4 / 100
第1章 アストリア王国に転生
4 幼馴染のケンちゃん
しおりを挟む
ケンちゃんは、幼馴染の麻里絵がトラックに轢かれて亡くなって、3日間も泣き続けた。 彼は安達区寝殿高校2年生野球部で17歳だ。中二病を患っていて最近ではスッカリ不登校になっていた。
母さんから突然言われたのだ。
「マリちゃんがトラックに轢かれちゃったって!」
俺は、口を聞かないと決めたばかりの母さんに思わず聞き返した。
「何ですとぅ?」
「幼馴染のマリちゃんよ! お前の初恋の相手だろ! 今夜お通夜だってさ」
「うるせー、バ……」
今は汚い言葉は止めとこう。
「母さん、喪服出して」
「はいよ」
「マリちゃん。芸人になって、有名人になって、迎えに行こうと思ってたのに……。
幼女の身代わりになって、トラックに轢かれて……。
あれ?……これって、異世界転生するヤツじゃね?
よし、俺もトラックに轢かれてマリちゃんを追い駆けよう」
ところがトラックの前になど、とても怖くて出れない。幼女も都合よく飛び出してくれないし。
「どうしよう、普通に逝っても転生できなくね?」
俺は、あれやこれやと悩みながら歩いてて、いつの間にか都電の線路の上にいた。
プアアアアーンッ!
「やべっ、誰も助けてないし、トラックでもないし、都電って、逝けなくなくなくね!」
そんな思いを僅かな瞬間に巡らしていた。
当るーっ! と思った瞬間に、グリンと体が回りながら宙に浮いた。
地面の無い白い空間に無重力の様に浮いてる気がする。
「愛は地球を救う? でもそんな逝き方をしても、幼馴染は救えませんよ!」
若い男が白い服を着て立っていた。
「私は貴方の世界の管理者です。幼女を助けて都電に轢かれても、異世界には行けませんよ」
「そうですよね~」
「それに自ら命を絶った者は、基本的に地獄行きです」
「まじですか?」
「まじです。神が与えた寿命を勝手に縮める事は重罪だからです」
「じゃあ、異世界にマリちゃんを助けに行けないじゃないですか?」
「はい、その通りです。だけど今回は、あなたの愛の心に免じて手伝ってやれと神様から言われてます」
「やったぁ。……良かったぁ、地獄行きじゃなくて」
「それでは、向こうの管理者に貴方を引き渡しますね。ごきげんよう」
またまた、グリンと体が回りながら宙に浮いた。
「貴方がマリエルの幼馴染ですね」
「はい、若くて美しい女神様! お会いできて光栄です」
「はーっ、さすが幼馴染ですね発想が似てます。 しかーし、チートなんて簡単にあげませんからね」
「えーっ、異世界転生のお約束ですよねぇ?」
「私はチートの約束なんて、した事ありませんよ」
「じゃあ、どうやって麻里絵を助ければ良いのですか?」
「知恵と勇気と友情ですね」
「……それでは、転生したばかりの俺のステータスは、どんな感じでしょうか?」
「ふむ、そのぐらいは教えてあげましょう。
レベル1 HP5 MP5
以上です」
「たったそれだけ……、 魔法は使えますか?」
「はい、レベル2に上がれば、MP5を消費してファイヤーボールが使える様になります」
「その後は、何が使える様になりますか?」
「貴方の努力次第ですね。普通に暮してる場合は、増えないと思います」
「そんなぁ、チートでなくてもいいから、せめてもう少しサービスをして下さいませんか?」
「う~ん、簡単な物ならいいけど」
「じゃあじゃあ、走ると魔力が増えるようにして下さい」
「走ると?」
「走って汗を流して頑張った代償として、魔力を増やして下さい。一時的で良いので魔力量の上限を超えて増えるようにして下さい」
「頑張った代償として、魔力量の上限を超えて、う~ん、チートにならないかなぁ?」
「じゃあじゃあ、走るのをやめたら一分にMP1下がってもいいですから。あっ上限までね」
