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第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

23 エリナ帰郷

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 異世界転移門の魔道術式は、オゥちゃんの家の倉庫の床に書く事になった。
 薪や材木を乾かすための広い倉庫だ。
 とても複雑な魔道術式を午後の自由時間を使って俺とエリナとユキで書いてゆく。



 魔道術式は3日後に書き上がった。

「エリナ、お父さんとお母さんに宜しくね、あと研修所の皆さんにも宜しくね」

「うん、お兄ちゃんも元気でね~。魔石が溜まったら1度帰って来てね~」


「魔石を溜めて新しい家も作る予定だからね」

「ユキお姉ちゃんも元気でね~、お兄ちゃんの事をお願いしま~す。オゥちゃん沢山ありがとぅ、又来るから元気でね~」

「グスン、元気でなぁ。待ってるだぁ!」


 俺とユキとスクルドで魔道術式に両手を置き魔力を流す。沢山の魔力を吸い取り魔道術式が光りだした。

「日本の異世界生活研修所に【異世界転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウウウウウウンッ!


「アイル・ビー・バック! バイバ~イ!」

 エリナがゲートに飛び込む。


「必ず、戻って来るのよっ!」

 スクルドが涙声で叫んだ。




 その日の昼食後、

「フレイヤ様に結婚の報告に行くだぁ」

「「はい」」


「ちょっと気が重いなぁ」

「大丈夫だぁ、どうせもう知ってるだぁ。行かないと、もっと気まずくなるだぁ」

「それもそうですね。ユキ覚悟を決めて会いに行くよ」

「はい、行きましょう」


 妖精の森の中へ深く入り、聖なる泉の前まで来た。
 3人は跪き頭を下げる。

「愛と豊穣の女神フレイヤ様、どうか下僕達しもべたちに姿を御見せ下さい」

 湖から光が溢れ3人を包み込む。
 次の瞬間、3人は大きな白い宮殿の広間に居た。正面にフレイヤ様が立っている。


「よく来ました。3人共、頭を上げなさい。今日ここへ来た用件は何ですか?」

「お久しぶりですフレイヤ様ぁ、いつも豊かな恵みを有難う御座いますぅ。今日は、ユウリとブリュンヒルデの結婚のご報告に参りましたぁ」

「ユウリ、ブリュンヒルデ、結婚おめでとう。貴方達を心から祝福致します。
 ブリュンヒルデよ、オーディン様も私も、貴方の事は最初から怒っていませんでした。ただ王という立場上、敵に騙された貴方を罰するしか無かったのです。唯一の人族出身のワルキューレで在るブリュンヒルデには、人としての幸せを掴んで欲しかったのですが、貴方は
「恐れを持たぬ勇敢なものでなければ結婚はしません」
 と断りました。
 だからオーディン様は、貴方に結婚の呪いを掛けたのです。異能の力を失い人族の妻として、普通の結婚が出来るようにと」


「オーディン様とフレイヤ様のご寵愛に気づかず、我儘を言った私をどうかお許し下さい」

「許すも何もありません。オーディン様も私も、貴方を自分の娘と思い愛していたのですから」

「有難う御座います。オーディン様にも、お礼を言いたいのですが」

「夫はフェンリルに丸飲みにされて、行方も生死も判りません。元々旅好きだったので、或る日突然に帰ってくるかも知れませんが、その時は報告しましょう」

「よろしくお願いします」


「ユウリ、私の養女むすめを頼みますよ。権力争いに巻き込まれない様にしてやって下さい。普通の夫婦で良いのですから」

「はい、ブリュンヒルデが幸せな人生を送れるように努力致します」


「それと、森の小人達がユウリにとっても懐いています、これからも時々お菓子を作ってやって下さい」

「はい分かりました。ですが一度も姿を見た事がないのです」

「小人達は、とても恥かしがり屋です。何も食べなくても生きていけますが、貴方のお菓子が大好きなのです」

「そうなんですね!」


「何事も程々に、やり過ぎないようにしなさい……貴方達3人に愛と恵みの祝福が有ります様に」
 
 3人は、かつて見たことが無い様な7色の光に深く包まれた。
 そして、気が付くと元の湖畔に戻っていた。


「2人の結婚を祝福して貰って良かったね」

「はいっ!」

「良かった良かったぁ」

 その時は、フレイヤから受けた祝福によって、3人のステータスが更にレベルアップした事に気づかなかった。


「引越ししなくてもよさそうだね」

「そうですね」


「でも研修所は作りたいなぁ」

「はい、作りましょう」




 エリナが居なくなって、オゥちゃんが寂しがるかも知れないから、食事は毎回3人で取り続ける事にした。
 午前中はオゥちゃんの家で畑と家畜の世話をして、午後の自由時間に俺とユキは、魔石集めと草原の研修所作りをする。

