを抜け出して、コボルトの棲家を調べに行く。
 レーダマップを頼りに進んで行くと、100匹余りのコボルトが炭鉱跡を棲家としていた。

「オゥちゃん、どうしますか?」

「可愛そうだが、今ここで棲家を叩くだぁ」

「はい、「銀の翼」に戦う所を見られたくないですしね」


 俺達は正面から堂々と棲家に向かって歩いていった。
 炭鉱の入口から黒いもやの様な負のエネルギーが溢れ出ている。
 異様な臭いも立ち込めていた。

「非常に嫌な感じがします!」

「んだなぁ」


 炭鉱入口に20メートルぐらいまで近づいて、

「【夢幻弓】!、コボルトの棲家の中へ撃てーっッテーッ!」

 ガッ、ドッカァァァン!


 俺は続けざまに【夢幻弓】を連射する。

「【夢幻弓】3連撃!、コボルトの棲家の中へ撃てーっッテーッ!」

 ガッガッガッ、ドッドッドッカァァァァァァン!


 生き残ったコボルト達が、穴から出て反撃してくるのをユキとオゥちゃんが迎え打つ。
 俺はミスリルの短弓に持ち替え、2人を援護射撃した。
 オゥちゃんが大槌の一撃でコボルトの頭を叩き潰し、ユキが一閃で首を切り落としていく。
 50匹程倒すと、穴から出て向かって来るコボルトはいなくなった。

「中に入るだぁ」

「「はい」」


「前方に【ライト】!」

 手の平を向けた方向に、懐中電灯の様な光りが照らす。

 横幅2メートル程の通路を20メートルぐらい進むと大部屋があった。
 7匹のメスの子供が隅に固まって、こちらを見てうなっている。
 傍にはボスらしきコボルトキングが倒れていた。

 俺達が近づいて行くと、コボルトキングが不意に立ち上がり襲い掛かって来た。

 シュッリィイイイイインッ!

 ユキの一閃がきらめき、コボルトキングの首を真一文字に切り落とした。


 部屋の奥に高さ1メートルぐらいの像が飾ってあり、胸には直径20センチ程の赤黒い魔石がめ込んである。どうやらこの魔石から、負のエネルギーが放出されてるみたいだ。

「何と禍々まがまがしい魔石でしょう……。【浄化】!」

 ユキが像に向かって光属性魔法を発動する。

 パッリィイイイイインッ!

 魔石は像と共に砕け散った。


「炭鉱全体を【浄化】!」

 ユキは続けて、両てのひらを高く広げて光属性魔法を発動する。

 シュィイイイイインッ!

 淀んでた空気が一気に澄んで行くのが感じられた。


「オゥちゃん、生き残った子供のコボルト達はどうしますか?」

「襲って来ないなら、このままにするだぁ」

「「はい」」


「この炭鉱は鉄鋼石も人力で採掘してた様ですね、まだまだ沢山原石が埋まってるみたいです。護衛依頼が終わったら、転移して来て採掘させて貰いましょう。廃坑なんだから良いですよね?」

「そうですね」
「んだなぁ」


 俺達はドロップしていたアイテムを拾いキャンプに戻った。町が襲われたので仕方無い事だったが、3人はコボルトの棲家を夜襲したことで気分が滅入ってしまった。

「直接に恨みや被害を受けた訳では無いので、ちょっと後ろめたく嫌な気分ですね」

「んだなぁ」
「はい、そうですね」

 3人の体に【浄化】と【洗浄】の魔法を掛けて、さっさと寝袋に潜り込んで寝ることにした。





「「「お早う御座いま~す」」」

 キャンプ全てに【空間魔法】の【バリアシールド】を貼って置いたので、誰も俺達の夜襲に気付かなかった様だ。

 その日の夕方にオダルスネに到着して、真っ直ぐ食料貯蔵庫に行き、町の人達と一緒に人力で食料荷物を全て降ろした。

 その日は町の宿に1泊した。



 この町には孤児院は無かったが、教会で数人の孤児を預かってると言うので、教会に寄り金貨とパンとオーク肉を寄付した。
 オゥちゃんは、孤児が居ると必ずそのようにしてると言う。見た目と違って心優しい巨人なのだ。