「ふ~む。それでは、1メートル走るとMPが1増えて、止まると一分毎にMPが1減る仕様にしてあげましょう。その代り魔力上限は撤廃します。減り続けるとMP1で止まります。ファイヤーボールを撃つのに最低でも5メートル走る事に成りますよ。それが、チートに成らない様に貴方が払う代償です」
「はい、分かりました有難う御座います。あともう一つ、チートにならない仕様変更をお願いします」
「え~、……とりあえず話だけは聞いてあげましょうか」
「ファイヤーボール一回でMP5消費するから、2回で10、3回で15の消費ですよねぇ。一度に纏めて撃てる様に、仕様変更して貰えないでしょうか? 初級魔法のファイヤーボールだから、チートでは無いですよね。消費する分、走らないと使えませんしねぇ」
「う~ん、纏めて撃てる様に、走らないと使えない、頑張った代償だから
……チートでは無いみたいだから、オマケですよ」
「じゃあじゃあ、最後に一つ。麻里絵の傍に転生させて下さい」
「う~ん、それは良いけど。傍にちょうど良い個体が見付からないわね~……」
「姿形に文句は言いませんから。あっ、出来たら麻里絵に好かれる見た目が良いのですけど」
「好かれる見た目……、あったわ! じゃあ、頑張って。行ってらっしゃ~い」
「行ってきま~す。 有難う御座いました~」
マリエルは、ママンに貰ったクマのヌイグルミがお気に入りで、いつも抱えて一緒に寝ていた。
自分と同じぐらいの大きさの、黄色いクマの人形だ。
クマのヌイグルミの張り出たお腹とオットリ顔から、幼馴染のケンちゃんを思い出したので、ケンちゃんと名付けていた。
赤い服には『oiny the puu』と書いてあったけど。
ケンちゃんは目が醒めた。
「知らない天井だ!」
横を見ると可愛いビスクドールが寝ている。
「かなり裕福な屋敷の中みたいだなぁ」
「ウ~ン」
ビスクドールと思っていたら、本当の赤ちゃんだった。碧眼の美しい目が、俺を「ジーッ」と見つめる。
「ケンチャン、ハナチテル?」
一歳ぐらいに見える赤ちゃんが、たどたどしく話しかけて来た。
「うん、話してるよ。俺の事知ってるんだね!」
「ダッテ、アタチガ、ナマエ、チュケタ、デチョ」
「うんっ? 君が俺の名付け親って事?」
「チョウヨ。 ケンチャン、ニテウカラ、ダヨ」
「……君が女神様が言ってたマリエルちゃんなの? 転生したマリちゃんなのかい?」
「チョウヨ。 アナタモ、テンチェイ、ナノ?」
「そうだよ! 幼馴染のケンちゃんだよ!」
「……クマノ、ケンチャン、ジャナイノ?」
俺は自分の体を眺める。
「なんじゃ、こりゃ~! なんでヌイグルミのクマ~!?」
「ケンチャン?」
「俺は、粗革区尾久の中田健だよ。君は粗革遊園地前に住んでた、鈴木真理恵だよね」
「……ケンチャン! ホントノケンチャン」
「異世界でマリエが困ってると思って、追いかけて来たんだ」
「フ~ン、アイガトウ。 デモ、コマッテ、ナイヨ」
「エッ! 俺もしかして必要無かった?」
「ウウン、アエテ、ウレチイ」
「……は~っ、ヌイグルミって。確かにこれなら、一緒に居られそうだけど」
「イッチョ、イレルネ~」
「鏡はどこかな~。あっ、チェストの上にあった」
ケンちゃんは、子供用ベッドの柵をヒラリと飛び越えたが、床に背中から落ちて、バッフンと刎ねた。
「体の中は、木綿が詰まってるのかな、ちっとも痛く無い」
ケンちゃんはチェストを這い登るが、上に到着する前に落ちてしまった。
「テチュダウ」
マリエルはケンちゃんの脇に両手を入れて持ち上げた。
「ウヒャヒャヒャヒャ~」
ケンチャンが身を捩って悶える。
「ガマンチテ」
ケンちゃんは、チェストの取っ手に掴まって、何とか上に這い登った。
「は~っ、もろPUUさんじゃんっ! 全然違うじゃんっ! そもそも生き物じゃなくなくね?」
「アマリ、カワラナイヨ。マエヨリ、カワイイ」
「……そう、まぁいっかぁ」
「ケンチャン、ナニカ、デキウノ?」
「そうだ。ファイヤーボールだ!
1メートル走るとMPが1上がって。50メートル走ればMPが50上がるんだった。
俺走るから、ちょっと待っててね」
ペッコ、ペッコ、ペッコ……と、音をたてながらベッドの周りを走る。
「もうMPが溜まったかな。それじゃあ、イクヨ~。 ファイヤーボ……」
「ダメ! オソトデ」
「そうだよね、火事に成るとこだった」
マリエルが呼鈴を「チリンチリン」と鳴らす。
しばらくしてジュディが入って来た。
「は~い、マリエルお嬢様。なんでしょうかぁ?」
「オチョトに チュレテッテ」
「は~い」
ケンちゃんを抱いたマリエルを、ジュディが抱いて庭に出る。
ジュディが、ジ~ッと私達を見てる。
「ジュディ、オヘヤニ、モドラナイノ?」
「はい、見守らせて頂きます」
「「……」」
「ジュディ、ヒミチュ、オネガイ、ナノ」
「はい、なんでしょう?」
「ケンチャンノ、ヒミチュ。ジェッタイ、シーッ、ナノ」
「はいお嬢様、ジュディにお任せ下さい」
マリエルの腕から『ピョーン』とケンちゃんが飛び降りた。
「ジュディ、ありがと、よろしくな」
バタンッ!
ケンちゃんが喋るのと同時にジュディが気を失った。
マリエルが、ジュディの頭を「いい子いい子」と撫でながら看病をする。
その前を、ケンちゃんが行ったり来たり走る。
「よし、今度こそ。 ファイヤーボーーール!」
シーーーンッ、
「そうだ。レベル2からだって、言ってたっけ。 ガックリしんのすけだよぅ」
「レベル2、カラナノ?」
「うん、女神様がそう言ってた」
「レベルを上げるなら経験値を溜めて下さい」
ジュディが、うつろな目でそう言った。
「魔法の呪文を唱え続けても、経験値を積めますから、魔物と戦うより安全です」
「じゃあ、ファイヤーボールって、言い続ければいいの?」
ケンちゃんがジュディに聞いた。
「ヒッ! ……そうです。 お嬢様、この人形呪われてませんよね?」
「ウン、ダイジョブ」
「はい……」
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール……」
「ケンチャン、チヂュカニ、チテ。モッチョ、チチャイ、コエデ、チテ」
「オッケー」
「エイルちゃん、こんばんは。
ケンちゃんが無事に転生して来ました。
ありがとう。
お人形だから一緒に居られるね。
お人形だから食べなくても大丈夫だよね。
おやすみなさい。
親友のマリエルより」
「マリエルちゃん、こんばんは。
幼馴染のケンちゃんに再会出来て良かったね。
ファイヤーボールが使える様になるといいね。
おやすみなさい。
親友のエイルより」
母さんから突然言われたのだ。
「マリちゃんがトラックに轢かれちゃったって!」
俺は、口を聞かないと決めたばかりの母さんに思わず聞き返した。
「何ですとぅ?」
「幼馴染のマリちゃんよ! お前の初恋の相手だろ! 今夜お通夜だってさ」
「うるせー、バ……」
今は汚い言葉は止めとこう。
「母さん、喪服出して」
「はいよ」
「マリちゃん。芸人になって、有名人になって、迎えに行こうと思ってたのに……。
幼女の身代わりになって、トラックに轢かれて……。
あれ?……これって、異世界転生するヤツじゃね?
よし、俺もトラックに轢かれてマリちゃんを追い駆けよう」
ところがトラックの前になど、とても怖くて出れない。幼女も都合よく飛び出してくれないし。
「どうしよう、普通に逝っても転生できなくね?」
俺は、あれやこれやと悩みながら歩いてて、いつの間にか都電の線路の上にいた。
プアアアアーンッ!
