チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第1章 アストリア王国に転生

40 アースガルズ2日目

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『虹の橋ビフレスト』を渡りきり、緑豊かなアースガルズの街道を暫く走ります。
 やがて光り輝く美しい街が見えてきました。街は高く真っ白な城壁に囲まれています。

 大きな門の前には、光る鎧を纏った『ヘイムダル』と言う名の色白のエルフが立っていて、街の入口を守っていました。
 彼は腰に『ギャラルホン』と言う大きな角笛をぶら下げています。

 上空を見上げると、地上から聳え立っていた大樹が更に遥か上の雲の中へと続いています。幹はスカイツリーの様に太く逞しいままでした。


 ヘイムダルが太い声を出します。

「ようこそアースガルズへ。フレイヤ様がお待ちですよ」

「こんにちは、お邪魔致します。……フレイヤ様?」
 マリエルは首を傾げました。


 お婆様が私に耳打ちしてくれます。

「マリエル、フレイヤ様は精霊王フレイ様の妹で、オーディン様の奥様ですよ」

「はい、お婆様」


「女性の神々が集まる館『ヴィーンゴールヴ』へお尋ね下さいませ」
 と、ヘイムダルが太い声を響かせました。

「はい、畏まりました」




 馬車は街に入り、美しい屋敷の間の大通りを真っ直ぐ進んでいきます。
 街の先の巨大な山塊の平坦な部分に、クリスタルの尖塔の様な建物が立ち並んでいるのが見えてきました。
 街を歩いてるエルフ達は、薄いユッタリとしたワンピースを着てサンダルを履いています。

 大通り突き当りのT字路を左に曲がると、正面に大きな平屋建ての7色に煌く『ヴィーンゴールヴ』の館が見えてきました。


 私達は館の前で馬車を降ります。
 入口の両側には色鮮やかな美しい絹の装いのウンディーネとドライアドが佇んでいました。

「「ようこそ、いらっしゃいませ」」

「「「こんにちは」」」

 私達は2人の精霊に伴われて、屋敷の中へと案内されました。



「エイルの親友マリエルと、その家族を歓迎致します。皆さん、仲良くしてくださいね」

 大広間のテーブルの奥正面に座るフレイヤ様が仰いました。
 両側には若く綺麗な女神達が座っています。


「さぁ皆さん、遠慮無く夕餉をご堪能下さいませ」

「「「ありがとうございます。いただきます」」」


 女神の館と聞いてましたが、お爺様とケンちゃんとピーちゃんもお招き頂きました。
 ケンちゃんは私達と並んで椅子に座らせて貰い、ピーちゃんは下手のフロアで大きなお皿に盛られた野菜と果物を食べています。

「フレイヤ様、私のお人形と従魔迄ご馳走して頂き恐縮でございます」

「いいえ、この子達も一緒に晩餐会に出て欲しかったのです」

「まぁ、ありがとうございます」


「やがて、この子達が多いに役立つ時が来ると思いますよ」

「はい、私達はご期待に沿える様に精進いたします」

「おほほほほ、難しく考えず気楽に異世界生活を楽しんで下さい。そのままで、きっと困難も克服出来るでしょう」

「……困難ですか?」

「人生には色々有りますが、神を信じていれば必ず困難を克服できます。神は克服出来ない困難を与え無いのです」

「はい……」


「さぁさぁ、楽しく食べましょう」

「はい」



 次々と出された料理に私とケンちゃんは驚きました、お寿司やてんぷらも有るのです。
 何とデザートにタピオカミルクまで出て来ました。

「懐かしいでしょう? ここでは食べたいと思う物が食べれるのですよ」

「「はい、ありがとうございます」」

 ケンちゃんは嬉し泣きをしながら、おすしを頬張っていました。

 ング、ング、ング、ンガッゴッゴ……ゴックン。


 その後、私達は女神様達と普通に女子話じょしばなをして盛り上がりました。
 女神様と人族の垣根は意外と低いようです。

「ほほほ、私達は創造主様に認められて、女神と呼ばれながら神様の御言いつけで色々な仕事をしています。ですが元々は人族と同じ様に、神に作られた被造物なのです。決して、それほど尊い存在ではありません」

「はい、そうなんですか……」

「さぁさぁ、今日は新しい友と一緒に食べて飲み明かしましょう」

 その日は『ヴィーンゴールヴ』で遅くまで晩餐会が続きました。



 フレイヤ様の住む館は『フォールクヴァング』といい、その広間『セスルームニル』は広くて美しい所でした。
 私達はその屋敷の中に部屋を借りて宿泊させて頂いたのです。


 翌日は、アースガルズの庶民の街に皆で出かけました。
 街の市場に行くと、エルフやドワーフなど様々な亜人達が屋台の出店で商売をしています。
 野菜や果物等どれも新鮮で安いようでした。
 私は金銭感覚にうといのでよく判りませんが、取引は金や宝石の原石で行われているようです。
 そして、どういう仕組みかは私には分かりませんけれど、アストリア王国の貨幣も使えると言う事でした。


「マリちゃん、謎の獣肉が売ってるよ!」

「領都と同じ肉串も有るわ!」


 私に付き添って隣に居るエイルちゃんが話し掛けてきます。

「此処には世界中の食べ物があるの。求めた物で手に入らない物は無く、欲しいと思った者は必ず何処かに有るのよ」

 今日は、エイルちゃんが実体で一緒に行動してくれています。
 私はエイルちゃんと腕を組み、ベッタリ寄り添って歩きました。

「エイルちゃん、ありがとう。お友達に成ってくれて、本当に嬉しいです。こうやって一緒に散策できる日が、こんなに早く来るなんて思ってませんでした」

「へへへ、私もマリエルちゃんと、こう言う事に成るとは思って無かったよ!」

「そうなんだぁ」

「うん、でもとっても楽しいわ」

「私もです、えへへへ」


 私達は庶民の街で買い物をして、昼食も食べました。
 そしてアースガルズでの楽しい時間はアッと言う間に過ぎてしまったのです。

 アースガルズの街の門までエイルちゃんが見送ってくれました。

「また遊びに来てね。いつでも待ってるからね」

「はい、エイルちゃん。お世話に成りました。又来ますね」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」
「「「さようなら~」」」


 2台の馬車は元来もときた道を『虹の橋ビフレスト』目指して帰って行きました。
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