異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

まきノ助

文字の大きさ
上 下
2 / 75
第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

2 異世界人の家?

しおりを挟む
 目が覚めると、そこは寝心地の良いベッドの上だった。

「知らない天井だ!」

 とりあえず、お約束を声に出して言ってみた、せっかくの機会だから。

 柔らかく心地よい、干し藁の上に白いシーツを被せている様だ。
 枕は蕎麦殻だろうか? ちょっと硬めでかなり大きい。
 ベッドはキングサイズと言う物だろうか? これもとても大きい。

 見回すと、そこは10畳間ぐらいの部屋で。
 壁は木材のようだが、窓とドアのバランスがちょっと変だ、天井も高い。
 ドア、窓、椅子等、一つ一つがとてもでかい。

 まさか、異世界に来てるのかな~?



 2、3分経っただろうか? 木製のドアが

 ゴツッ、ゴツッ、

 と、重い音でノックされ、1人の男が入ってきた。


 毛深い2メートルほどの大男だ。
 俺の顔を覗き込むように見てニンマリと笑うと、牙の様な歯が覗く。
 ちょっとビビッタが、とても愛嬌のある笑顔だ。
 はっきり言ってゴリマッチョな外国人……欧米か?

「俺ぁ オゥログ・ハァイ っちゅうだ。きこりだぁ」

 ゆっくりと抑揚をつけて喋りだした。


「私は清水悠里しみずゆうりと言います。ユウリが名前でシミズが家名です」

 とりあえず、異世界転生物の主人公のお約束の、姓名の説明をしておいた。


「なんでぇ森の中で寝てたんだぁ、獣にでも襲われただかぁ?」

「いや、あの、その……、覚えてないです。助けて戴き有難う御座います」


「あぁぁ……、飯食うかぁ?」

「戴きますっ!」



 スープとパンだ。
 木製のお椀とお皿とスプーンで出てきた。パンには溶けかかった分厚いチーズが乗っている。

 ラノベでは異世界飯は不味いと定番だが、パンはナッツの様な雑味がして結構食べられる、スープは塩味だが肉と野菜の旨味が出ていて、素朴な味付けだが美味い。白く濁っているのは羊かヤギのミルクだろうか?

「美味しいです」

「あぁぁ、家で取れた物ばかりだから新鮮だぁ、うめぇだろう」


「ここは森の中みたいですね、お1人で住んでるのですか?」

「うぅんっ、1人かなぁ? 俺ぁトロールって妖精族だぁ、二つ頭で今は分かれてるんだぁ~。帰ってきたら、くっ付いちまうから2人の様な1人だぁ、見たらビックリするだぞぅ?」

「聞いただけでビックリポンです」

 ワォッ! ファンタジーワールド! 本当に異世界に来たのかなぁ? それとも手の込んだドッキリかも?


「お前も妖精族かぁ?」

「人族だと思いますが……人って食べますか?」

「食わねえよぉ、薪を人族の町に売りに行くからぁ、人族は食わねえよぉ、安心しろぉ」


「人族を食べるトロールは居ないんですか?」

「居るんじゃないかぁ? 人族だって魔物や獣を食うだろぅ?」

 地球でも猛獣をペットにする人もいるし、強盗殺人や戦争だって有るし、一概に決め付ける事はできないか。
 騎手や調教師や馬主だって馬肉を食べないとは限らないだろうしね。

 食後の休憩を長く取る習慣? することがないだけ? 宙を見てボーっとしている、マッタリタイムだ。
 テレビは無い、ラジオも無い。
 壁には熊のなめし皮が貼ってあり、地図が書いてある。……他に何もない。


「家の中を見させて貰っても良いですか?」

「あぁぁ、遠慮するなぁ」


 間取りはリビング、ベッドルーム、キッチン、トイレ兼風呂兼洗濯場、物置部屋、外には倉庫が有る。
 キッチンには薪オーブンとパン窯が有る。
 洗い場は有るが蛇口は無い、外からといが通っていて、たるに水が溜まっている。
 シンクの代わりに木製の大きい水舟があり、仕切りで3つに区切ってある。
 湧き水が出る丘の上の溜池から樋を引き、外の大樽に水が溜まってる。
 溜池には関が有り水量を調節できるそうだ。すべて木製らしい。
 ん~、結構文化的生活をしてるんだな~。

「俺が食器を洗いますね!」
「食休みしてからするだぁ」
「はい!」


 水舟の仕切りは真ん中上部が小さく丸く切ってあり、樽の給水栓を抜くと順番に水を満たしていき、最後は排水路に流れ落ちていく。
 仕切られた3つの水舟全てに排水栓が付いていて、栓を抜くと溜まってた水全てが、樋を伝い排水溝に流れていく。
 今使った木製食器は最後の水舟に浸けてある。洗う場所は真ん中の水舟だ。木か草の繊維で作ったタワシでこすり洗う。洗った食器は最初の水舟に入れる。

 トイレ兼風呂兼洗濯場は結構広く、ここも外から樋が通っていて、樽に水が溜まっている。
 樽の横に水瓶みずがめが2つ有り、樽の下のほうにある給水口の栓を抜くと、水瓶に水が落ちていく。
 事後処理は水を桶ですくって流し洗う。床は緩やかな傾斜がついて、真ん中は排水溝が刻まれている。
 汚水がそこを流れて外に出て行くと、小川まで木製の排水溝が続いている。

 リビングは幼稚園の教室ぐらい広く、絵本物語に出てくるような大きな暖炉がある!
 保育園で歌ったペチカを思い出すな~。

 倉庫には樵や農業の道具が有り、材木と薪が積まれている。乾燥小屋も兼ねてるらしく広い。
 外にも材木と薪がたくさん積まれている。薪は十分に乾燥させてから町に持っていくという。生木は燃えにくく、乾燥が足りないと煙が多く出て、熱も上がりにくいからだそうだ。

 畑と家畜小屋もある。
 作物の種類は豊富で、家畜は牛、羊、ヤギ、鶏、馬、小さな池に鴨がいる。
 林檎、洋ナシ、桃の木もある。
 商売では無く、家で使う分だけで、そんなに広くない。
 町で売るのは材木と薪だけらしい。

 近くに他の家は無いようだ。周りを森に囲まれていて、遠くに山脈が見える。

「ここはホクオー国のノーレの森だぁ。『妖精の森』と呼ばれてるだぁ。南に行くとリリーメルの町があるだぁ。明日は薪を売りに行く日だぁ」

「町に一緒に連れてって貰っても良いですか?」

「行って売って帰ってぇ、朝から夜までだぞぉ」

「助けて貰ったお礼に手伝わせて下さい」

「『旅の者をモテナシなさい』と言うだぁ、お礼は要らないだども町に一緒に行くだぁ」

「はいっ、お願いしますっ!」


 まぁ、とりあえず1ヶ月経てば迎えが来るだろうから……。
 それにしても、どうして気絶してたんだろうか? タクシーを何時何処いつどこで降りたんだろう?

 その日は客用のベッドをリビングルームに作って貰い、眠りに就いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...