チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第1章 アストリア王国に転生

20 ウォルフスベルクの街

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 私はゴブリンの討伐部位と引き換えに、お父様から報奨金を頂きました。

「お父様、有難う御座います」

「うむ、ご苦労だったのぅ」

「はい、ケンちゃん。報奨金だよっ」

「マリちゃんのパパさん、有難う御座います」

「ふんっ」


「ケンちゃん、マジックバッグに入れといてね」

「オッケー」



 私達は自室に戻ります。

「マリちゃん、お小遣いが入ったから、街に買い物に行こうよ」

「ケンちゃんは、何か買いたい物があるの?」

「しいて言えば武器が買いたいけど、街や店をブラブラ見て歩きたいなぁ」

「ふ~ん。私達って町を歩かないからね、普段は馬車で通り過ぎるだけだものね」


 私は、側に控えてるジュディに聞いてみます。

「ねぇ、ジュディ。もうすぐ学院に入学するのだから、街を歩く事に馴れた方がいいでしょ?」

「いいえ、お嬢様。御令嬢は御自身でお買い物を致しません。欲しい物が有ったら私に言ってください、店の主人を呼び付けます」

「それじゃあ詰まらないわっ! お忍びで街に出ます。ルイスに護衛を頼みますから、庶民の服装を用意してください」

「……はい。それでは私とルイスがお供致します。準備が出来るまでお待ちください」


「キュルキュルッ?」

「まぁピーちゃんも一緒に行きたいのね。それじゃあ獣に間違われない様に、このバンダナを首に巻いてあげる」

 私は辺境伯家の紋章が入った黄色いバンダナをピーちゃんの首に巻き付けました。


「キュルキュルッ!」

「気に入って貰ってよかったわ。じゃあ行きましょう」


 私はケンちゃんを小脇に抱え、ピーちゃんの背中にまたがりました。

「レッツ、ゴォォッ!」


 私はジュディ達を待たずに部屋を出ました。スズちゃんは私の前に座っています。

「ピーちゃん重くなぁい?」

「キュルキュゥルッ!」(だいじょうぶっ!)



 私達はこっそりと抜け出したつもりでしたが、門で警備をしていたロベルトに止められました。
 そして、すぐにルイスとジュディが追いつきます。ルイスとジュディは普段着に着替えていました。

「お嬢様、おいてくなんて酷いです!」

「あら、お忍びですから」

「もう、今度したら『メッ』ですよ」

「ふふふふっ、ジュディは優しいから『メッ』できないよねぇ?」

「お嬢様ぁぁ……」



 お城を出ると周りは貴族街です。豪華な御屋敷が立ち並んでいます。

 暫くするとホテルや商店が見えてきました。庶民の家はその更に外側で街壁に近い所だそうです。
 私達はまず冒険者ギルドを見学します。ギルドはこれらの一画にありました。
 国境が近いためか結構な規模の建物で、スタッフや冒険者も沢山います。
 こっそり【鑑定】させて貰いましたが、あまり強い人はいません。魔法のレベルも高くなさそうでした。



 次に冒険者ギルドに隣接してる武器屋と防具屋を見ます。
 どちらも結構大きなお店です。

「ケンちゃんは体が小さいから、ナイフか短剣しか仕えないね」

「マリちゃんのナイトとして、剣で戦ってカッコいい所を見せたいけどねぇ」

「ファイヤーボールがあるから良いじゃない?」

「でも、広い所じゃないと火事が心配で使い難いよねぇ」


『確かに街中や森では火事が心配よね。それじゃあマリエルちゃんが認めた時だけ、ケンちゃんが大きくなれる様にしましょう』

「エイルちゃんありがとう。どうすればいいの?」

『何か合図の言葉を決めましょうね』

「じゃ~あ~、『ケンちゃんオオキクナ~レ、ケンちゃんチイサクナ~レ』で、いいかなぁ?」

『いいわよ。チョチョイのチョイっと……は~い、出来ましたよ~』


「マリちゃん、どう言う事?」
 ケンちゃんには女神エイルの声は聞こえません。

「ケンちゃん大きくしてあげる。『ケンちゃんオオキクナ~レ!』」

 ググググゥゥゥゥゥンッ!

 ケンちゃんは180センチぐらいの身長に巨大化しました。


「おぉぅ、これならロングソードを振り回せるよ! マリちゃん買って良いでしょ?」

「うん、買いましょう」


「よおおしっ! 前衛で魔物を狩り捲くるぞぅ」

「はい終わりぃ『ケンちゃんチイサクナ~レ』」

 シユウウゥゥゥ……、

「あぁぁ、もう小さくされちゃったぁ」


「だって大きいと知らない人が怖がるでしょ? ここは街中なんだからぁ」

「そっかぁ、しょうがないよなぁ」

 ケンちゃんはマジックバッグに買ったばかりのロングソードを収納しました。


「ケンちゃん。エイルちゃんにお礼を言ってね」

「うん。 若くて美しいエイル様、有難う御座います」

『まぁ、お上手だ事。火事対策も考えて水属性魔法も上げましょう』

「わーい有難う御座います。お久しぶりですね、綺麗な声を聞けて嬉しいです。これからも宜しくお願いしま~す」

『こちらこそ、マリエルちゃんを宜しくね』

「はーい、任せてください」

『じゃあねぇぇ』


「ケンちゃんにもエイルちゃんの声が聞こえたんだね」

「うん。8年ぶりに声を聞いたよ」



 次に薬屋さんでポーションを見ます。

「ポーションは結構高価だね」

「お嬢様。普通の回復薬も庶民には中々手が出せません」
 ジュディが応えました。

「私達のポーションは、薬屋さんの商売の邪魔をしないように、買う事が出来ない人に上げましょう」

「そうですね」



 次は魔道具屋さんです。

「魔道具も高いね」

「生活魔法の魔道具なら、庶民にも買えそうですね」
 とジュディ。

「灯りやオーブンの魔道具は、庶民の1か月分の収入ぐらいでしょうか」
 とルイス。

「マジックバッグはかなり高額で、貴族でないと買えませんね」


 結局その日はロングソードを1本買っただけでした。
 中央広場の亜人の屋台で、みんなで肉串を買い食いしてお城に帰りました。
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