1 / 1
堕ちる。
しおりを挟む
もし。
貴方は、自分の残りの人生がわかったなら。どう、生きますか?
まあこんな鋭くない文ではあったが、昔。小学生の頃。そんな質問をされた。
今になって考えてみると、海に行きたいだとか、好きなこと好きなだけするだとか。なんとなくでも決めておくものだったと、とても後悔している。
9月5日。地元の祭りに来た。
人生で21回目の秋祭り。
本当は昨日の夜辺りに来たかったけれど、その時はまだ東京の借りアパートに籠っていて、課題に没頭していた。
理系の学部に入って早3年。
単位はそれなりに取れていて、尚且つ一度疑問に思うと抜け出せない性格で。教授達にはよく質問をする威勢のいい生徒だと思われている。
課題の方は納得のいくものにはならず。
朝方に寝落ち。
友人からのメールで目が覚め。
気分転換にも、と、元々行く予定だった地元に帰ってに来た。
そして今日。
約1年ぶりに実家に顔を出し、約1年ぶりに、神社にやって来た。
混んでるなぁとは、思った。
祭りだから。そりゃあ当たり前か、そうも思った。
うちの神社の階段は長く、大体の人が裏の坂道を車で上り。駐車場に停め、神社に行く。
私は、家が近い事も、車を持っていない事も重なって階段を上がっていた。
一応、階段の橋を通って。
出店が沢山並んでいて、こんな時間だからか、苦手な子供も沢山居た。
子供の頃は金がないからと我慢して買わなかったフランクフルトの屋台も、キラキラと変わらず綿飴屋台の隣に立たずんでいた。
ほっとした。
まだ帰る場所は変わらないと、そう思えたから。
ただ、目の高さが変わっただけで。
相変わらずなものだが、小さな音楽が鳴り、食べ物のいい匂いがし。
昼だと言うのにライトアップされた飾り物。
夜だけやるカラオケ大会のコーナーなんかも開かれおり、そこのブルーシートには沢山の人がピクニック気分で座っていた。
うちの祭りは大掛かりだなと思った。
その分ちゃんと人が来るのも、この祭りのいい所ではある。
手水舎に寄り、手と口を濡らした後。
ポケットティッシュを取り出し、手を拭いた(ハンカチはあいにく無かった)。
そのままフラフラと賽銭箱の方に向かった。
パンッパンッ
今年もいい年になりますように。
乾いた音が耳に響いた。
元旦にも願った事だ。
けれども、他に…特に無い。
これくらいの歳なら、恋人のひとりやふたり願うんだろうが、私にはそんな出会いがない。
…いや、ふたりはダメだろう。
「にいちゃーん!!それとって!!」
階段を下がっている所で、知らない子供に声を掛けられた。
可愛い顔をした、将来アイドルが似合いそうな男の子だった。
「………」
一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔を作って答えてみた。
「どれだ」
大丈夫。こんな感じで大丈夫なはずだ。
子供は構わず、笑顔で質問に答えた。
「それ!足にあるやつ!」
「あ?…」
それは、私の陰に隠れた端のとがった小さなガラス片だった。
「…こんなの集めてどうすんの」
「キレーだろ!今皆で集めてんだ」
「皆って…」
その子供の奥に、小さい少年少女がキラキラするもの。
シーグラスなんかもしゃがんで集めていた。
いや、危ないだろ。
…普通に渡せばいいんだろうか。
でもな、何か問題を起こされても困る。
良心なんかじゃない。自分の為だ。
「…君……これ危ないから。…あっと、怪我しちゃうかもだから。」
「だってぇ大人の人たちみーんな片付けちゃうんだもん」
そりゃあ危ないからな。
そう口を抑えて、優しく言った。
「……わかった。…じゃあ坊や。それ、預けてくれないかい?」
言えた、はずだ。
結局。私が預かるという事にして、大体の子供から、ガラス片。釘なんかも。それを回収した。
してしまった。
それからゆうゆうとフランクフルトを食べた。
徹夜で課題を詰めたからだろうか。
頭が回らなかったんだろうか。
てか課題終わってないし。
さっきの俺、恨むぞ。
屋台に並んでいる途中、二人の子供に宝石を返せとせがまれたが、これ以上のものがあるだろうと子供をなだめた。
例えば?と、ませた子供にせがまれたが、家族とか。と適当に放した。
