チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

文字の大きさ
上 下
76 / 100
第2章 アリタリカ帝国に留学

76 蜂蜜ヌリヌリ

しおりを挟む
 マリエル達は『未踏のダンジョン』11階の探索を続けています。


 私達は大きな木の幹にビートルを見つけました。1メートルぐらいの個体1匹だけです。

「マリちゃん、日本だとクヌギの木の樹液が出てる所で、カブトムシやクワガタが餌場争いをしているんだよ」

「さすが男の子、良く知ってるね。 スズちゃん、近くに他の魔物が居ないか警戒をお願いします」

「は~い」


「アダモちゃんはフレニちゃんを守って下さいね」

『畏まりましたぁ』


「それでは、このフロアのボスであるヘラクレスビートル戦を意識して、このビートルでシュミレーションを致しましょう」

「「「はい」」」


「エリザとエリシャナは正面からビートルを引き付けます。ケンちゃんとスズちゃんは側面に回りこみ足の関節を切断してください。私とサッチャンは魔法で後方からサポートしますね」

「「「はい」」」



 ガシッ、バシッ、シャァァァッ、ブッシャァァァッ! ズッシャァァァッ!

 エリザとエリシャナが正面でビートルの角攻撃を受けて、側面からケンちゃんとスズちゃんが足の関節を切り落しました。足を切り落されたビートルは、なすすべも無くエリザとエリシャナに横腹を突かれてとどめを刺されました。


「良く出来ました。これならボス戦もいけるんじゃないでしょうか?」

「御嬢様、ボスのヘラクレスビートルはこれの2倍以上の大きさだそうですが」

「それに関節も、もっと硬いと思います」

 エリザとエリシャナがそう言いました。

「そうですか……」


「マリちゃん、俺とスズちゃんなら、たぶんヘラクレスビートルの関節でも切り落せると思うよ」

「そう……スズちゃんもそう思いますか?」

「はい、御姉様」


「それでは、ボスの居場所を見つけたら戦ってみましょうね?」

「「「は~い」」」



 私達はボスを探しながら11階の探索を続けますが、それらしき大きな昆虫は見つかりません。

「エリザ、貴方達がまだ探していない所が有るのではないですか? そこを探して見ましょう」

「はい、畏まりました」


 私達は更に数十分程の探索を続けました。

「む~ん、なかなか見付かりませんね。もしかしたら、何かフラグを回収しなければ成らないのでしょうか?」

「ふむ、マリちゃん。ゲームなら良く有る事だよね。むしろ必須とでも言うべきかなぁ」


「スズちゃん、情報収集をお願いできますか?」

「は~い、行って来ま~す」

 ボッワワワワァァァンッ!
 スズちゃんは一瞬にして煙と共に消えてしまいました。

「「「わっ!」」」
「凄い!」
「ビックリしました!」

「さすがスズちゃんです」

 皆でスズちゃんが消えた後をマジマジと眺めました。


「御姉様!」

 僅かな間を開けて、マリエルの後ろから、不意にスズちゃんが声を掛けました。

「はい、何か忘れ物ですか?」

「いいえ、この先の森の中の開けた空間に、フィリップ(髭面男)さん達が休憩しています」

「はい、そうですか……おヒゲさんの名前はフィリップさんだったんだね」


「はい……それで、彼らはボス戦の後のようなのです。怪我をしている者も居るのです」

「まぁ、何かお手伝い出来るでしょうか? 行って見ましょう」

「「「はい」」」



「こんにちは~」

「おぅ、譲ちゃん達か。これは恥かしい所を見られちまったなぁ」


「フロアボスと戦ったのですね?」

「あぁ、負けちまったよ。命からがら、やっと逃げてきた所だ」


「怪我をしているのですね?」

つのが厄介でな、でかい角で突かれたり振り回されたりするんで近づけないんだ。どうやら俺は、あばら骨を折られちまったようだ。そっちは腕を折られているのか?」

「うぅっ、そうみたいだ。左肘ひだりひじがすげぇいてぇんだ」


「ちょっと、失礼いたします。動かないで下さいね。【洗浄】【消毒】【完全回復】!」

 シュワシュワシュワワワァァァンッ!
 ピッキィイイイイインッ!
 ホワワワワァァァァァンッ!


「次は貴方ですね、【洗浄】【消毒】【完全回復】!」

 シュワシュワシュワワワァァァンッ!
 ピッキィイイイイインッ!
 ホワワワワァァァァァンッ!


「はあっ! 全然痛くないぞ」

「俺も肘が動くぞ!」


「武器と防具を【復元】!」

 シュィイイイイインッ!


「なっ、何だ! 剣の刃こぼれも、欠けちまった鎧も直っている。いや新品状態だ!」

「良かったですね。歩いて自力で帰れそうですか?」

「勿論だ。いや、もう1回戦えそうなぐらいだよ。感謝感激だ! お譲ちゃんに何か礼をしなきゃなぁ」


「それなら、ボスと戦うための条件を教えて下さいませんか?」

「えっ、知らないのか? この先のくぬぎの大木たいぼくにキラービーの蜂蜜を塗ると、何処からともなくボスが現れるんだぞ。ギルドでも教えてくれてるぞ」

「そうだったんですかぁ」


「このフロアに現われる蜜取り爺さんも教えてくれるんだが、まだ会ってないのかな?」

「御嬢様申し訳有りません、私の落ち度です」

「エリザ、そんな事はありませんよ。貴方達は良くやってくれています」


「マリちゃん、さっき戦った蜂のモンスターから、ドロップアイテムの蜂蜜をゲットしてマジックバッグに入れてあるよ」

「おぅ、それだそれだ。その蜂蜜を大木に塗ればいいんだっ!」


「はい、教えて下さり有難う御座います」

「いやぁ、礼を言うのはこっちだよ。元気にしてもらって装備まで新品にして貰ったんだからなぁ」

「じゃあ、お互い様って事ですね?」

「こっちが圧倒的に助かってるだろう。お譲ちゃんが希少な光属性魔法の使い手とは恐れいったなぁ」


「あのぅ、良かったら一緒にもう1度、ボス戦をしませんか?」

「えっ、いいのか? 俺達は嬉しいけど。それなら俺達が前面でおとりになるから、譲ちゃん達が側面攻撃してくれよ。この人数なら何とか成るかも知れないな。危ない時は俺達を置いてサッサと逃げてくれて良いからなっ!」

「分かりました、それでいきましょう。よろしくお願い致します」
(うふふ、決して置いて行ったりなんかしませんよ……)

「な~に、光属性魔法の使い手がいれば、多少の怪我は心配ないからなぁ。よろしくな!」

「「「よろしく~!」」」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

処理中です...