「やべっ、誰も助けてないし、トラックでもないし、都電って、逝けなくなくなくね!」
そんな思いを僅かな瞬間に巡らしていた。
当るーっ! と思った瞬間に、グリンと体が回りながら宙に浮いた。
地面の無い白い空間に無重力の様に浮いてる気がする。
「愛は地球を救う? でもそんな逝き方をしても、幼馴染は救えませんよ!」
若い男が白い服を着て立っていた。
「私は貴方の世界の管理者です。幼女を助けて都電に轢かれても、異世界には行けませんよ」
「そうですよね~」
「それに自ら命を絶った者は、基本的に地獄行きです」
「まじですか?」
「まじです。神が与えた寿命を勝手に縮める事は重罪だからです」
「じゃあ、異世界にマリちゃんを助けに行けないじゃないですか?」
「はい、その通りです。だけど今回は、あなたの愛の心に免じて手伝ってやれと神様から言われてます」
「やったぁ。……良かったぁ、地獄行きじゃなくて」
「それでは、向こうの管理者に貴方を引き渡しますね。ごきげんよう」
またまた、グリンと体が回りながら宙に浮いた。
「貴方がマリエルの幼馴染ですね」
「はい、若くて美しい女神様! お会いできて光栄です」
「はーっ、さすが幼馴染ですね発想が似てます。 しかーし、チートなんて簡単にあげませんからね」
「えーっ、異世界転生のお約束ですよねぇ?」
「私はチートの約束なんて、した事ありませんよ」
「じゃあ、どうやって麻里絵を助ければ良いのですか?」
「知恵と勇気と友情ですね」
「……それでは、転生したばかりの俺のステータスは、どんな感じでしょうか?」
「ふむ、そのぐらいは教えてあげましょう。
レベル1 HP5 MP5
以上です」
「たったそれだけ……、 魔法は使えますか?」
「はい、レベル2に上がれば、MP5を消費してファイヤーボールが使える様になります」
「その後は、何が使える様になりますか?」
「貴方の努力次第ですね。普通に暮してる場合は、増えないと思います」
「そんなぁ、チートでなくてもいいから、せめてもう少しサービスをして下さいませんか?」
「う~ん、簡単な物ならいいけど」
「じゃあじゃあ、走ると魔力が増えるようにして下さい」
「走ると?」
「走って汗を流して頑張った代償として、魔力を増やして下さい。一時的で良いので魔力量の上限を超えて増えるようにして下さい」
「頑張った代償として、魔力量の上限を超えて、う~ん、チートにならないかなぁ?」
「じゃあじゃあ、走るのをやめたら一分にMP1下がってもいいですから。あっ上限までね」
「ふ~む。それでは、1メートル走るとMPが1増えて、止まると一分毎にMPが1減る仕様にしてあげましょう。その代り魔力上限は撤廃します。減り続けるとMP1で止まります。ファイヤーボールを撃つのに最低でも5メートル走る事に成りますよ。それが、チートに成らない様に貴方が払う代償です」
「はい、分かりました有難う御座います。あともう一つ、チートにならない仕様変更をお願いします」
「え~、……とりあえず話だけは聞いてあげましょうか」
「ファイヤーボール一回でMP5消費するから、2回で10、3回で15の消費ですよねぇ。一度に纏めて撃てる様に、仕様変更して貰えないでしょうか? 初級魔法のファイヤーボールだから、チートでは無いですよね。消費する分、走らないと使えませんしねぇ」
「う~ん、纏めて撃てる様に、走らないと使えない、頑張った代償だから
……チートでは無いみたいだから、オマケですよ」
「じゃあじゃあ、最後に一つ。麻里絵の傍に転生させて下さい」
「う~ん、それは良いけど。傍にちょうど良い個体が見付からないわね~……」
「姿形に文句は言いませんから。あっ、出来たら麻里絵に好かれる見た目が良いのですけど」
「好かれる見た目……、あったわ! じゃあ、頑張って。行ってらっしゃ~い」
「行ってきま~す。 有難う御座いました~」
マリエルは、ママンに貰ったクマのヌイグルミがお気に入りで、いつも抱えて一緒に寝ていた。
自分と同じぐらいの大きさの、黄色いクマの人形だ。
クマのヌイグルミの張り出たお腹とオットリ顔から、幼馴染のケンちゃんを思い出したので、ケンちゃんと名付けていた。
赤い服には『oiny the puu』と書いてあったけど。
ケンちゃんは目が醒めた。
「知らない天井だ!」
横を見ると可愛いビスクドールが寝ている。
「かなり裕福な屋敷の中みたいだなぁ」
「ウ~ン」
ビスクドールと思っていたら、本当の赤ちゃんだった。碧眼の美しい目が、俺を「ジーッ」と見つめる。
「ケンチャン、ハナチテル?」
一歳ぐらいに見える赤ちゃんが、たどたどしく話しかけて来た。
「うん、話してるよ。俺の事知ってるんだね!」
「ダッテ、アタチガ、ナマエ、チュケタ、デチョ」
「うんっ? 君が俺の名付け親って事?」
「チョウヨ。 ケンチャン、ニテウカラ、ダヨ」
「……君が女神様が言ってたマリエルちゃんなの? 転生したマリちゃんなのかい?」
「チョウヨ。 アナタモ、テンチェイ、ナノ?」
「そうだよ! 幼馴染のケンちゃんだよ!」
「……クマノ、ケンチャン、ジャナイノ?」
俺は自分の体を眺める。
「なんじゃ、こりゃ~! なんでヌイグルミのクマ~!?」
「ケンチャン?」
「俺は、粗革区尾久の中田健だよ。君は粗革遊園地前に住んでた、鈴木真理恵だよね」
「……ケンチャン! ホントノケンチャン」
「異世界でマリエが困ってると思って、追いかけて来たんだ」
「フ~ン、アイガトウ。 デモ、コマッテ、ナイヨ」
「エッ! 俺もしかして必要無かった?」
「ウウン、アエテ、ウレチイ」
「……は~っ、ヌイグルミって。確かにこれなら、一緒に居られそうだけど」
「イッチョ、イレルネ~」
「鏡はどこかな~。あっ、チェストの上にあった」
ケンちゃんは、子供用ベッドの柵をヒラリと飛び越えたが、床に背中から落ちて、バッフンと刎ねた。
「体の中は、木綿が詰まってるのかな、ちっとも痛く無い」
ケンちゃんはチェストを這い登るが、上に到着する前に落ちてしまった。
「テチュダウ」
マリエルはケンちゃんの脇に両手を入れて持ち上げた。
「ウヒャヒャヒャヒャ~」
ケンチャンが身を捩って悶える。
「ガマンチテ」
ケンちゃんは、チェストの取っ手に掴まって、何とか上に這い登った。
「は~っ、もろPUUさんじゃんっ! 全然違うじゃんっ! そもそも生き物じゃなくなくね?」
「アマリ、カワラナイヨ。マエヨリ、カワイイ」
「……そう、まぁいっかぁ」
「ケンチャン、ナニカ、デキウノ?」
「そうだ。ファイヤーボールだ!
1メートル走るとMPが1上がって。50メートル走ればMPが50上がるんだった。
俺走るから、ちょっと待っててね」
ペッコ、ペッコ、ペッコ……と、音をたてながらベッドの周りを走る。
「もうMPが溜まったかな。それじゃあ、イクヨ~。 ファイヤーボ……」
「ダメ! オソトデ」
「そうだよね、火事に成るとこだった」
マリエルが呼鈴を「チリンチリン」と鳴らす。
しばらくしてジュディが入って来た。
「は~い、マリエルお嬢様。なんでしょうかぁ?」
「オチョトに チュレテッテ」
「は~い」
ケンちゃんを抱いたマリエルを、ジュディが抱いて庭に出る。
ジュディが、ジ~ッと私達を見てる。
「ジュディ、オヘヤニ、モドラナイノ?」
「はい、見守らせて頂きます」
「「……」」
「ジュディ、ヒミチュ、オネガイ、ナノ」
「はい、なんでしょう?」
「ケンチャンノ、ヒミチュ。ジェッタイ、シーッ、ナノ」
「はいお嬢様、ジュディにお任せ下さい」
マリエルの腕から『ピョーン』とケンちゃんが飛び降りた。
「ジュディ、ありがと、よろしくな」
バタンッ!
ケンちゃんが喋るのと同時にジュディが気を失った。
マリエルが、ジュディの頭を「いい子いい子」と撫でながら看病をする。
その前を、ケンちゃんが行ったり来たり走る。
「よし、今度こそ。 ファイヤーボーーール!」
シーーーンッ、
「そうだ。レベル2からだって、言ってたっけ。 ガックリしんのすけだよぅ」
「レベル2、カラナノ?」
「うん、女神様がそう言ってた」
「レベルを上げるなら経験値を溜めて下さい」
ジュディが、うつろな目でそう言った。
「魔法の呪文を唱え続けても、経験値を積めますから、魔物と戦うより安全です」
「じゃあ、ファイヤーボールって、言い続ければいいの?」
ケンちゃんがジュディに聞いた。
「ヒッ! ……そうです。 お嬢様、この人形呪われてませんよね?」
「ウン、ダイジョブ」
「はい……」
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール……」
「ケンチャン、チヂュカニ、チテ。モッチョ、チチャイ、コエデ、チテ」
「オッケー」
「エイルちゃん、こんばんは。
ケンちゃんが無事に転生して来ました。
ありがとう。
お人形だから一緒に居られるね。
お人形だから食べなくても大丈夫だよね。
おやすみなさい。
親友のマリエルより」
「マリエルちゃん、こんばんは。
幼馴染のケンちゃんに再会出来て良かったね。
ファイヤーボールが使える様になるといいね。
おやすみなさい。
親友のエイルより」
11
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる