チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

文字の大きさ
上 下
97 / 100
第3章 魔族王国の迷子令嬢

97 船出

しおりを挟む
 私はタイガーケイブと別れて、船で西の大陸を目指す事を決めました。


「次の船は1週間後だから、王宮の転移部屋から1度ノスロンド領に戻ってみよう」

「はい、そんな事ができるのですね?」

「王宮と各領主の城は転移部屋で繋がっていると聞いてるぞ。確か領主は転移部屋を使う権利があるはずだ」

「分かりました、そうしましょう」


「ジルベルト、その前に、収納していた前領主の討伐ドロップアイテムを山分けしましょうか?」

「そうだな、ミレーヌ」


「それじゃあ、マリエルから順番にひとつづつ選んでくれ」

「は~い」


 私はアッコロカムイのドロップアイテムの中から、転移門の魔道具を見つけました。領主はみんな持っている物らしいのです。

「とりあえず、これを貰います」

「そんなんでいいのか? 転移する質量に比例して魔力消費が増えるから、意外と使いにくいんだぞ」

「はい、御忠告痛み入ります」


 分配が終わり王都で食事を楽しんでから、魔道具でノスロンドの冒険者ギルドに転移門を繋げて帰りました。
 転移部屋ではなく、使用具合を確かめる為に魔道具を使ってみたのです。

 私達が冒険者ギルドに転移門で現れると、人々が集まって来て大変な騒ぎになりました。

「「「新領主様バンザ~イ」」」


 ギルド長が私に挨拶します。

「おめでとうございます。早速ノスロンド城と領主公邸と領主屋敷に案内致します。既に領主が変わったことは周知徹底されているのです」

「そうなんですね」

「【伝言鳩】で伝えといたからね」

 とミレーヌが私にウインクしました。


「留守をしてたのだから、他の人が領主に成っても良かったのに?」

「そんな事は出来ないぞ、国王の承認が無ければ領主には成れないからな。たぶん、前領主を倒した時に国王に承認されたのだろう。そうでなければ、すぐに征討軍が派遣されてたはずだ」

「まぁ、そうだったんですね」


「王都は疫病騒ぎでごたついていたから、認めざるを得なかったのかもね」

「あぁ、そうかもな」

「まぁ、とにかく平和に成ったようで良かったな」

「はい」


 衛兵や役人に迎えられて、お城と公邸と屋敷を見て回りました。

「それでは、私は船で西の国を目指しますので、後はよろしくお願いいたします」

「マリエルちゃん、領の運営について、簡単に希望を教えておいてほしいのだけど?」

「そうですね、税金を安くしてください。領主としての収入は今のところ要りませんので」

「はい」


「ゆっくり楽しくユル~ク『和を以て貴しとなす』でお願いします」

「はぁ……」


「まぁ、なんとなく分かったよ。たまに帰って来いよ」

「はい」





 1週間後、私はベックスタッドの港から船に乗りました。

「ノスロンド男爵様、馬は船倉へ御願い致します」

『船倉なんて息が詰まって御免だぜ。ちょっと待ってくれ』

 シュィイイイイインッ!

 なんと、ブケファロスが消えて、ゴリマッチョなイケメン男子が現れました。


「まぁ、若いのね!」

「大王の容姿を参考にさせて頂いたのだ。見た目は変えられるけど、年配がいいのか? おじさん好きなのか?」

「ううん、それでいいわ」

「そうか」

 アダモとジークンはインベントリの中です。だって船賃が掛かっちゃうから、お金は有るけど無駄遣いは良くないと思ったの。
 因みにブケファロスのブゥちゃんは、生きているのでインベントリに入れられませんでした。


「ノスロンド男爵様、御部屋はいくつ御用意いたしましょうか?」

「ひとつでいいですわ」

「はい、畏まりました」


「ブゥちゃん、一緒の部屋でいいでしょ?」

「いいぞ」


 見送りに来て埠頭から手を振ってる『タイガーケイブ』のメンバーに、デッキから手を振り返します。

「行ってらしゃ~い」

「行ってきま~す」


「達者でな~」

「は~い」


「マリエルちゃ~ん、新刊忘れないでね~」

「なんだそりゃ」

 男のメンバーには新刊の意味が分かりませんでした。


 私はデッキで見えなくなるまで手を振って見送りました。

「お嬢ちゃん、寒いから中に入ろうぜ」

「うん」



 客船のダイニングに行くと、小柄で黒髪ツーブロックの青年が1人でお茶を啜っています。
 変な持ち方で茶碗を持っていました。

「オイ…ガキ共…、これは…どういう状況だ?」

「はい?」


「面白い組み合わせだな…女神と人食い馬とは…この先何処へ行く?」

「マケドニアです」


「ほぉ…悪くない。西へ行くなら俺も連れて行け……俺の名はリヴァイ・アサンだ」

 リヴァイ・アサンとブケファラスが激しく睨み合います。


「お嬢ちゃん、こいつはレヴィアタンだ。今ここで、やっちまいやしょうか?」

「まぁ、三大聖獣の……。今ここで戦ったらお船が壊れてしまうでしょう? 『旅は道連れ世は情け』って言いますから、一緒に行きましょう」


「ふん…面白くなって来た…」

「お嬢ちゃんは、懐が深いなぁ」



「俺はいつも船を沈めてる訳では無い…ゴミが海に増えちまうしな。…時々、こうして極東の海溝にゴミを捨てに来るんだ…ジャマング海溝はクソ深いからな」

「そうなの」


「だが捨てても戻ってきてしまうゴミがあるんだ。お嬢…貰ってくれ」

「はい」

 私はとりあえず手を出して、剣らしき物を受け取りました。


「ほう…そいつが持てるのか、誰も持てないから仕方なく俺が保管してたんだが。…海溝に捨てても戻って来ちまうから困ってたんだ」

「これは何?」

「エクスカリバーだ!」


 リヴァイは次々と私に物を渡していきます。

「これは何?」

「アロンダイトだ」


「これは何?」

「レーヴァテインだ」


「これは何?」

「ミスティルテインだ、グレイプニルだ、グラムだ、グングニルだ、ダーインスレイヴだ、ティルヴィングだ、ドラウプニルだ、ミョルニルだ、メギンギョルズだ、ヤールングレイプルだ……」

「いい加減にしてくださぁぁぁいっ! 神器開店セールですかぁ!?」


「ふむ…さすが女神だ…全部持てるとは」

「今まで、誰も持てなかったの?」

「あぁ…人は寿命が短いからな…不死の俺の所に集まっちまうんだ…俺には…必要ねえのに…」


 ザワザワザワザワ……

 ダイニングにいる他の客が、2人の話を漏れ聞いてザワついています。


「嘘だろ?」

「コスプレじゃないか」

「ごっこ遊びなのか? いい年して」

「きっと、オタクって、やつだろ」


「困ります、お返しします」

「もう無理だ…捨てても戻ってくるぞ。お嬢を持ち主に…決めちまった……」


「はぁ、目立つし、恥ずかしいから、取り敢えずこれ全部を【インベントリ】に収納!」

 シュィイイイイイイイイイインッ!


 船は港に寄りながら、4日後にブランボトックと言う港町に着きました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...