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第三部

いざ、次の街へ

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 ヴィートから一緒に寝ようと誘われたけど、なんとなく悪寒がしたので、いつものようにクラウディオのベッドにお邪魔させてもらう。
 思ったよりも疲れていたのか、ベッドに入って、次に気付いたときには朝だった。
 宿の主人に礼を言って、私たちはヴェルディの街を旅立つ。
 三人でのんびりと歩きつつ、南の方へ向かう。
 途中でこれから行く街について、ヴィートがレクチャーしてくれた。
 コルシの洞窟に一番近い街は、コルシニという名前らしい。
 覚えやすい名前でよかった。
 迷宮ダンジョンのおかげで魔道具の材料には事欠かず、挑む冒険者も多いことから、ヴェルディの街よりもかなり大きいのだそうだ。
 どんな場所なのか、今からわくわくする。
 武器屋とかものぞいてみたいし、お金に余裕があれば、新しい服も買いたい。
 コルシニの街について、いろいろと夢を膨らませていると、私たちの行く手に魔物が立ちふさがった。
 山間やまあいの道は細く、魔物を倒さなければ進めそうにない。
 私が腰からワンドを手にしたときには、私以外の二人はとっくに戦闘準備が終わっていた。

大蛙ビッグ・フロッグだ。火属性が弱点だ。行くぞ!」

 ヴィートが剣と盾を構え、真っ先に飛び出していく。
 私はヴィートからのアドバイスどおりに、火属性の魔法を使うことにする。今日はなんだかいけそうな気がする。
 私はきゅっとワンドを握りなおした。
 クラウディオが攻撃を終え、後ろに下がる瞬間を見計らう。
 盾を構え、蛙と組み合っていたヴィートも下がる。
 ヴィートはきちんと私の意図を読み取ってくれていた。
 今だ。
 深緋こきひ、フレイムウォール!
 火の精霊が生み出した魔法の炎は、地面から壁のように湧き上がり、大蛙を飲み込んだ。

「よしっ!」

 青白い炎が、大蛙を焼き焦がす。
 思っていたよりも容易く魔法が発動できたことにほっとする。

「なかなか、連携が、よくなった」
「うん」

 クラウディオに褒められると、本当に嬉しい。

「魔石があったぞ」

 ヴィートが魔物の遺骸から魔石を回収する。

 このパーティで戦うのにも、だいぶ慣れてきたなぁ。

「今は火属性が弱点だったから別に構わないが、素材を採集できる魔物もいる。覚えておけば金になる」
「ええ、ほんと?」

 てっきり魔石しかお金にならないと思ってた。

「ま、無理にとは言わない。採集にはそれなりの技量が必要だから採集を専門にしている冒険者がいるほどだ」
「皮を、剥ぎ取るのは、むずかしい」

 クラウディオがうんうんとうなずく。
 うわー。羽とかだったらできそうだけど、スプラッタはちょっと無理かも。
 ドラゴンの姿だったときは大抵ドラゴンブレスで一発だったから、魔石ぐらいしか残ってなかったんだよね。

「覚えとく」

 覚えられるかなぁ……。

「さ、行こうか。もう少ししたら休めそうな場所があった気がする」
「ヴィートは詳しいんだねぇ」
「まあ、仕事柄いろいろな場所に行ったことがあるからな」

 ん、仕事柄? ヴィートって冒険者じゃなかったっけ。冒険者は互いの素性は詮索しないのがルールだっていうけど、まだまだヴィートについては知らないことが多いなぁ。
 クラウディオだって隣の国出身だし、どうしてこの国にいるのかも知らない。
 でもそんなこと知らなくたって、一緒に戦っていれば大体のことはわかる……気がする。
 クラウディオとの師匠メンター制度だって、いつまでも弟子でいられるわけじゃない。彼らと一緒に戦うことは私にとって学ぶべきことがとても多い。求めて容易く知識やコツを与えてもらえるのは今だけだ。
 だから、私はこの時を大事にしたい。悔いのないように、頑張るんだ。

「ルチア、どうした?」

 ヴィートが怪訝そうな表情で見下ろしている。

「ううん、なんでもないよ。さ、行こう!」
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