チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

文字の大きさ
上 下
13 / 100
第1章 アストリア王国に転生

13 マルグレーテ公爵令嬢

しおりを挟む
 私は7歳に成りました。何事も無く元気に過ごしています。

 今日はお母様と一緒にお茶会に招待されています。
 隣の公爵領の御令嬢マルグレーテ・ブルネスト・ロゼリアルちゃんに会いに行くのです。


「マルグレーテ様はマリエルと同じ歳ですのよ。10歳から王都の学院に一緒に入学する事になるでしょう」

「はい。お母様」

 今日、ケンちゃんはお留守番です。勿論ピーちゃんもスズちゃんもお留守番です。
 私の家レオポルド辺境伯領は国境沿いですが、ロゼリアル領は王都側で辺境伯領が守ってる形に成っています。



 私達は馬車で公爵邸の正門を潜り、広い庭を通り過ぎてお屋敷前のスロープをそのまま馬車で昇り、一段高くなっている玄関前で降りました。

「レオポルド辺境伯夫人並びに御令嬢の到着です」
 侍従が声高に告げました。


「ようこそいらっしゃいました」

 ロゼリアル公爵夫人が出迎えてくれます。

「本日はお招きくださり有難う存じます」

 レオポルド辺境伯夫人であるお母様が挨拶を返しました。


「どうぞ、こちらへ」

 私達は、天井が高く広い部屋を通り抜け、中庭に案内されました。
 イングリッシュガーデン風の大きな庭です、お茶会が良く行われてるのでしょう。色とりどりのバラの花が咲き誇ってます。


 既に何人かご夫人が座っています。隣接する領の貴族が招待されてるのでしょう。
 私は始めてお会いする方ばかりなので、母に紹介して頂きます。

「娘のマリエルです」

「始めまして、お初にお目にかかります。以後宜しくお願いします」

「まぁ、リリアーナ様に似て美人だこと。将来が楽しみですね」

「あら、そんな事ありませんけど、有難う御座います」

 そんな感じの挨拶がテーブル毎に繰り返されます。

 そうしてると、公爵夫人に付き添われた公爵令嬢マルグレーテちゃんが、お庭に現われました。
 ピンクの髪にエメラルド色の目をした、とても可愛いお嬢様です。綺麗で華やかなドレスを着ています。
 唯一同年代の子供である私を見て、ニッコリ微笑みました。

「よ~し、絶対に友達になるんだから!」


 彼女は、近くのテーブルから順番に挨拶して、いよいよ私の所に来ました。

「こんにちは、始めましてマルグレーテです」

「こんにちは、私はマリエルです。第一印象から決めてました、お友達からお願いします」

 そう言って右手を刺し出して頭を下げました。

「まぁ、変わった表現ですね。流行ってるのでしょうか? でも勿論、友達になりましょうね!」

 そういって、マルグレーテはマリエルの右手を握ってくれました。

「ありがとうございます。これは草原で採取して、庭に植えて育てたハーブなんです」

 そう言ってマリエルは、自分で作った小さな花束をマルグレーテに渡しました。
 紫・白・ピンクの綺麗で可愛い花束です。


「まぁ素敵ですわ! お花に詳しいのですね」

「はい。時々草原に採取に行くので、綺麗な花を見つけると、持って帰って庭に植えてるのです」


「この紫のお花は、良い匂いがしますわ」

「それはラベンダーですわ」

「この小さい白いお花は?」

「それはカモミールですわ」

「この可愛いピンクのお花は?」

「それはセージですわ」


「こんなに詳しいなんて、お花が大好きなのですね」

「うふふふふっ、勿論大好きですけど、これらの花はポーションの原料なのですよ」

「まぁ、こんなに綺麗なお花が!」

「お近づきの印に、これも差し上げますわ」

 マリエルは小さなビンを渡しました。


「これは!?」

「『完全回復薬』と言って、病気も怪我も治ると言われてます」

「まぁ……実は私には弟が居るのですが、これを弟に飲ませても良いですか?」

「弟様に?」


「はい、弟は目が不自由なのです」

「目が!……」


「弟は去年、病気で高熱が続き、目が見えなく成ってしまったのです。色々と医者・薬・魔術と頼って見たのですが、直りませんでした」

「そうですか……良かったら弟様に会わせて下さいませんか?」

「弟に……」

 マルグレーテは公爵夫人の顔色を伺いました。


「カタリナ公爵夫人様、娘のマリエルは光属性魔法の適正があります、それに【鑑定】や【錬金術】のスキルも使えるのです。良かったらご子息に会わせてやってくださいませ」
 そうリリアーナが言いました。