 朝9時にオダルスネの町を出発した。帰りは馭者4人と俺達3人で、当然荷物も少ない。
 峠を越える前に1泊して、越えてからも1泊した。


 2泊目のキャンプ設営時に、レーダーマップに青い光点の反応が映ったので、2人に相談する。

「キャンプを遠巻きに伺ってる者達がいるんだけど」

「んだなぁ」

「周囲の不審者を【探索】【識別】! ……7匹の犬人族ですね。メスの子供の様です」

 ユキが調べて教えてくれた。


「こっちから会いに行くだぁ」

「「はい」」


 俺達が近づいて行くと、犬人族達がひざまずいた。

「俺達に何か用があるのかい?」

 俺が話し掛けると、年長者らしき者が答える。
「私達の群れを率いて下さい。貴方はその権利を得たのですから……」

「……!? もしかして君達は炭鉱跡に居たコボルトかい?」

「そうです。貴方達が呪いを解いて私達を解放してくれたので、元の犬人族に戻る事が出来ました。私達は今、貴方の支配下にあります」


「俺達は君達の家族を襲ったんだよ?」

「強いオスが支配権を争うのは常の事です。私達は呪われて正気を失い、人族の町を襲いましたので、討伐されても仕方有りませんでした。残された私達は、コボルトの王を倒した貴方に従います」


「コボルトキングを倒したのは妻のユキなんだけど」

 俺は、ちらりとユキの顔を見た。

「私は夫に従う貞淑な妻でありたいと思っています、ユウリがリーダーに相応しいでしょう」


「オゥちゃんはどう思いますか?」

「ユウちゃんなら安心だぁ」

「……分かりました。子供ばかりの群れをここに置いてく訳にいきませんから、成人して結婚するまで世話を見ましょう」

「ありがとうございます、不惜身命ふしゃくしんみょうで御奉仕致します」

 相撲取りの昇進挨拶ですかっ!

「……気楽にしてね」


 キャンプに戻り、馭者頭のロンロンに事情を話す。

「馬車は空ですから、遠慮なく乗せてやって下さい」

「有難う御座います。その代わり、帰りの食事はお任せ下さい。美味しい物を沢山作りましょう」

「銀の翼もいませんしね」

「「ははははっ」」


「君達の名前を教えてくれるかい?」
 俺は犬人族の子達に訪ねた。

「私達に名前はありません」
 年長の子が答えた。

「それじゃあ……アンナ、カリナ、サリナ、セリナ、ハルナ、マリナ、ユウナ。これで良いかな?」
 犬人族達の体が光った。

「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」

 年長者から順番に3文字で、あいうえお順で名付けた。特に意味は無いよ。



 無事にリリーメルに帰り護衛依頼を終えて、その日の内に研修所へ帰って来た。
 犬人族は、取り敢えず研修所の客室に寝泊りさせる事にする。

「ご主人様、僭越ながらお願いがあります」

「なんだい、言ってごらん」

「私達は大部屋が良いのです。まだ子供ですから、狭くても7匹一緒でお願いします」

 年長のアンナにお願いされた。


 俺は4人用の客室に、2段ベッドを4つ作って入れた。

「それじゃあ、この部屋を使ってみてくれ、不便だったら遠慮なく言うんだよ」

「はい、ご主人様。……でも、私達にはベッドも布団も勿体無いです。寝藁で結構でございます」

「それはダメ、遠慮せずにベッドと布団を使いなさい。寝藁は却下します」

「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」


 一気に従業員が増えた。
 犬人族の子供達には研修所に限らず、俺やオゥちゃんの家でも働いて貰おうと思う。
 衣食住と生活必需品は現物支給するとして、給料も町の宿並みに支給する事にした。

 えっ! まだお客が来てないから、宿としての収入が無いだろうって?

 今までお金の使い道がほとんど無かったし、生産スキルと豊かな妖精の森の恵みが有るから大丈夫だよ。
 採掘すれば宝石や鉱物が取れるし、山菜・キノコ・果物・蜂蜜・ナッツも取れるから、少なくとも借金をする事には成らないはずだよ。
 7人には、明日から少しづつ仕事を覚えて貰おうね。





 とある人里離れた山城で、魔族会議が行われていた。
 上級魔族達が円卓に居並んでいる。

「人族の町への魔物の進攻はことごとく失敗した!」

まったく……キングやロードを育てるのに大変な苦労をしたというのに」


「オークとオーガの巣に、まだ像が残ってるから、やがて群れが増えてキングとロードが出現するが……」

「一度壊滅状態に成ったのだから、キングとロードは、ずっと先の事だろう?」


「ブリュンヒルデもオログ=ハイも魔王に匹敵すると言われてるから、直接戦う事は避けねばならぬ」

「逆に我々が滅ぼされるかも知れぬ……」


「あの幼児を人質にしてユウリを狙おうか?」

「それが良い。……でっ、誰がやる?」

「…………」

「どうぞ…」

「どうぞ……」

「どうぞどうぞ……」


「ダチョウかっ!」

「もうよいっ、次回の魔族会議に議題を持ち越しにする。みな、よく考えて置くように」
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