異世界転移二児の母になる

ユミル

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 そしてユーリは言われたとおりに一人で指を差された扉に向かい始めようと、一歩踏み出すと、ロイスが腕を掴み行動を止める。
「お母様! これは罠です! こんな奴の事を聞かないで、二人を倒して全員で向かいましょう」
「ん~ 本当だとそうしたいのだけど……。 相手があれだからね」
 そう相手は魔人の王である。
 今までとは比べものにならない程危険であることはわかっているので、ユーリは出来るだけ一人で行きたいと思っている。
 本当はこれから戦いになると思うが、ユーリ本人ですら勝てるかと言われればわからないと答えてしまう程に強いのである。
 顎に指を当てながら考える素振りをするが、連れて行かないと決めてある。
 絶対といわないが、二人の魔人も戦いの勝負が決まるまでは手を出してこないだろうと思う。
 それにユーリが居なくなってから戦いが始まっても勝てるメンバーが集まっているのだ。置いていく方がまだ安全である。
 なのでユーリは皆にごめんねと手を合わせて言われた扉を開けて中に入っていく。
 後を追うようにロイスが走る。
 このまま言ってしまうとまた会えない気がしてままならないのだ。
 だが数歩走るとロイスは見えない壁に遮られて殴っても高い音が響くだけで壊れる事は無かった。
 魔人がしたのかと思って見てみるが、二人ともが驚いている。
 誰が障壁を張ったのかと仲間を見るが誰もが首を振っている。では一体だれがと思っていると、閉じられていた後ろの扉が開き始める。
「ど~も~」
 そこに居たのはユーリと似た女性の姿である。純白のドレスを着たラウムの姿である。
 初めて見る者はユーリの親族か何かと勘違いをしてしまう。
「生命神様?」
 覚えのあるロイスが驚く。
「元気にしていたかい? 娘に頼まれて君達を見に来たよ。まぁロイス君が心配する気持ちはわからないわけでも無いから、特別に彼女が何をしているのか見せてあげましょう」指を鳴らす音が響くと、テレビに電源がついたかのように空中に画像が現れる。
画面の中でユーリが動いている。
 テレビを見た事がある者はさして驚かないが、初めて見るの者は驚きを隠せない。グラハムにいたっては画面を触ろうとして、大和に首根っこを掴まれている。
 何故かと言うと大和はテレビの中の人がなぜ動いているのか気になってテレビを軽くノックしただけで壊してしまった事が原因なのだ。
 そのためまた壊れるかと思った大和はグラハムを捕まえたのだ。
 ユーリが映っているのに壊れて見られなくなると困ると言う事だ。
 
 そして画面越しに見られていると気がつかないユーリは暗闇の中を歩いている。
 右も左もわからない程に真っ暗である。
 常人ならば半狂乱に落ちいてしまう程に暗く不気味である。しばらく歩いているとうっすらと暗闇が晴れる。
 そこには一つの不気味な椅子に座っている魔人が膝を組み、ユーリの方を見つめている。
「クックック、久しぶりだな。あの時殺したと思っていたのだがな」
「えぇあの時はお蔭様で、胴体と離れ離れにしてくれたわね」
 昔話を楽しむ友人の様に語りかけるユーリ。
「どうだ? 余の物にならぬか? さすれば貴様が連れている者には手を出さぬと誓おう」
 魔人は目を細めて話しかける。
「断るわ」
 ユーリは即答をする。
「それは何故だ? 貴様なら余の力を見抜いているだろ?」
 魔人の力はユーリと互角かわずかに負けている可能性がある。それほどまでに強大である。
「貴方にはわからないかもしれないけど、私にはここにいるメンバー以外にも大事な人は沢山いるのよ? それに魔人が支配した世界なんて子供達が平和に暮らせないじゃない? 母親としては見過ごせないのよね」
「余にはわからぬ感情であるか……。ならば仕方がない力ずくでも余の物になってもらおう」
 椅子に座っているままふわりと浮いて、ユーリの前までやってくると、その場で地面に足を付けてユーリを見下ろす。
 そして小さな髑髏がついている杖をコンと床に突くと、地震が起こる。
 何が起こっているのか、ユーリはわからない。だがただ地面が動いているだけではないと感じ取れる。

 そのころロイス達も地震を体感している最中である。
 メンバーは慌てて外に出ると、驚く光景が広がっている。
 廃城の後ろにある一部の地面がくり抜かれて空に上昇しているのである。

 
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