チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第1章 アストリア王国に転生

36 誘拐なの?人質なの?

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 私はドアを開ける事ができずに、諦めてベッドに戻り座りました。

「ケンちゃんを呼ぼうかなぁ、もうちょっと現状を把握してからにしようかなぁ?」


 コンッ、コンッ、コンッ!
 ガチャリ!

 白いウサ耳のキュートな少女が入ってきました。
 白いセーターに白い短パンを履いてます。左耳に赤い鉢巻をして、足には赤い靴を履いてます。
 年齢は高校生ぐらいに見えました。

 彼女はポットとカップが乗ったお盆をキャビネットの上に置きました。


「こんにちワン」

「……こんにちは」


「気が付きましたワン?」

「ワン?」


「怪我は痛みませんかワン?」

「はい……ワン?」


「ここにいる間、私がお世話させて戴きますワン」

「はい、宜しくお願いします。私はマリエルです、貴方のお名前は?」

「私は兎人族のミミリル・ソソラソーラ・ソラランドですワン」

「はいワン」


「……マリエル様、真似しないで下さいワン。兎人族が犬人族に征服されてから、私は語尾に『ワン』とつける事を強制されてますワン」

「……それは、どうもワン」



(ミミリルさんを【鑑定】!)

 私は声を出さずに彼女を【鑑定】しました。


ミミリル・ソソラソーラ・ソラランド
種族 兎人族
レベル25
HP50 MP5
職業 戦争奴隷 元兎人族王女
状態 呪縛 言語制限
   行動制限 魔力制限


「申し訳ありませんが、この部屋で暫く大人しくしてて頂きますワン」

「私は人質ですかワン?」

「はいですワン」


「ミミちゃんは、誘拐犯の仲間なのワン?」

「私は奴隷なので、主人の命令通りにしか行動できませんワン」


「ミミちゃんの主人は誰なのワン?」

「答えられませんワン」


「此処は何処ワン?」

「答えられませんワン」


「答えられないのも命令だからなのワン?」

「はいですワン」


 う~ん……どうしようかなぁ。

「もし奴隷から開放されたら、お友達に成ってくれるワン?」

「はいですワン」


「お友達に成ったら何でも話してくれるワン?」

「はいですワン」


「ミミちゃんを【浄化】【解呪】【復元】!」

 ピッキィイイイイインッ!
 ホワワワワァァァァン!

「フワァァァ、暖かくて気持ちいいっ! オッフゥ♡」

 ミミリル・ソソラソーラ・ソラランドはマリエルに【魅了】された!


「はいっ。すべての呪縛から開放されて自由になった筈だから、教えてワン?」

「えっ、ウソ! ホント!……スゴ~イ!」

 ミミちゃんは私に抱き付き、頬と頬をスリスリしました。

「柔らかくてプニプニでカワイイですぅ!」


「もう、ワンって言ってないワン」

「はい、そうですね。マリエル様も普通に喋ってください」

「はいですワン」

「はぁ……カワイイから、もぅそれでいいです」


「それじゃあ、ここは何処ですかワン?」

「ここは、フランク王国の『サンクトガレン城』です」

「まぁ!」


「東の丘陵を越えれば国境で、アストリア国のリヒテンシュタインです」

「まぁ、国境を挟んでお隣さんだったのですね」


「フランク王国はレオポルド辺境伯を寝返らせる為に、マリエル様を誘拐したのです」

「あらまぁ、そうだったのですね」


「首謀者はフランク王国で、アストリア側にも協力者が居ると聞いています」

「わかりました。ミミちゃんは、このまま私と一緒にリヒテンシュタインへ帰りますか?」

「はい、それはありがたいのですが。
 ……元々、私達兎人族はこの辺りの高原に幾つかの村を作って暮していました。
 しかし、3年前の或る日、フランク王国の属国に成った犬人族達が突然攻め込んできて、私達兎人族は征服されてしまったのです。
 フランク王国はアストリア王国へ対抗する為に、私達が住んでいたこの地に、城と砦を築きました。
 そして犬人族を尖兵として、城と砦に入れて守備をさせています……私達は此処から逃げられないでしょう」


「守りが厳しいのかしら?」

「それも有りますが、女子2人だけで山越えは難しいと思います。それに犬人族は野山を駆けるのが得意ですから、国境を越える前に掴まってしまうでしょう」


「ミミちゃんはフランク王国に未練は無いの?」

「有りません。元々、私達は何処にも属してませんでした。しかし、出来れば残された兎人族を解放してあげたいです」


「兎人族の生き残りはフランク王国の奴隷なの?」

「はい、この城や国境近くの砦で下男下女として働いてます」


「この城は兎人族が住んでた場所なんですよね?」

「はい、城も砦も私達が住んでた場所に立っています。村が有った場所なので基礎工事と建築が容易く出来たのです」


「それじゃあ、この地は兎人族に返してもらいましょう」

「えっ、どうやって!」

「私に任せてください。高級クルーザーに乗ったつもりで安心していてください」


「高級…クルー……って、何ですか?」

「そこは気にしないでスルーしてください」

「はい」


『CQ、CQ、こちらマリエ。ケンちゃん応答願います。ケンちゃん応答願います。オーバー!』

『古いよマリちゃん、それ小学校の時の無線ゴッコだよ! 今何処にいるの?』

『フランク王国の『サンクトガレン城』で人質に成ってるのよ』

『人質!』


『ケンちゃんは急いでマリエル隊を集めて欲しいの。集まったら【念話】してね』

『オッケー』


「ミミちゃん、ドアを開けて私を移送する振りをして下さい。トイレに行く事にしましょうか」

 マリエルはマジックバッグからロープを出して両腕に巻いて貰い、その端をミミちゃんに持って貰いました。


「『え~い、もたもたするなっ! キリキリ歩けいっ!』って、時々言ってくださいね」

「はい……どういうお芝居でしょうか?」

「えへへへへ、分からない時は笑ってスルーして下さい。ツッコミが居ないとボケが不発に終わってしまうよね」
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