「まぁ、7歳でそんなにスキルが使えるのですか! 病気の事は兎も角、年齢も近いですし是非会って下さい」


 貴族は魔法適正が多いほど尊ばれるそうです。
 公爵夫人の目には、私が弟様の婚約者候補に見えたかも知れません。
 特に光属性魔法は使える者が少なく、回復系の魔法が使える為喜ばれるそうです。
 そして、魔力が多く光属性魔法を極めた女性は『聖女』と言う最高位の称号を国王から与えられるそうです。


「お母様、それではマリエル様を弟のお部屋にご案内しますね」

「はい。私はここを離れられないので、女官に案内をさせましょう」

「はい」



 私達は年配の女官に案内されて、子供部屋に連れて行かれました。
 女官が『コッツ、コッツ』とノックしてドアを開けます。

 中に入ると、鳥篭の中で1羽の赤い小鳥が一生懸命にさえずっています。
 そして、私達より少し年下に見える男の子が、鳥篭のそばで耳を傾けていました。


「クリストファー、私と同じ歳のマリエル様です。今日お友達に成ったのですよ」

「こんにちは、クリストファー様。レオポルド辺境伯の娘マリエルと申します。宜しくお願い致します」

「……宜しくお願い致します」

 クリストファーは少し首を傾け、はにかんだ様に僅かに微笑んだ。


「マリエル様に完全回復薬と言うお薬を貰ったのですよ」

「お薬……ですか」

 クリストファーは諦めているのか、治療に飽きているのか、少し嫌そうな顔付きに成りました。


「薬をお飲みになる前に、少し試したい事があるのです。触りませんし痛みも有りませんので、ちょっと失礼致します」

 クリストファーの口が開きかけ何か言おうとする前に、マリエルはスキルを発動しました。


「クリストファー様の目を【開眼】!」

 ホワワワワァァァン!

 クリストファーの顔の中心を暖かい光が優しく包みました。
 彼は目をシバシバとまたたいています。

 彼の目は、新月の明け方のように少しづつ明るくなって来て、やがて雲が晴れていく様に周辺の輪郭が見えてきます。
 そして、目の前に居る2人の愛くるしい少女の顔が見えました。


「見える……見えるよお姉様!」

「トファー、良かったわね」

 2人の目から涙が溢れました。


『マリエルちゃん、天国にいる私達の神様に感謝を言ってください』

「はい、エイルちゃん。 天国の私達の神様、クリストファーの目をいやしてくださり有難う御座います」

「「「神様、有難う御座います」」」

 姉と弟と女官も、涙ながらに感謝の言葉を言いました。


「クリストファーをお庭にいるお母様に御見せしましょう!」

「はい。お坊ちゃまの御髪おぐしと御洋服を調えますので、お嬢様達は先にお戻りくださいませ」
 そう女官が応えました。

「それではマリエル様、先に一緒に戻りましょう」

「はい」



 マリエルとマルグレーテは、手をつないで早足で庭に戻ります。

「お母様、トファーの目が治りました!」

「えっ、まさか! 王宮の魔道師様でも治せなかったのに」

 公爵夫人が椅子から立ち上がりました。


「本当なのです、マリエル様が『開眼』と仰っただけなのに、トファーの目が見える様になったのですよ!」

「私の力では無く、私達の神様のお陰ですわ」

「それではきっと、マリエル様は女神様の御加護を受けてらっしゃるのね!」

 マルグレーテは興奮して止まりません。


「リリアーナ様は、女神様からマリエル様への御加護をご存知なのでしょう?」

「え、ええ……マリエル、話したのですか?」

「いいえ、お母様。私は【開眼】スキルを使っただけです」

「そう……公爵夫人様、秘密にして置きたかったのですが、マリエルには生まれた時から『女神の御親友』と言う特記事項があるのです」

「まぁ、そうなんですか」

 その時、屋敷から女官とクリストファーが庭に出て来ました。
 彼は女官に手を引かれずに、自分1人で真っ直ぐこちらへ歩いて来ます。


「お母様、1人で歩けます。目が見えるのです」

「良かったですね」

 2人は抱き合って涙を流しました。


「「よかったね」」

 私とマルグレーテも手を取り合って喜び合いました。
 居合わせた貴族の御夫人達も、公爵家のご子息の目が見えない事を知っていたので、大変驚いています。


 会場にいる御婦人達の興奮が収まった頃、レオポルド辺境伯夫人であるお母様が言いました。

「お集まりの皆様、この事は私の娘マリエルの力では決してありません。女神様の祝福によるのです!」

 ママンは、まだ7歳の私が特別扱いされる事を恐れている様でした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...