チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第3章 魔族王国の迷子令嬢

86 タイガーケイブの拠点

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 冒険者パーティー『タイガーケイブ』の拠点に一緒に付いて行きました。
 そこは1軒家の持家だそうです。
 石の壁に囲まれた1軒家で、下級貴族の屋敷ぐらい立派な作りでした。


「どうだ、元騎士爵の屋敷を譲って貰ったんだぞ。結構豪華だろう?」

「そうですね……」

(なんか大した事なく感じるのは何故でしょう?)


『御嬢様のお家と比べて、とっても可愛いですねぇ』

「「「えっ!」」」


「アダモさん、マリエルちゃんの家はもっと大きかったの?」

『は~い。ドドーンでズズーンなおうちですぅ』


「……って事は、王女とか貴族令嬢なのかしら?」

『いいえ、マリエル様は私の御嬢様で御主人様なんですぅ』


「えっとぅ、マリエルちゃんの肩書を聞いてるのよ」

『肩も膝もツルツルでスベスベですぅ』


「はぁ、ゴーレムに聞いても無理だろう。普通は命令通りに動くだけで喋ら無いんだから」

「そうよねぇ……それと、関所を通る時はゴーレムを収納して隠さないとね。アダモさんには認識票が無いのだから」

「は~い」


『御嬢様、私はマジックバッグの中でアイテムと一緒に仕分けされて格納されるのは嫌なんですぅ、【無限収納】インベントリに入れて下さいませんかぁ? 広い空間で自由に動けますからぁ』

「へぇ、そうなんだぁ。【無限収納】インベントリにアダモちゃんを収納!」

 シュィイイインッ!

「消えましたわ!」


「む、【無限収納】って、伝説の【時空属性魔法】の異次元空間制御よね!」

「あぁ、これはやばいなぁ。確か、現役の宮廷魔導士でも使える者が居ない筈だぞ」


「それより腹減ったし、疲れたよぅ。早く飯食って寝ようぜ」

「はぁ、そうだったなぁ」




 チュンチュンチュン、朝になりました。

 男女一緒の屋根の下ですが、部屋は2階で、それぞれ1人部屋でしたので心配ありません。
 ドアには鍵も付いてました。

 私は起きて1階に下ります。
 リーゼさんが朝食の準備をしてました。

「おはようございます」

「おはよう」


「お手伝い致しま~す」

「ありがとう」


 リーゼさんがパンを焼いてるので、私は沸いてるお湯でコーヒーを淹れます。

 するとミレーヌさんに起こされて、ドカドカと男達が階段を降りてきました。

「いやぁ、疲れてたからぐっすり寝ちまったよ」

「今日はオフにしましょうね」


「私はマリエルちゃんを案内するわね。服など、これから必要な物も買わないとね」

「ミレーヌ、両替商も行ってくれよな」

「分かったわ」


 朝食を終えてから、ゆっくりと身支度をします。

「それじゃあマリエルちゃん、出かけましょう」

「は~い」


「先ずは生活に必要な物を揃えましょうね」

「は~い」


 私とミレーヌさんは歩きながら会話します。

「皆さんはそれぞれ種族が違うのですね」

「そうよ、リーダーのジルベルトが獅子人族、そしてマッシュが狼人族、ヘクトルが牛人族、私が雪豹人族、リーゼが狐人族なのよ」


「パーティーを組んだ経緯を聞いてもいいですか?」

「えぇ、特別な理由は無いけど。敢えて言えば、生き残った実力者同士が、役割分担で必然的に一緒になったって事かしらね」

「はい、そうなんですね」


「今のメンバー構成になったのは1年前ぐらいなのよ。それまでは色々な理由でメンバーの出入りがあったわね」

「ふ~ん、結構大変そうですね」

「うん」
 


 私達は服と下着を買いに行きました。【生活魔法】の【洗浄】と【乾燥】が使えますので1着でも良いのですが、女の子なので着替えも一応買いました。
 歯ブラシ、シャンプー、石鹸、ヘアブラシ、サンダルも買います。
 報奨金の分け前で十分支払いが出来ました。

「両替商にも行きましょうね」

「は~い」


 ◇ ◆ ◇


「こんにちは~」

「いらっしゃい」

 年配の女性が眼鏡の上からこちらを見ました。


「このお金って両替できますか?」

「ほほう、めずらしいね。ミズガルズの金貨だね」


 女性は使い古されたノートを取り出して、ページをめくって何やら確認しています。

きん取引価格から手数料を引いた金額になるけど、それでいいかい?」

「金貨1枚いくらぐらいになりますか?」

「およそ9万ガルだね」

「はい、それでは10枚両替お願い致します」

 この国の金貨8枚と銀貨5枚がトレーに乗せられて出てきました。


「またおいでね」

「はい。またお願い致します」

 後で気付いたのですが、今の会話でまだミズガルズの金貨を持ってる事が、両替商に知られてしまったようです。


「おい、カモがネギしょってやって来たよ。見つからない様に後をつけるんだよ」

「「へ~い」」


「人気のない所で全て奪っちまいな」

「へ~い。 やっちまっても、いいんですかい?」

「好きにしな」


「ねぇ、マリエルちゃん。お買い物した物はマジックバッグじゃなくて、インベントリに入れた方がいいわよ」

「そうなんですか?」

「だって、バッグを失くしたら荷物も全部無くなっちゃうでしょう。インベントリなら失くす心配は無いからね」

「分かりました。持ってる物は全てインベントリに入れておきますね」

「それがいいわね。だって、さっきから付けられてるみたいだからさ」

「そう…なんですね」


「マリエルちゃん、やからを誘って退治しちゃうから準備しといてね」

「は~い」


 私はステータスを再確認します。

「何が出来るかな~、対人戦に使えそうなスキルってなんだろうね~」

 カチカチとステータスウインドウをいじっています。



 ミレーヌはわざと人気の無い方に歩いて行きました。

 前方の角を曲がって現れた目つきの悪い男2人が、真っすぐこっちに向かってきます。
 後ろを振り返るとそこにも2人、ニタニタと笑いながら立っていました。

 私達はアリタリカの金貨を両替した所為で、悪者に目を付けられて襲われるという事に既に気付いていました。

「ほう、中々結構な上玉だぞ」

「奪って犯して売り飛ばそうぜ」

「あぁ、とりあえず犯しちまおうか」


「くっ、ゲスどもが……」

 ミレーヌの目つきが鋭くなりました。
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