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第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

4 童話に出てくるあの家!?

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 俺とオゥちゃんと空の荷馬車を轢いたグラーニは、街道途中に放置されてるタクシーの前まで戻って来た。
 太陽は西に傾き夕焼け空になってきた。街道には誰も歩いていない。
 街灯が無いから、日が暮れたら真っ暗になってしまうだろう。


「俺ぁ、元の体に戻るからぁ少し離れててくれぇ、ビックリするなぁ!」

 ドドドドドッ……、

 街道の先から地響きがする。
 何と、もう1人のオゥちゃんがコッチに向かって走ってくる。
 こちらのオゥちゃんも走りだして、お互いに向かって行く。

「「バリュゥゥゥム、エェェックスッ!」」

 2人のオゥちゃんは左手を伸ばして互いにクロスしてから、右手のひじを直角に曲げ、がっちり組み合って、そこを中心に半回転!
 見詰め合って「ニッ」と笑い会った。

 眩しい光とモクモク広がる煙の中から、5メートル程の禍々しい双頭の巨人が顕われる。

「「バリュリュゥゥゥムッ、……どぅだぁぁ!?」」

 2人一緒に俺を見下ろして、ドヤァァァッ、という顔をした。


「大きいです……」

 呆気にとられた俺は、オゥちゃんを見上げてポカンと口を空けていたが、想像の斜め上を行った出来事に何と言って良いか分からなかった。


「「変身ポーズの事だぁ!」」

「変身ポーズ!? はいっ、……良いと思います」


「「「旅人がかっこ良いからやってみろ」ってぇ、手取り足取り教わっただぁ」」

 昭和の変身オタクの旅人ですかっ!


「でも……、はっきり言って、すげーカッケー! ……です。
 オゥちゃん、カッケー!」

「「んだなぁ」」

 オゥちゃんはデレながらボリボリと頭をかいた。


 巨大化したオゥちゃんは、軽々とタクシーを持ち上げて荷馬車に乗せた。
 約1.5トンの重さのタクシー車両を載せた荷馬車を轢いて、グラーニもサクサク歩いてる。

「グラーニ重くなぁい?」

「ぶるん、ぶるるんっ」(なんくるないさ~)

 グラーニは俺の顔を見て、歯茎をだして「ニッ」と笑った。

「フンスッ」
 と鼻息が俺の顔に大量に掛った。



「「薪を買ったお婆さんがぁ、森の家を使えってぇ」」

 オゥちゃんが唐突に話を振ってきた。

「はいっ?」

「「森の家で孫と一緒に大狼に襲われたからぁ、怖くてもう使わないんだとぉ。俺の家から近いんだぁ、明日一緒に見に行くだぁ」」

「……はい」


 街道から妖精の森に入ると二股があり、右に行くとオゥちゃんの家で、左に行くとお婆さんの家だと言う。
 森の中の道はギリギリ荷馬車が通れるぐらいの広さだ。


「「お婆さんの家を鶏の卵と交換しただぁ。遠慮なく使ってええぞぉ」」

「ん~? やすっ! 安すぎますよ!」

「「そおかぁ?」」




 オゥちゃんの家に戻り、タクシーを空き地に降ろしてもらう。

「「もう暗くなるから明日にするだぁ、飯食って風呂入って寝るだぁ」」

「はい」


 オゥちゃんは、家に入る前に元の体に戻った。大きいままでは狭いのだろう。
 ふと気が付くと、もう1人のオゥちゃんは居なくなっていた。
 何処に行ったのだろうか? いったいどういう仕様なのだろうか?





 翌日の朝、畑と家畜の世話をしてから、オゥちゃんと2人で潰れたタクシーを解体して中を調べた。

 しかし、運転手の姿は何処にも無かった、血痕も遺留品も残っていない。
 トランクには異世界生活の為の道具が沢山積まれていたが……。

 運転手さんは、この世界の何処かに滞在してるのだろうか?



 午後からは、お婆さんに貰った家を見に行く事になった。
 2人で、道無き森の中を15分程まっすぐ歩くと、お婆さんの家に着いた。

「オゥちゃんは森の中で迷う事は無いの?」
「んだぁ、生まれた時から樵だからなぁ」


 お婆さんの家は普通の人間サイズの家で、お伽噺とぎばなしの絵本に出てくるような家だった。
 オゥちゃんの家と比べるとかなり可愛いなぁ。

 ベッドと大きめの家具は残ってるが、小物は荷馬車で持って帰ったらしい。

 とりあえず、生活基盤をここで整えようかな。
 1ヶ月後に迎えが来なかったら、ここで暮らしながら帰る方法を探そうと思う。
 そして帰れなくても良いように、研修所で教わった事を実践してみよう。
 ゆっくり必要な物を揃えていこう。


 グラーニは、薪と布団を積んだ荷馬車を1人で轢いて、荷馬車の通れる森の中の道を二股経由でここに来たらしい。

「グラーニすごいすごい! 1人で荷馬車を轢いてくるなんて賢いね!」

「ぶるん、ぶるるんっ」(なんくるないさ~)

「フンスッ」
 と鼻息が俺の顔に大量に掛った。


 薪と布団を家に運び入れたので、寝泊りは出来るだろう。
 幾つか残されたランプが有るので、受け皿に蝋燭をセットしてトックリ型のガラスカバーを被せる。
 倒れ難く、倒れてもガラスカバーのお陰で火事に成り難い作りのようだ。でも火事には十分注意しよう。
 家の中を移動する時に使う為の、取っ手の付いた手元用のランプも有ったので、それにも蝋燭をセットした。
 ランプの火はライターで点ける、もちろん元の世界から持ってきていた物だ。
 ガスが無くなる前に代換案を考えないといけないなぁ。マッチは有るのだろうか?
 オゥちゃんは、どうやって火を点けてるのだろうか?



 オゥちゃんの家への帰りには、森に迷わないように時々赤い紐を枝に巻きながら歩いた。
 日本の異世界生活研修所で教わった事で、貰った荷物の中に赤い紐のテープが沢山入っていた。
 手回し充填懐中電灯もタクシーのトランクに入っていたので、暗くなっても大丈夫だけど、やはりなるべく夜は歩きたくない。


「2人の家を直線的に結ぶ、荷馬車が通れる道を作りたいですね?」

「そだなぁ」


 夕食後に風呂に入り、何もする事が無く、ただただマッタリする。
 今日もオゥちゃんの家のリビングで寝させて貰った。

 明日からは自分の家で風呂に入り寝ようかな。
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