 3時のおやつの時間には、【転移】でオゥちゃんの家に戻って来て、3人でお茶を飲む。

 オゥちゃんも一緒にダンジョンや研修所作りに行く事があるが、オゥちゃんは【転移】が出来ないので、その時は俺と一緒に【転移】する。

 俺がオゥちゃんに抱き着く度に「キャッ!」と言って顔を赤くした。


 ☆ ★ ☆彡


 毎日楽しく日課をこなして、金曜日恒例のリリーメル町での薪売りの日になった。

「のんびり歩いて行くだぁ」

「はい、そうしましょう」

 グラーニに荷馬車を轢いて貰い、オゥちゃん、ユキ、俺は歩いて町に向かう。
 ナオちゃんは荷馬車の上で寝転がっていた。


「ナオちゃんは大きくなったね。顔付きも変わってきたし、親に似るって言うのか、エリナに似てきた感じがするね」

「んだなぁ、可愛いなぁ」

 町に向かう前に、ユキは髪の色を俺に合わせてブロンドから黒に染めた。
 今回俺の妻として、ユキを冒険者登録する予定だ。


「最初に冒険者ギルドに行くだぁ」

「「は~い」」


 俺達が人気の少ない冒険者ギルドに入ると、受付嬢が慌てて奥に駆けていく。
 スグに、50歳ぐらいのガッシリとした男と戻って来た。

「お早うございます、私はこの町のギルド長のエンリケといいます。恐れ入りますが、奥の部屋へ一緒に来て戴けますか?」

 俺たちは小会議室に通された。


「領都ハーメルへの商隊の護衛完了、お疲れ様でした。オークの襲撃があったと聞き心配していましたが、無事に帰ってきていただき安心しました」

「ご心配有難う御座いますだぁ」


「ところでこんな噂が有るのですが……大男と黒髪の若者と3人の派手な魔女が、オークキングとオーガロードを倒して怪我人を回復し、転移ゲートでアッと言う間に去って行ったと言うのです?」

「「「……」」」


「領主様が褒美を与えたいと探しているのですよ?」

「え~と、お察しの通りですが、名乗り出る気は有りません。褒美も要りません」


「そうだと思ってました。……ところで、そちらの女性はどなたですか?」

「私の妻でユキと申します」

「ユキです、宜しくお願いします。今日は冒険者登録をしに来ました」

「はい宜しくお願いします。無理をしないで安全第一に活動して下さいね」

「はい」


「ところで、あのような大規模な魔物の襲撃は、良く有るのですか?」

 俺は登録待ち時間を利用して、オークとオーガの襲撃に付いてギルド長に聞いてみた。

「いいえ、領都を狙った統制された襲撃は珍しい事です。オークキングとオーガロードが揃って襲撃して来るのも始めての事ですね」


「何か原因があるのでしょうか?」

「分かりませんが、発生場所などの調査以来が既に来ていますね」

「そうなんですか……」



 俺達はユキのギルドカードを受け取ると、冒険者ギルドを辞して広場に向かう。

 新しく作ったカートを荷馬車から降ろす。宅配業者が使ってる様なタイヤが4本有るカートだ。
 町には舗装路が無いのでタイヤは太めに作ってある。
 お客さんの家まで薪を運ぶ為に作ったのだが、それはインベントリーを使う所を町の人達に見られたくないからだ。


 いつもの様に順調に薪が売れていく。
 暖かく成って来ても、料理や湯沸しに薪は欠かせないので、夏でも結構売れるらしい。
 売れなくても自給自足してるし、蓄えも増える一方なので、金銭には困らないけれど、オゥちゃんは町の人達の役に立てるのが嬉しいのだ。

 昼食は、ユキが朝作ったサンドイッチを食べて、ホットミルクを木のカップに入れて飲んだ。
 鞄の中に手を入れてから、インベントリーから取り出したのだ。


「ユキ、朝早い時は昼食を作らなくてもいいんだよ?」

「はい、でも今は作らせてください。妻らしい事をしたいのです」

「うん、ありがとう」

「ありがとだぁ」


 菜穂子には小さく切った生肉とミルクをあげるが、サンドイッチも食べたそうにジッと見ている。

「パン!」
 突然に、ナオちゃんが指差して言った。

「「ナオちゃんが喋ったっ!」」


 俺はサンドイッチを千切ってナオちゃんに食べさせてみる。

「パン、ウマウマ」

 ナオちゃんの体が淡く光り始める。

 ブゥウウウウウンッ!

