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 開始と同時に歓喜が溢れ、ほとんどの観客はこのイベントを見たい者が多数であろう。
「それでは本日のサプライズゲスト! 芦田(あしだ) 美(み)花(か)さんの登場です!!」
「「「ウオォォオォ!!」」」
 日本で今一番人気のある若手の女優である。
 21歳という若さで多才であり、日本で一番可愛い女性であると注目を集める人物である。
「皆さん。こんにちわー!」
 
 舞台に登場した美花。
 何処となく幼げさを残した大人の女性。
 太陽の光に反射する黒髪はなめらかで、美花が動く度にふわりと舞う。垂れ目の彼女はおっとりとした感じがあるが、何処となく抜け目がなさそうな雰囲気も感じる。
 
「私は仕事終わりで来たので、先ほどの大会の事を知りませんが、なにやら楽しい事があったみたいですね。で・す・が・ 次の大会もそれに負けないぐらい盛り上げていきましょう!!」
 
 マイク越しに聞こえる声は透き通る綺麗な声をしている。さすが女優という事だろうか。

「それではさっそく初めて行きましょう!」
 
 美花の進行で10番までの女性がステージに出てくる。だが、この時誰もが異変を感じ取る事が出来るほど、参加者達の覇気が失われていた。
 去年だと、ステージに出るや自分達を見て欲しいと言わんばかりに手を振りアピールをしていた。だけど今年はお    通夜の様に女性陣達が出てくるのだ。

「えぇ~と……」
 
 さすがの美花もあまりの事に上手く話しを続ける事が出来ない。だけど、そこはプロの意識を保ち一人の女性に話しかける。

「何かこちらの不手際がありましたか?」
 
 一番の札をつけている女性に話しかける。
 美少女コンテストに参加するだけありレベルは高く、アイドルをしていると言っても信じてしまいそうな容姿である。

「不手際はないですけど、参加者の一人に絶対に勝てない人が居まして…… それでモチベーションの方が……」
 
 皆、容姿には自信があるものが参加しているにも関わらずコンテストが始まる前に皆が負けを宣言する事態となっていた。
 残りの参加者も一番と同じ理由であった。
 
 残りの参加者も呼びステージに呼ぶと、美女の中に圧倒的な存在感を放つ人物がいる。それはもちろん晶の事である。
 まるで下界に遊びに来た女神、そのような印象を受ける者もいるほどの存在感である。
 そんな晶の姿をみた美花も世間では日本一ではと言われているため、それなりに自信はあったが、晶の姿を見る事でその感情は粉々になる。

「えっ、天使?」
「人間ですよ!」 
 
 晶の容姿に見惚れて無意識に漏らした言葉に晶がツッコミを入れる。

「ヤバイ、声も素敵。 天は二物を与えずと言うけど彼女はどれだけの物を…… いや彼女はすでに人の域を?」
「だから人ですってば!」
  
 晶は人間だと何度も答えるが、一般人から見れば晶、夕の容姿はまるで誰かに作られた様な完璧に等しい姿。誰もが一度は理想な姿を思い浮かべるそんな姿である。

「う~ん。これは困りましたね」

 誰もが晶と比べられる事を拒否する。
 このままコンテストを続けてもやる気を失ってしまっている彼女達を傷つける事になるかもしれない。
 結果、満場で晶の優勝を決めて、その後は美花と晶のトークで場を繋げる事に決まった。

「と言う訳で急遽変更になりましたが、天界から舞い降りた天使様にお話を聞きたいと思います!」
 
 大会が始まるやいなや、いきなり優勝してしまった事に晶は困惑しているが、本人の意思を無視するかのように晶のインタビューが始まる。

「まずは自己紹介をお願いします!」
「えぇ~ 浅井 晶と言います。15歳です。趣味はゲームです」
「意外ですね。てっきり趣味は自分磨きなのかと思いましたが、ゲームは何をなさっているのですか? 私の弟も最近オンラインゲームにハマっていますよ。たしか昔にあった戦艦で戦うゲームで、最近そのゲームのトップの人の正体がわかったみたいで興奮したように話をしていた事が印象に残っていますね。すごい称号を取った人がすごく綺麗な子と言っていましたよ」
「あっ……」
 
 美花の話が少し前に経験した事のある記憶を思い出し少し恥ずかしくなる。

「あれ? もしかして晶ちゃんの事でしたか?」
「多分私です」
「まさかの偶然ですね! これは弟に自慢できそうな話ですね! これは会場の方も驚きを隠せないようですね」
 
 観客で来ている中にも同じゲームをしている者もいるかもしれない。そうでない者も晶がどういったゲームをしているか気になる者はスマホで検索し始める。

「そして女性陣が一番気になるのは晶ちゃんの美容の方法を知りたい方が多いと思いますので聞いてみたいと思います! 気になるお肌の手入れは何か特別な事をしているのですか?」
「特別な事はしてないですよ? 洗顔など普通にしているだけで特別な事は何もしていません……」
 
 晶の言葉にコンテストに参加している者やインタビューをしている美花に精神的なダメージが入る。
 可愛らしく見せる為に化粧の技術を勉強する者や洗顔一つでも色々な方法を使い努力をする者は多いだろう。

「むむ、よく見ればお化粧も全くしていない状態でこれほどとは、私も参加者だったら心が折られていますね!」


 美花の言葉は本心である。
 ある意味化け物と対峙して勝てる要素は何処にも無い。

「そんな事は無いですよ? 皆さん可愛らしいですし、さっき美花さんと話していた一番方なんて夕の好みの方ですよ?」
 
 暇そうに審査員側で座ってジュースを飲んでいる夕に振る事を決めた晶であった。

「ん~ 夕さんとは…… んん? 何々? 先ほどアームレスリングで優勝した人ですか?」
 
 進行役の女性が美花に説明すると、美花に呼ばれた夕は渋々とステージにあがる。

「本当に15歳ですか?」
 
 年齢にそぐわない体系と容姿に美花の頭の上にクエッションマークが出る。

「そこにいる晶と同級生ですけど?」
 
 夕の問いを無視するように美花は夕の腕をぺたぺたと触る。

「私よりは太い腕ですけど、男性と比べると、細いのによく優勝できましたね」
 
 傍から見れば八百長でもしているのかと思うレベルである。本当に力で優勝したのか見ていない美花からすれば不思議であるのだろう。

「よし! そこの選手の方こっちに来てください!」
 
 突然、美花に呼ばれた浜口の対戦相手だった選手がステージに上がる。
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