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「ごめん…… なさい」
「もういいツカサ、俺も不満をぶつけてしまってすまなかった」
 天幕の中出来事が外に漏れていたのか、様子を見にきた兵士が不安そうにしている。
「すまない。大声をあげてしまった」
 一礼をした兵士は天幕を後にする。
 あれからどれ程の時間が立ったのかわからない。
 空を見ても、この世と思えない薄紫色の雲しか見えない。疲れが見え始めた前列と後退を繰り返しながら、前線を維持する。
 一番の疲労は、肉体より精神的なものが多いのか、情緒不安定な兵士も見える。
 この世と思えない空、倒した敵は霧となりその場から消える。
 そのため周囲には倒れた兵士しか見えない。だからこそ、敵減っているかどうかわからない錯覚に陥る。
「伝令! 前線崩壊! 至急対策をされたし!」
 天幕の外から兵士がレイン達に向けて報告をする。
 そして、戦場は大きく動き始める。
「僕が、先に見てこよう」
 レインは兵士と一緒に戦場に向かう。
 兄の後ろ姿を皆がらマリンは持っている杖に力がこもる。
 しばらくして、帰ってきたレインは険しい顔をしていた。
「数はこちらが上だが、上位の魔物に押されているね。正念場はここだろね。ここを突破出来れば魔王は目前だ。ただ突破をするのに少し火力が足りない。マリンすまないが僕と前線に来てくれないか?」
 マリンは無言のまま頷きレインと外にでる。
「待て、俺も行こう」
 二人を追うように席を立つ。
「君は、ツカサちゃんといないと、また一人で走って行くよ?」
  レインは先ほどの出来事思い返して、フリードを残そうと思ったのだ。
 フリードはレインより剣術が強く、一目置く存在、そんな彼が来てくれるならこの状況も打破出来る確率は上がる。
「大丈夫だ、こいつを代わりに残して置く」
「お久しぶりですね。ツカサ様」
 白銀の鎧を来て現れたのはランスであった。
「あれ? ランスどうしてここに?」
 首を傾げる。
「フリード陛下達の護衛をかねましてね。ツカサ様のお転婆具合は前から変わりませんね」
 クツクツと笑う。
 近くにいたランスは一部始終を見ていた。
「すまないが、ツカサを頼む」
「お任せください。ツカサ様と二人っきりの時間を楽しませてもらいます」
「おい……」
「冗談ですよ。陛下、武運を」
 背をピシッとして胸元に右手を添える。
「あぁ」
 ツカサとランスは3人を見送る。
 隊を引き連れて行ったのか本陣は先ほどまでうって変わって静かになる。天幕の中も3人が出ていった以降話はしていない。ただ、ランスはじっと正面に座ってじっとツカサの顔を見ている。
 流石に気になって仕方がないのかツカサが口を開く。
「何か、私の顔に付いていますか?」
 その言葉にランスはくびをふる。
「美しい者を見ていただけですよ。ずっと眺めていても、飽きないものですね」
「そう…… ですか?」
「どうです? 俺と少し遊びませんか?」
 突然の言葉に首を傾げる。
 皆が命をかけて、戦っているのに遊ぶと言う言葉に眉をひそめる。
「こんな状況でですか?」
「えぇ、そうです。そうですね~ ドラゴンなど見に行きませんか? どうでしょうか?」
「えっ!?」
 まさかの言葉に驚きを隠せない。その姿を見てランスは笑う。
「パーティーの募集は1名なんですよ。出来れば守りがいのある美人さんが来てくれれば、うれしいですね」
 じっとツカサを見るランス。
 ツカサを見て楽しんでいるかのように。
 おずおずと手をあげるツカサ。
「私が行っても、いいでしょうか?」
「えぇ、もちろんです」
「でも、フリードは……」
「大丈夫ですよ。俺は頼む。としか聞いていませんから、それにいずれ出るなら、早めに戦場に出るのも良いかと思います。ツカサ様は、今の戦場を見て慣れるべきだと思います」
「見て慣れる?」
 確かにツカサは戦うと無縁の所に住んでいたが、ここ数年は魔物を狩る事を慣れるために、フリード達と狩りをしていた事はある。だが、ランスの言葉の意味は違う場所にあった。
「えぇ、そうです。今戦っている魔物を倒すと霧のように消えます。となると残る者は、ツカサ様が守りたい兵士達の骸です。その姿に慣れるべきかと…… それを見て臆する様であれば私は、貴女に恨まれようが、戦場に出したくはありません」
 ランスの眼差しに一瞬怯みそうになる、そしてランスが言っていることも正しい。
 戦場に出て、死体で怯むようであるならば、戦場にでない方がいい。
 それはツカサ自身が一番わかった。
「わかりました。その遊びに乗りましょう」
「では、馬を用意しますのでしばらくお待ち下さい」
 天幕から出て馬を用意してくるランス。
「馬を扱うの不慣れでしたよね? 私が操縦するので、二人で乗る用になりますが、良いでしょうか?」
「えぇ、ありがとう」
 ランスに手伝ってもらい馬に跨がる。
 準備が終わり馬を走らせ始める。




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