さらにませた子供が、親がいない子はどうするん。と聞いてきたが、好きなやつ捕まえろ。とだけ言った。
言って歩きながら、自分にも言えるなと思い返した。
当たり前のように、屋台の店主に何をしたと止められたが、説明をし、そりゃ危ねぇな。と賛同された。
神社帰りに実家に帰ろうと。じゃあその時に捨ててしまおうと、ビニール袋に入れたキラキラとしたゴミを手に持ち。
階段を降り始めた。
降りて2段の所だった。
「っ…すいません」
独特の匂いを保った何かがぶつかってきた。
それも、意図的に。
いや。絶対そう。
謝ったのは当然私の方で。見ると50前後の男だった。
謝ったし、とすぐにそこからまた2段、早足で降りた。
すると右腕を捕まれ、大きな顔が迫ってきた。
「どこ見てんだてめぇッ」
わざわざ近づけてきた口が酒臭さを物語っている。
こいつ……酔ってる。
「すいません」
面倒ごとは裂けたい。
それに、もし今転んで何かあったりしたら。
2度目になるが、この階段は長い。
捻挫じゃ済まない。
「ぁあ!??謝罪の一言もねぇのかよ」
いや今言ったろ
「あの…すいませんって。」
「……ぁぁ。何か買ってきましょうか?」
「はぁ!????要らねぇっ!」
「っは」
ドンッとなにかの衝撃の後。
自分が転げ落ちていることに気がついた。
話す余地も無かった。
たった2分もしない何かだった。
背中をやられた。
「ハッハッハ!!成敗成敗!」
なんて笑っている声が聞こえた。
世の中の酔っ払いってこんなもんか?
バカバカしいとも思えなかった。
「くだらない」
なんて、初めて思えた。
1月3日。午前四時。
「……」
白く。微かに濁った汚れが気になる何かを、見ていた。
watchよりsee。
いくら避けようと思っても今見えてしまうもの。
白いパネルのような何か。
「あっ…先生ー!!!」
近くで女性の声が聞こえた。
とても深々としていて、そして透き通る声。
何度もこのセリフを呼んだかのような、そんな声が聞こえた。
頭をフル回転させ、少し後にぼんやりと気づいた。
ぁあ。…これ、病室の天井。
貴方は、自分の残りの人生がわかったなら。どう、生きますか?
まあこんな鋭くない文ではあったが、昔。小学生の頃。そんな質問をされた。
今になって考えてみると、海に行きたいだとか、好きなこと好きなだけするだとか。なんとなくでも決めておくものだったと、とても後悔している。
9月5日。地元の祭りに来た。
人生で21回目の秋祭り。
本当は昨日の夜辺りに来たかったけれど、その時はまだ東京の借りアパートに籠っていて、課題に没頭していた。
理系の学部に入って早3年。
単位はそれなりに取れていて、尚且つ一度疑問に思うと抜け出せない性格で。教授達にはよく質問をする威勢のいい生徒だと思われている。
課題の方は納得のいくものにはならず。
朝方に寝落ち。
友人からのメールで目が覚め。
気分転換にも、と、元々行く予定だった地元に帰ってに来た。
そして今日。
約1年ぶりに実家に顔を出し、約1年ぶりに、神社にやって来た。
混んでるなぁとは、思った。
祭りだから。そりゃあ当たり前か、そうも思った。
うちの神社の階段は長く、大体の人が裏の坂道を車で上り。駐車場に停め、神社に行く。
私は、家が近い事も、車を持っていない事も重なって階段を上がっていた。
一応、階段の橋を通って。
出店が沢山並んでいて、こんな時間だからか、苦手な子供も沢山居た。
子供の頃は金がないからと我慢して買わなかったフランクフルトの屋台も、キラキラと変わらず綿飴屋台の隣に立たずんでいた。
ほっとした。
まだ帰る場所は変わらないと、そう思えたから。
ただ、目の高さが変わっただけで。
相変わらずなものだが、小さな音楽が鳴り、食べ物のいい匂いがし。
昼だと言うのにライトアップされた飾り物。
夜だけやるカラオケ大会のコーナーなんかも開かれおり、そこのブルーシートには沢山の人がピクニック気分で座っていた。
うちの祭りは大掛かりだなと思った。
その分ちゃんと人が来るのも、この祭りのいい所ではある。
手水舎に寄り、手と口を濡らした後。
ポケットティッシュを取り出し、手を拭いた(ハンカチはあいにく無かった)。
そのままフラフラと賽銭箱の方に向かった。
パンッパンッ