「あっ、大変だ!」

 俺はナオちゃんを抱き上げて、慌てて妖精の森の家に【転移】した。


 俺に抱かれているナオちゃんは、光りの中で猫耳娘に変身した!
 白銀の耳と髪の毛を除けば、3歳ころのエリナにそっくりだ。

 俺はエリナが置いていったオレンジの布を使い、【服飾】スキルで簡単なワンピースを作ってナオちゃんに着せた。

「2人が心配してるかも知れないから町に戻ろうね」

「パン! ウマウマッ」

「ハイハイ、ウマウマだねぇ」


 俺はナオちゃんを抱いて、再び【転移】して町に戻った。

 隣の鶏売りのお兄ちゃんが、ギョッと目を見開いた。慌ててたのでうっかり荷馬車のうしろに【転移】してしまったのだ。

「えへへ~、シーッ。……黙っててくれると嬉しいなぁ?」

「オッケ~」

 隣のお兄ちゃんがサムズアップでウインクした。



「ユウリ! その、ナオちゃんなの?」

「可愛いだなぁ!」

「エリナちゃんに似てるっ!」


 ユキがナオちゃんを抱き寄せた。

「パン、ウマウマッ」

「はい、いまあげまちゅね~」


「あっ、ナオちゃんは靴を履いて無かったね!」

「食べ終わったら買いに行きまちょうね~。パンツも買いまちょうね~」

 ユキはナオちゃんの御尻を触って、俺に目配せした。


「新しい服は注文してから作るから、2、3日ぐらい掛かるよ。古着で良ければ向こうの出店で売ってるよ」

 隣の鶏売りのお兄ちゃんが教えてくれた。

「ありがとう」



 金曜日の町の広場は、小さなバザールの様だから、靴とパンツを探して見る事にする。

「子供サイズのサンダルは見付かったけど、パンツは売って無いねぇ」

「それなら布を買って、私がドロワーズを縫いましょう」

「ありがとう、そうしようね」

 ナオちゃんはサンダルを履いてヨチヨチ歩いてる、今までは4つ足で歩いてたから、まだ慣れてないみたいだ。


「サンダ~」

 ナオちゃんがオゥちゃんの足にしがみ付き見上げる。

「サンダだねぇ」

 オゥちゃんが顔をくしゃくしゃにして笑ってた。


「そうだ、ナオちゃんを【鑑定】!」

ナホコ・シミズ Lv10
職業 幼児
種族 神獣と虎人族のハーフ
HP1000 MP1000

[スキル]
火魔法Lv5 水魔法Lv5 風魔法Lv5
猫パンチLv10(マルチドレイン攻撃)
親似Lv5(親と瓜二つ)


「ウワァ、幼児なのに凄いステータスだね」

「はい、この事もお口にチャックしましょうね」

「んだなぁ」


「さぁ、今日はもう帰るだぁ」

「「はぁい」」
「ァアィ」




 のんびり歩いて、夕方にオゥちゃんの家に帰り着いた。

「お疲れ様~、夕食にしましょ~ぅ」

 遅くなったので簡単に作って皆で食べることにした。
 ナオちゃんはずっと同じ姿のままだ。
 椅子に座ってスプーンでシチュウを食べている。

「チチュウ、ウマウマ~」

 大人3人の顔がデレデレに成ってしまった。


 短い食休みをしてから【転移】で俺の家に帰ることにする。

「「オゥちゃん、おやすみ~」」

「おやすみだぁ」

 ナオちゃんもオゥちゃんに手を振った。



「ナオちゃんは、私とお風呂に入りますね」

「うん、お願いするね」

「はぁい」



 入浴後、

「ナオちゃんは、どっちのベッドで寝るのかな?」

「イッチョ~」

「「はははっ」」

 今日は取り敢えず、3人一緒に寝る。


「「おやすみ~」」

「ヤチュミ~」



 〇 ▼ 〇



「チッチャイ、イッパイ~」

 深夜にナオちゃんの声で目が醒めた。
 小人さん達が、動き回るナオちゃんを採寸しようと苦労している。

「抱いて抑えてるからねぇ」

 俺がナオちゃんを抱き抑えてるうちに、小人さん達が採寸をおえた。


「ちょっと待っててねぇ」

 俺はインベントリーから、領都で買ったお菓子と俺が作ったお菓子を出して、ミルクと一緒に何時いつもの棚に置いた。
 小人達は恥ずかしがりやさんだから、手渡しは控えたのだ。


『アリガト~』

 棚に載って、お菓子とミルクと一緒に空間に消えていく。


「ババ~イ」
 ナオちゃんが手を振った。

「ナオちゃん、小人さんの邪魔をしないであげてね」

「ウン」


「おやすみぃ」

「ヤチュミ~」



 ☆ ★ ☆彡



「「キャッキャッ」」

 翌朝、ユキとナオちゃんの戯れる声で目が醒めた。


「おはよ~ぅ」

「お早う御座います」

「ハヨ~」


 2人供、お揃いのワンピースを着ている。

「ほら、ドロワーズもお揃いですよ!」

 ユキが2人のスカートを捲くり、俺に見せれくれた。


「いや、見せなくても良いから……でも可愛いね!」

「そうでしょう。起きたら服と木靴とドロワーズが棚に置いて有ったのです!」

「小人さんに感謝だね」

「「小人さん有難う御座いま~す!」」
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