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 今の学生は中学生になれば携帯の一つは持っているので、何かあると電話やチャットをするのが日常である。

『男っぽい声の持ち主だな。彼氏か?』
『このご時世で、外から呼ばれる事ってあるのだな』
『懐かしさを感じる』
「少し席を離れます」
 
 部屋から勢いよく飛び出すと玄関先まで、駆け足に近い勢いで降りて行くと玄関を開ける。
 そこには、男性物の服を着こなしている夕の姿があり、少しでも強気で押されると、落ちてしまいそうになりそうなほどである。
 そんな隣はハーフ顔の晶が綾子を見ながら申し訳なさそうな表情で手を小さく振って来る。
 同じ女性として何もかも負けたと感じる女性である。
 夕と違い常識があり、この状況も単独なのだろうと思った。

「ごめんなさい。連絡も無く……」
「別に大丈夫ですよ。察しはつきますので……」
 
 夕の方を綾子は見ると、どうしたと言わんばかりに首を傾げる。

「お菓子持って来たから」
 
連絡も無く着てしまったお詫びで晶は綾子にゼーリ等が入っているお菓子セットを綾子に渡す。

「これはどうもです」
 
と受け取ってしまったという事は、断れなくなり、綾子は二人を家の中に入れる。

「その少し言いにくいのだけど、今配信をしていて……」
「別に良いよ。俺達が無理に来ているわけだし、もうすでに配信に映っているわけだし気にしないよなぁ?」
「まぁ、私は気にしないから、好きなだけ配信していて良いよ? 邪魔にはならない様にはするから」
「そっそう?」
 
 友達の前で配信するとか少し恥ずかしいと感じつつ部屋に戻る。

「へぇ~ これが委員長の部屋か~」

 すっきりとした部屋の隅っこに大きめなクマのぬいぐるみがあり、後は勉強机には参考書など置いている。

『委員長の友達…… って晶ちゃんと夕ちゃんか!』
『誰この二人……? コラボ? モデル並みの容姿だけど! 説明はよ!』 
『なに? お前知らないの? 委員長とこれから配信する仲間だよ! 新メンバーだよ!』
「メンバーじゃないですよ! ただの友達ですよ!」
 
 パソコンの画面にツッコミをする綾子は学校に居る時と雰囲気が違い楽しそうにしている。

「ん~ 委員長の匂いがする~」
 
 夕はベッドにごろりと寝ころび綾子の匂いのついた布団でゴロゴロとしている。
 女性になってから女性の免疫が強くなったのか、女友達の様に接する事が普通になっている。
 晶はまだ少し線を引いていると言った感じではある。

「匂いをかがないで下さいよ! というか、そんな恥ずかしい姿が配信に映っていますよ」
「基本これが俺だから大丈夫だよ」
 
 パソコンの前から離れた綾子の代わりに晶がカチカチと触る。二つモニターが一つは配信用で、もう一つは日ごろから晶が見慣れているゲーム画面であった。

『おっハーフっ子の晶ちゃんとイケメンの夕ちゃんじゃん! いつ見ても綺麗だね』
『同じ女性として、全部負けた気がする……』
『そんなお前にも秀でている物があるだろう?』
『えっ何?』
『このゲームはお前の方が強いと言う事だ!』
『何も自慢できねぇじゃねぇか!』
『というか晶ちゃんもこのゲームが気になるか?』
「まぁ気になると言いますか、まさか同じゲームをしていると思わなくて……」
 
 そう綾子と晶は同じゲームをしている事実が発覚する。
 ちなみにRPGのゲームに関しては夕が誘って始めた事だが、この体になってから夕はゲームをする事が無くなったのだ。

「えっ! 晶ちゃんもしているの? 知り合い誰もしていないから中々話せないのよ! 一回試合してみる?」
「えっ試合して良いの?」
「良いよ!」
『晶ちゃんがなんの艦使うか楽しみだな』
『ちなみに委員長は最速で轟沈して、へこんでいたよ!』
「配信でも委員長っていわれている……」
「前までは綾って言われていたけど、この前の事で……」
「それは…… うちの子がごめんね」
『うちの子って母親か!』
 
 綾子と話している間にマッチングが始まり、自分が操作する艦を選ぶ。

「う~ん この子で良いかな」
 
 選んだ艦は暁と言う日本の駆逐艦である。

『暁を選んだか、バランスの良い艦だね』
『でも現状は厳しくないか? 隠蔽が少し物足りないから格上の船には苦戦をしいられる』
『別になんでも良いじゃねぇか! 可愛い子がこのゲームを楽しんでくれる事が一番大事だ!!』
『それな』
 
 既にゲームに夢中になっている晶はコメントが書き込まれている事に気がつかない。開戦すると数名の駆逐艦が前線に飛び出し、周囲の索敵を開始する。
 味方と足並みを揃えて、索敵をしていくとしばらくすると、敵艦を見つけた合図が届くと、戦艦、空母、巡洋艦などの艦隊達も行動が活発になり始める。
『晶艦長! 2時の方角に敵艦複数発見しました!』
『敵艦は近くのB拠点を占拠する模様』
 
