チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

文字の大きさ
上 下
1 / 100
第1章 アストリア王国に転生

1 リボーン

しおりを挟む
「少しぐらい人助けして代わりに逝っても、チートなんてあげません!」

 高校生ぐらいに見える可愛い女の子にそう言われました。

「可愛いぃっ! チートなんていらないからメアドを教えて下さい!」

 17歳で女子高生の私は、彼女に友達申請しました。

「……メ・ア・ド!?」

「ラインでも良いですっ!」
「ラ・イ・ン?……」

「SNSなら何でも良いですっ!」
「S・N・S?……」

 彼女はポカ~ンと首を傾げている。


「私は貴方が居た世界とは、違う世界を管理してるので、それが何だか知らないのだけど?」

「ぇえええっ! スマホ持ってないのぉ?」

「スマホ? なにそれ、美味おいしそうね」

「わぁ、惜しぃっ! そこは 『スマホ? なにそれ、美味おいしいの?』 って言うのっ!」


「はぁあっ? 意味が分かりませんけど!」

「わぁ、又、惜しぃっ! そこは 『ちょっと言ってる意味が分からない!』 って言うのっ!」

「ふぅ……世界が違うと習慣が違うのね」


折角せっかく可愛くて美人さんなのに……。残念だから、私が友達になってあげるっ!」

「友達に……、貴方は交通事故で、幼児の身代わりに成ってここに来たのよ。私は貴方達が言う所の神様の使いなの。貴方はこれから、私が管理してる異世界に生まれ変わるのよ」

「異世界転生、来たぁぁっ!」


「貴方が異世界に行くのよ。……はぁ、もういいわ。サッサと転生しちゃいなさいね!」

「ちょっと待ったぁぁっ!」

「はぁっ、なぁに?」

「友達に成って下さるんですよね!」

「はいはい、それぐらいだったらいいわよ、友達に成ってあげましょう」


「だったらぁ、マブダチでも良いですかぁ?」

「マブダチ? な~にそれ?」

「友達のバージョンアップ版です」


「ふぅぅん、まぁそのぐらい良いけどぅ。でも又、貴方が逝くまで会えないと思うけど、それでもいいの?」

「結構です、私のつぶやきを聞いて。時々呟き返して下さいね」

「そんな事でいいなら、してあげましょうか」


「あと、私が女神様のマブダチとして相応ふさわしい人間に成れる様に応援してて下さいね?」

「分かったは、応援してて上げましょう」


「美しく優しい女神様ありがとうございます。また会える日を楽しみにしています」

「はいはいっ。今度会うのは、貴方が又逝った時ですけどね」


「それじゃあ、行ってきまぁぁすっ!」

「行ってらっしゃぁぁい……やっと行ってくれたわ……」





「ホギャ~、ホギャ~、ホギャ~、……」

 まさか! 赤ちゃんからですかっ!


「レオポルド辺境伯様、元気なお嬢様ですよ」

「そうか、男じゃ無かったか。……一応ステータスも確認してくれ」

かしこまりました」


「普通のステータスですが、始めて見る特記事項が一つだけあります……」

「何だ?」

「『女神の御親友』です」

「……ぅぐっうぅぅ!」

 バタンッ!

 辺境伯はショックで気絶してしまいました。


 レオポルド辺境伯は所謂いわゆる悪徳領主でした。
 領民に重税をかけ、隙あらば境界を越え他領を侵略します。
 自分の欲望にしたがい、状況に応じて臨機応変に国を替えます。

 そんな破天荒な領主の初子が『女神の御親友』だったのでした。


「神などらぬ。死ぬまで己の欲望に従うだけだ!」

 そう豪語していました。



「ふ~っ、何て事だ!」

 レオポルド辺境伯は娘の顔を覗き込みました。

「母親似だな、キレイな顔をしている。俺の悪行を受け継がなかったのだな……」

(お父さんなのかなぁ? 強面こわもてさんだね)


「名前は何と付けられますか?」

「ふんっ、後を継がぬ娘の名など何でもよいわ、妻に任せる」

「はい」



 産後の母のベッドに、産湯を使ってサッパリした赤ちゃんが連れて来られました。

「貴方の名前は『マリエル』にしましょう」

「アウアウ」(マリエル)


「大人しい子ね、言ってる事が分かってるのかしら」

「アウアウ」(そうそう)


「お腹空いてる?」

「ダァダァ」(ないない)


「オシメは大丈夫?」

「ダァダァ」(ないない)


「ママの事好き?」

「アウアウ」(スキスキ)


(ママンは凄い美人だわ、胸もDカップ以上あるわね)

 マリエルは母乳を一生懸命吸いながら、ママンの顔を見続けます。


 後で知ったのだけど、元々ここの領主の娘だったのを、パパンが侵略して全てを略奪したらしいの。

「ママンは女の子が産まれて嬉しいわ、戦争とか侵略とか関係無いもの。マリエルが嫁ぐ時は一緒に連れてってね」

「アウアウ」(うんうん)


 ママンのお乳を頂いた後で、女官にオシメを取り替えられて、結構豪華なベビーベッドに寝かし付けられました。

乳母うばは必要ありません、私のお乳で育てます」

 ママンはそう主張してたそうです。


「胸が萎むと旦那様のご寵愛をめかけに取られてしまいますよ」

 女官長がそう言うのをママンは聞きませんでした。


「かまいません。この子に愛情を注ぎたいのです」

(ママン、ありがとう!)





 私は早速女神様に呟きました。

「女神様、私の名前はマリエルになりました。これからはマリエルとお呼びください、よろしくお願いします。
 それと、女神様の名前を聞いてませんでした、教えて下さい。
 あと、ステータスの事ですけど、本当に普通なんですね。ちょっとガッカリしました。
 生活魔法ぐらい覚えてると思いました。
 普通に平均的な魔法は使えると嬉しいです。
 それでは、今日はもう寝ますね。赤ちゃんだからなのか、すごく眠いのです。おやすみなさい。
 親友マブダチのマリエルより」



「マリエルちゃん、お誕生おめでとう。普通に健康に産まれて良かったね。
 ただ母親が規格外に美人さんなので、外見は普通以上になると思うよ、ラッキーだね。それは、友達に成る前に決まってたのだけどね。
 それと私の名前は、『エイル』です。エイルちゃんと呼んでも良いですよ。マリエルちゃんだけの友達特典です、一般人には許してませんからね。
 そして、生活魔法ですけど5歳に成ったら使えますよ。赤ちゃんが『着火』魔法を使ったら、火事に成っても消せないでしょう。
 人間の赤ちゃんは魔法が使えない仕様に、異世界全土で統一されてます。
 ちょっと変わった家庭に生まれましたけど、見守ってますので安心しておやすみなさい。
 親友マブダチのエイルより」




【後書き】
北欧神話に出てくるエイルは、「援助」や「慈悲」の女神で、「最良の医者」でもある。
彼女は全ての治療に精通しているが、特に薬草に詳しく、死者を復活させることもできたという。
医師の女神として、特に医療従事者にあがめられていた。
彼女は、肉体的な治療だけではなく、精神、感情、霊的な治療も行っていたとされる。
彼女は、訪ね求めてきた全ての患者に治療を施すが、秘術を授けるのは女性だけである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

処理中です...