今年もいい年になりますように。
乾いた音が耳に響いた。
元旦にも願った事だ。
けれども、他に…特に無い。
これくらいの歳なら、恋人のひとりやふたり願うんだろうが、私にはそんな出会いがない。
…いや、ふたりはダメだろう。
「にいちゃーん!!それとって!!」
階段を下がっている所で、知らない子供に声を掛けられた。
可愛い顔をした、将来アイドルが似合いそうな男の子だった。
「………」
一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔を作って答えてみた。
「どれだ」
大丈夫。こんな感じで大丈夫なはずだ。
子供は構わず、笑顔で質問に答えた。
「それ!足にあるやつ!」
「あ?…」
それは、私の陰に隠れた端のとがった小さなガラス片だった。
「…こんなの集めてどうすんの」
「キレーだろ!今皆で集めてんだ」
「皆って…」
その子供の奥に、小さい少年少女がキラキラするもの。
シーグラスなんかもしゃがんで集めていた。
いや、危ないだろ。
…普通に渡せばいいんだろうか。
でもな、何か問題を起こされても困る。
良心なんかじゃない。自分の為だ。
「…君……これ危ないから。…あっと、怪我しちゃうかもだから。」
「だってぇ大人の人たちみーんな片付けちゃうんだもん」
そりゃあ危ないからな。
そう口を抑えて、優しく言った。
「……わかった。…じゃあ坊や。それ、預けてくれないかい?」
言えた、はずだ。
結局。私が預かるという事にして、大体の子供から、ガラス片。釘なんかも。それを回収した。
してしまった。
それからゆうゆうとフランクフルトを食べた。
徹夜で課題を詰めたからだろうか。
頭が回らなかったんだろうか。
てか課題終わってないし。
さっきの俺、恨むぞ。
屋台に並んでいる途中、二人の子供に宝石を返せとせがまれたが、これ以上のものがあるだろうと子供をなだめた。
例えば?と、ませた子供にせがまれたが、家族とか。と適当に放した。
さらにませた子供が、親がいない子はどうするん。と聞いてきたが、好きなやつ捕まえろ。とだけ言った。
言って歩きながら、自分にも言えるなと思い返した。
当たり前のように、屋台の店主に何をしたと止められたが、説明をし、そりゃ危ねぇな。と賛同された。
神社帰りに実家に帰ろうと。じゃあその時に捨ててしまおうと、ビニール袋に入れたキラキラとしたゴミを手に持ち。
階段を降り始めた。
降りて2段の所だった。
「っ…すいません」
独特の匂いを保った何かがぶつかってきた。
それも、意図的に。
いや。絶対そう。
謝ったのは当然私の方で。見ると50前後の男だった。
謝ったし、とすぐにそこからまた2段、早足で降りた。
すると右腕を捕まれ、大きな顔が迫ってきた。
「どこ見てんだてめぇッ」
わざわざ近づけてきた口が酒臭さを物語っている。
こいつ……酔ってる。
「すいません」
面倒ごとは裂けたい。
それに、もし今転んで何かあったりしたら。
2度目になるが、この階段は長い。
捻挫じゃ済まない。
「ぁあ!??謝罪の一言もねぇのかよ」
いや今言ったろ
「あの…すいませんって。」
「……ぁぁ。何か買ってきましょうか?」
「はぁ!????要らねぇっ!」
「っは」
ドンッとなにかの衝撃の後。
自分が転げ落ちていることに気がついた。
話す余地も無かった。
たった2分もしない何かだった。
背中をやられた。
「ハッハッハ!!成敗成敗!」
なんて笑っている声が聞こえた。
世の中の酔っ払いってこんなもんか?
バカバカしいとも思えなかった。
「くだらない」
なんて、初めて思えた。
1月3日。午前四時。
「……」
白く。微かに濁った汚れが気になる何かを、見ていた。
watchよりsee。
いくら避けようと思っても今見えてしまうもの。
白いパネルのような何か。
「あっ…先生ー!!!」
近くで女性の声が聞こえた。
とても深々としていて、そして透き通る声。
何度もこのセリフを呼んだかのような、そんな声が聞こえた。
頭をフル回転させ、少し後にぼんやりと気づいた。
ぁあ。…これ、病室の天井。
11
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる