異世界転移二児の母になる

ユミル

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  画面越しに移っている二人の戦いはもは今の人間がどうにかできる状態では無かった。それほどまでに落ちているのだ。
 
 そして画面の向こう側では激しい攻防が繰り返されている。
 白い翼を生やしたユーリは高速で魔人に攻撃を仕掛けていく。魔人もぎりぎりの所で防御や受け流して、闇魔法で対応をしているが、魔人が少し押され気味に見てわかる光景が見える。
 ユーリ達を見ている者達はさすがユーリと言った感じで見ていたのだが、ユーリの一振りを躱して腕を捕まえる。
「チィ!」
 悪態を吐くユーリは掴まれた腕を払うが、一瞬の隙に魔人の拳が腹部に見事に入ると、とてつもない速さでユーリは吹き飛ばされて、上空に浮かんでいる場所から大きく外れて地上にゆっくりと高度が下がり、やがて砂埃を上げながら地上を転げまわる。
 まるで人形の様に無抵抗である。ユーリ本人の意識が刈り取られているのではないかと思える程である。
 それを見ていた者は生唾を飲み込んで声を出す事すら忘れている。
 過去に魔人を封印した人間達はいったいどのような方法で勝ったのかと思える程に凄まじいものである。
 ユーリと言う存在が居なければ、今の時代の魔人を止めるすべはないだろう。
「お母様!?」
「ユーリ!」
 砂埃が晴れるとボロボロになった服とユーリの姿が見える。
 ロイスは走り出そうとしているがラウムの障壁によって外に出る事が出来ない。
 ユーリはむくりと起き上がって、大丈夫とアピールをする。
 だがユーリの体から流れる血を初めて見る者達は不安でしかなかった。
 そう今までの戦いで血が流れた事が無いのだ。
 傷を癒したユーリは再び魔人の場所まで戻る。
「あぁ~ 痛かったわ~ 加減をしらないのかしら?」
 魔人に対してまだ余裕があるのか、あるように見せているのか、何事も無かったかのように話し出す。
「クックック、あの攻撃を耐えたか、面白い」
「本当にね!」
 翼の色が赤黒く変わり先ほどよりも攻撃と速さが上がった攻撃をしていく。
 さすがの魔人と苦戦を強いられ始めて、先ほどまでの余裕が消えている。
 武器は邪魔だったのか二人の武器は手から消えて魔法と打撃に変わっている。
 次第にユーリの攻撃が当たり始める。
 ぎりぎりで速度が勝っているのだろう。
 ふらついた隙を見て連撃を入れていく。
 無抵抗のまま殴り続けられる魔人は声を発さずに受けている。
 そしてユーリと同じように魔人も吹き飛ぶが、魔人は地面で踏ん張って耐えている。
 数十メートル下がるが、倒れる様な事は起こらない。
「クックック! 良い! じつに良い! これ程まで楽しい戦いは無かったぞ!」
 両手を空に向けて高揚している。
「褒め言葉として取っておくわ」
「ならばこちらも全力で行かしてもらおう」
 ゴゴゴと大地と大気に揺れを感じさせるほどの魔力が魔人に集まり始める。
 すると魔人の周囲に紫色のオーラが纏わりつき大幅に戦闘力が上がっているのがわかる程である。
 さすがのユーリもやばいかなと思わざる得ない。
 地上にいるメンバーもその異変を感じている。
「では行くぞ!」
 その瞬間に魔人の姿が消える。
 目で追えないので気配を感じて、探しているが近くに居るとしか感じ取れない。
 すると背後に立つ気配を感じたユーリは振り向き攻撃をするが、躱されたあげくに首を掴まれる。
「くっ!」
 ギチギチと首に力が加わる。
 ユーリは首を掴まれた腕を両手で握り力を加えて、魔人に蹴りをいれる。
 無様であっても早くのがれないと首を持っていかれる。それほどまでに力が加わっているのだ。
 無理な体制での攻撃は魔人には効いてい無いようだ。
「勝負あったようだな!」
 青筋を額に作りながらもユーリは必死に抵抗をするが、魔人は腕を上げて皆に見えるようにする。
 
「お母様!!」
 地上で見ているロイスは歯を食いしばっている。
 自慢の母親のあんな姿を見たくわなかった。
 ユーリなら魔人を倒してくれると思っていた。そんな強くて優しかったユーリが殺されそうになっているのだ。
 

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