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第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

19 商隊の護衛

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「それでは皆さん、明日の護衛もよろしくお願いしまぁす。 スクちゃんとグラちゃんは明日の朝、家に来て下さいね。 小人さんに革装備を注文しときますから」

「「「おやすみ~」」」

 スクルドとグラーニは、それぞれに帰って行った。
 女子3人すっかり仲良しになってるみたいだ。


『小人さんへ、スクちゃんとグラちゃんの皮装備を作って下さい。お願いします』

 メッセージに素材の革とマフィンとミルクを添えて、いつもの寝室の棚に置く。


「何だか遠足に行くみたいだね~」

「仕事だから、あまり羽目を外さないで節度を守って護衛してね」

「はぁい、おやすみ~」

「おやすみなさぁい」





 俺達5人は翌朝早くに町の広場に到着した。
 既に馬車が4台、出発の準備を終えていた。


「お早うございます、2日間よろしくお願いします」

 そう挨拶してきたのは、体格の良い「ロンロン」という名の中年男性だ。馬車輸送専門の馭者ぎょしゃ頭で、腰には剣を差している。


「道中は私が指揮を執る事になってますので、何かあったら遠慮なく仰って下さい」

「5人とも護衛は初めてだが、宜しく頼むだぁ」

「いえいえ、オゥログ様と知って襲ってくる盗賊はいないでしょうから、のんびりくつろいでいて下さい」

(あぁ、そう言う事かぁ。まぁいいかぁ……)


 先頭の馬車にオゥちゃんが乗り2台目に俺、3台目に女子3人が乗った。3台目の御者は嬉しくてニマニマしている。
 御者4人と護衛5人の合計9人の商隊だ。



 日が高くなった頃、ロンロンさんが声を掛けてきた。

「そろそろ昼食にしましょう」

 御者の1人が取り出したのは黒くて硬そうなパンと乾燥クズ野菜だ。お湯に沸かして粉スープと一緒に混ぜるのだろう。


「お兄ちゃん、研修所で言ってた通りの商隊飯だね……」

「うん。……皆さん、私達も準備して来たので、良かったら一緒に食べて下さい」

 そう言って、悠里はリュックから次々と食料を出していく。
 全て自家製で、砂糖の変わりに蜂蜜を加えてイースト菌とバターで作ったフワフワで香りの良いパンと、鶏肉とジャガイモとキャベツ入りのアツアツトマトスープと、たっぷり煮込んだ甘辛ダレのアツアツ肉串しだ。

「ゴクリ!」と誰かの喉の音が聞こえて来た。


「……ご馳走に成っても良いのですか?」
 ロンロンが訊ねる。

「勿論です。皆さんの分も作ってきましたから、遠慮なくどうぞ」


「ひゃぁぁ、うめぇぇ」
「こんなフワフワで香り高いパンは初めてだぁ」
「スープと肉串も最高だぞぅ」

 御者達から歓声が上がった。


「ふんっ、私のエリナの料理なんだから当然よね」

「そうですね、とても美味しいです」

「スクちゃんもグラちゃんもありがとね~」


 食後の食器を【生活魔法】の【洗浄】と【乾燥】で綺麗にし収納する。
 代わりに紅茶とクッキーをカップと小皿に入れて、1人ずつ皆に配った。

「至れり尽くせりとは、この事ですね。……ユウリさんは【マジックボックス】持ちですね?」

「はい、まぁ、持ってます(シマッタ)」


「ふんっ、そのぐら…いっ」

 慌ててエリナがスクルドの口を押さえて、

「しぃぃっ、……ダメよ」


「はぁはっは~っ、職務上の秘密って事で。 おい皆、今の話は聞かなかった事にしとくんだぞぉぉ!」

「「「へぇい」」」


 食事を終えて、小休止を取る。

「う~んっ、何事も起きませんねぇ」
 俺はオゥちゃんに小声で話しかける。

「んだなぁ、夜は何かあるかもなぁ……」

「そうですね」

 なんとなく背中の辺りがゾワゾワとする。オゥちゃんも何か感じてるようだ。



 夕食後に夜営の準備をして3時間ぐらい経っただろうか、嫌な気配を感じて無言で【探索】スキルを発動する。
 敵意を持った30匹程の何かが迫ってくる。
 何かとは、初めて遭遇する魔物だろう。知っている魔物ならマップに名前が表示されるから。

「オゥちゃん、何か来るよ」

「んだなぁ、皆起こして戦闘準備するだぁ」

「オッケー」


 女子3人は良く寝てるようだ。「スピー、スピー」と誰かの寝息が聞こえてくる。

「エリナっ、起きてっ! 緊急事態だから、大きな声は出さないでね」

「「「はぁい」」」

 3人とも反応良く対応してくれる。馭者たちも起きてきた。


「オゥちゃん、相手が誰だか判りますか?」

「オークだぁ」

「ひっ……」
 御者の1人が思わず声を上げた。

「早く逃げましょう」

「逃げるのは、もう間に合わないだぁ。 おらとグラちゃんが前衛でユウちゃんが中衛、エリナちゃんとスクちゃんが後衛だぁ」

「「「「はいっ」」」」


 ピッタリくっ付けた4台の馬車を背にして陣営を組む。
 オゥちゃんは槌を構えグラーニは長剣を抜く。
 俺は槍を構えて、エリナはマジカルステッキを両手で握る。
 スクルドは……、

「そ、それはフェアリークレストのクレストロッド!」

「いいから黙って、前を向いてなさいっ!」

 スクルドに叱られた。何故かちょっと嬉しい……。

 なんかうしろで2人が踊ってるけど、前を向き続ける事にした。



「来ただぁ!」

「「プルルンプルルンプルリンパ キラリンキラリンピカリンパ!」」

 エリナとスクルドが踊りながら詠唱?する。

「オーク達に【雷嵐】サンダーストーム!」

 ピカピカッ、バリバリバリッ、ドドドドドォオオオオオンッ!

 3人分の【雷嵐】がオーク達を蹂躙じゅうりんした。


 雷が当たらなかった4匹のオークが襲い掛かってくる。

 グラーニが長剣の一閃でオークの首を切り落とす。

 シュリィイイイイインッ!


 オゥちゃんがオークの頭蓋骨を槌で叩き潰す。

 ズッガァアアアアアンッ!


 それを見た残りのオークが慌てて逃げ出した。

「「逃げるものは追わねえだぁ」」
 俺とオゥちゃんで一緒に言った。

「「はぁはっは~」」
 俺はオゥちゃんに合わせて高笑いをした。


「圧倒的ではないか、おらが軍は!」
 エリナがドヤ顔で決めセリフを言った。

 御者の1人は尻餅を着いてアワアワ言っている。


「一瞬で殲滅ですか!……あのぅ、ワルキューレのブリュンヒルデ様とスクルド様じゃあ?」
 馭者頭のロンロンが聞いた。

「「違いますっ!」」
「はいっ、判りました。そう言う事にしときますっ」


 御者の1人が聞いてくる。

「サインッ、欲しいんですけどっ?」

「ダメに決まってるだろうがっ!」
 ロンロンがはたく。

「空気を読めよ!」

「「「いいよ~」」」
 女子3人、顔を見合わせてニッコリ答えた。

「いいんですか?」
 とロンロンが首を傾げる。


『エリ!スク!グラ! クレストと「メッ」しちゃうよ~!』
 色紙に、そう書いていた。

「一生大事にします、家宝にしますっ!」

「はぁ、はいはい。……魔石とドロップしたオーク肉を回収しましょう」


 俺の背中からナオちゃんが飛び降り、未だ息のあるオークに近づいていく。

 ペシッ、ペシッ!

「「「わあぁ、かわい~っ!」」」

 オークに【猫パンチ】をしてるナオちゃんを見て、女子3人から声が上がる。

 サーベルタイガーはオークを倒した。
 オークの体が消えて魔石とオーク肉がドロップする。


「うん? ナオちゃんを【鑑定】!」

ナホコ・シミズ Lv3
職業 従魔
HP300/300 MP300/300

[スキル]
火魔法Lv1 水魔法Lv1
風魔法Lv1
猫パンチLv3
(HP、MP、スキルをドレイン)
親似Lv1(親エリナを真似る)


 ペシペシッ、ペシペシッ!

 ナオちゃんは、生き残ってた瀕死の2匹のオークも【猫パンチ】で倒すと、戻って来てエリナの足に擦り寄った。

「よしよし、良い子だね~」

 エリナはナオちゃんをワシャワシャしてやった。


「もう起きたくないから、キャンプに魔物除けをするわね。【結界】!」

 ピッキィイイイイインッ!

 スクルドが空間魔法を発動した。


「あのぅ、最初からそれで良かったんじゃ?」

 と俺がつぶやくと、

「お約束だから~」
「お約束だよねぇ」
「お約束ですっ」

「「はぁ、はいはいっ」」

 俺とオゥちゃんは溜息をついた。


「「「おやすみぃぃ」」」
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