チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第2章 アリタリカ帝国に留学

69 エリザとエリシャナの冒険者登録

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 翌週もダンジョンに潜るつもりです。お茶会等の予定が入ってないからです。
 サッチャンからのリクエストもありました。

「御嬢様、ケーキ輸送馬車を盗賊から守る為に、護衛ゴーレムを最優先で作りたいのです。その為の良質な魔石をダンジョンで魔物からゲットしましょう」

「どの程度の魔石を考えているのですか?」

「オークキングかオーガロードクラスの魔物の魔石なら、護衛ゴーレムに相応しいかと思っています」


「『未踏のダンジョン』の何階まで行けば、そのクラスの魔物に遭遇できるのかしら?」

「現代知識ならすぐに調べる事が出来ますが、残念ながらこの世界のダンジョンの情報はあまり知りません」


「エリザ、冒険者ギルドに行って魔物分布の情報収集をしてきて下さい」

「畏まりました。ですが、基本的に冒険者達は探索で知り得た情報を秘密にすると聞いています。直接尋ねるのではなく、近づいて会話から探りを入れたいと思います」


「そうなんですね。今度の週末までに情報収集をしてくださいますか?」

「はい、やってみます。冒険者達と親しくなる為に私とエリシャナで冒険者登録をして、ギルドやダンジョンで潜入捜査をしたいと思うのですが、宜しいでしょうか?」

「そうですね、エリザ達はマリエル騎士団のメンバーなのですから、私が潜入捜査を許可して良いと思います。……改めて、ローザンヌの領主である私が、マリエル騎士団員の2人に冒険者として潜入捜査を命じます」

「「ははっ」」




 ロマリアの冒険者ギルドは石造りの大きな建物です。
 神聖アリタリカ帝国は女神エイルを信仰する宗教国家なので、魔物退治やダンジョン攻略は国を挙げて推奨されています。冒険者の地位が認められている国なのでした。

 エリザとエリシャナの姉妹は、皮装備の胸当て、グローブ、ブーツで駆け出し冒険者風の格好をしています。腰にはブロードソードを佩き、右手に槍を突いてます。

 2人はギルドの大きな正面玄関から堂々と入りました。
 カウンターには3人の受付嬢が並んでいます。
 午前10時頃でピークを過ぎたせいか人の姿はまばらで、奥の受付嬢の前は空いていました。

「こんにちは、私達は冒険者登録をしに来たのですが、お願いできますか?」

「はい、始めての登録ですね?」

「そうです」


「それではこちらの申し込み用紙に、分かる範囲で書き込んでください」

「「はい」」


 2人は書き込み用のテーブルで記入して、又彼女のところへ戻りました。

「こちらはロマリアの冒険者としての認識章になるプレートです。それぞれ魔力を注ぐか血を垂らしてください」

 2×4センチぐらいの鉄のプレートにネックレスチェーンが繋がっています。
 2人は魔力を注ぎました。

「戦士風のいでたちですが魔法適正が高そうですね」

「はい」


「お2人でパーティ登録もしておきますか?」

「お願いします」

「はい。少々お待ちくださいませ」


 受付嬢は申し込み用紙とプレートを持って奥の部屋に入ると、2・3分ですぐに戻って来ました。

「登録は全て完了いたしました。お2人はFクラスの初級冒険者と成ります。御武運をお祈りいたします」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 2人は早速クエストボードを見に行きます。
 ボードを見ながら相談する振りをして、テーブル席に座ってる冒険者達の様子を伺いました。

「ヘヘヘッ、可愛いネェチャン達が来たなぁ」

「俺達が手取り足取り教えてやろうかなぁ」

「一緒に夜営して、1から10迄大人の冒険を教えてやるかぁ。ヒヒヒヒヒッ」

 酒が入ってるのでしょうか、下種げすな会話をしていますが、実際に直接絡んでくる事はありませんでした。
 お互いに武器を持っているので、この様なおおやけな場所で問題を起こす愚か者はいないのでしょう。
 冷やかしているだけの様です。


 受付のある大きな部屋の反対側は調理場が奥にあるようで、酒と料理が頼めるようになっています。

「お茶を2つお願いします」

 エリシャナが犬獣人のウエイトレスに注文しました。

 2人は隅のテーブルに行き腰を掛けます。
 会話をしている振りをしながら、回りの冒険者達の話を聞くつもりなのです。




「おや、熊人形を抱いたお譲ちゃんと一緒にいたお姉さん達じゃねえか?」

 ダンジョンで遭遇した髭面男の冒険者が、そこに立っていました。


「「こんにちは」」

「おぅ、無事に帰って来たんだなぁ」

「はい、お陰様で」


「ほぅ、よく見ると熊のお譲ちゃんと2人はちょっと似てるなぁ。3姉妹だったのかなぁ?」

「私達は御嬢様の従姉妹です、護衛役なのですよ」


「へ~ぇ、冒険好きの家系なんだなぁ……」

「そうですね。ところでお兄さんは、何階までダンジョンを攻略したのですか?」

「俺か? 俺は11階を攻略中なんだぁ。この街に来てからスグに10階のボスを倒したんだがな。『未踏のダンジョン』は11階からが大変なんだぞぅ」


「そうなんですか?」

「あぁ、11階からはフロアがガラリと変わって広大な空間に成っているんだ。それにフロアごとにボスがいて、そのボスを倒さないと次の階に行けないんだぞぉ」

「まぁ、そうなんですか。それで、お兄さんは11階のボスが居る所まで行ったのですか?」

「いや、まだなんだ。しかし大分探索が進んだから、そろそろ見つけられると思ってるんだ」


「早く見付かると良いですね」

「あぁ、お譲ちゃん達は何階まで攻略したんだい?」

「5階のボスまでです」


「ほぅ、早いなぁ。中々優秀なんだなぁ。おっと、仲間と飲みに行く約束してたんだ! じゃあ、またなっ」

「はい、教えて下さり有難う御座いました」

「なぁに、大した事無いさ」


 髭面男はギルドを出て行きかけて振り向くと、

「そうだっ、10階のボスはアンデッド系だから物理攻撃は効きにくいぞっ!」

「「ありがとうございます」」


 彼は手をヒラヒラと振りながらギルドを出て行きました。
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