 戦闘が始まるとコメントは賑わい始める。
 
 そんな中、晶が操作している暁は島の陰に隠れて進行を停止する。

『そのタイミングでなぜ島の陰に隠れる?』
 
 リスナーには晶の行動がわからないみたいである。
 それに気がついた綾子が不思議そうに聞いて来る。

「ねぇ? なぜこのタイミングで島の陰に隠れているの?」
「ん? まぁ感が強いけど、敵艦の駆逐艦一隻が見えないから、こっちに来るかと思って隠れているだけだよ。駆逐 艦の速度ならもうそろそろ此処を通過しそうだから」
 
 と言うと島陰から魚雷をばら撒くと、その数秒後に敵艦の駆逐艦が現れ右舷(うげん)を魚雷がぶち抜くと体力ゲージは一瞬で削り取る。
 船には大きさがあり、駆逐艦と言うような小回りが利くような艦は回避能力が高いが、走行は低く、逆に戦艦や、大きな物になると、速度を出すまでに時間がかかり小回りが利かない様になっているが装甲が厚く沈みにくい船となっている。
 だが、あくまで装甲の厚みであって、鉄板が厚い船であっても、魚雷をぶち込まれるとゲージは大きく減り様々である。

『本当に駆逐艦が来るのか……』
『敵艦可哀そうだな。さっきの委員長みたいだ』 
 
 それから戦いは激戦となっていく。
 次々と味方と敵の艦は海に沈み始める。

『晶艦長! 敵駆逐艦と雷撃機の魚雷が来ます!』
「大丈夫! 雷撃機に側面をとられてなければ避けられます、駆逐艦もこの速度なら回避は可能です」
 
 晶は雷撃機に側面をとらせないように旋回しながら、駆逐艦の魚雷も避けて行く。高度な計算とテクニックが必要だという事に本人は気がつかずに無意識で操作をしている。

『あのタイミングの魚雷を回避出来るだと……』
『いくら小回りが利く艦ではあるが……』

 晶の巧みなテクで魚雷を回避して、残りの艦隊を見方が倒し終えると、試合は終了する。

『上位ランカー並みの実力じゃねぇか、さっきの女性はもう勝てるものが残ってねぇじゃねかよ』
『ドンマイ!』 
『ドンマイ!』
『…… うるさいよ! 少しは慰めてよ!』
「上手すぎない? 晶ちゃんとフレンド登録しても良い? 一緒にこれから遊びたいのだけど…… やっぱり足を引っ張るから迷惑かな?」
 
不安そうに綾子が聞いて来る。

「フレンド良いよ! 上手い下手関係無いよ! 楽しければ良いし、これからも一緒に遊ぼうね!」
 
晶と綾子はフレンド登録する。
 その際、リスナー数名から自分達もと言われたので、許可を出すとこぞって晶のアカウントにフレンド申請を続々と送られる。

「そうだ! 晶ちゃんのも見せてよ! フレンドをリスナーの見える前で登録していけばあぶれた人達も納得をすると思うし」
 
少し考えた晶は良いよと、綾子のゲーム落とし自分のアカウントで入りなおし始める。

『ん? この名前何処かで見た事があるぞ?』
『おい…… この名前って……』
「私の名前は有名なの?」 
 
 と聞くタイミングで晶のアカウントで入りなおすと、前回の使った艦と自分のランクが映るホーム画面へと移動すると、ランクは元帥と称号には不沈艦と表記されている。

『……』
『……』
『……』
『こんな所で不沈艦持ちとと出会うのか』
『マジかよ…… 俺は少尉なのに元帥にいちゃもんをつけてしまった』
『馬鹿な奴だな』
『不沈艦の称号ってそんなに取るのは難しいのか?』
『ランク戦かノーマル戦で連勝とは言わないが、総合成績の上位戦歴を残しつつ、30戦1度も轟沈しなければ貰える称号だぞ…… 芋プレイや普通の戦闘では戦歴ポイント届かないから、常に激戦の中で戦いぬかないと貰えない称号だ』
「へ~ この称号ってそんな事をしないと貰えなかったのね」
『本人は知らないだと…… このゲームで唯一持つプレイヤーだと言うのに……』
 
 そんなすごい称号だとは晶は知らなかった。
 もともとそこまでゲームが上手い訳では無かったが、この体になってからは計算力や記憶力がずば抜けており、そのおかげで此処まで上がれたのだ。ある意味チートなのかもしれない。
 その後、送られて来たフレンドを上から順登録して、しばらく雑談していると、一人のリスナーが夕の事が気になった。

『ねぇねぇ、夕ちゃんの反応が無いけど、何をしているの?』
 
 そいうや、部屋に入って来てから夕が反応をしていない事に気がついた二人は、夕が居た方を見ると、綾子の布団に潜りこんでスヤスヤと寝息をたてていた。
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