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1巻
1-1
しおりを挟む一 再会
「リュシー?」
「えっ?」
ホテルのロビーで、すれ違いざまに長身の男性に強い力で腕を掴まれ、呼び止められたリュシーは、男性の顔を見上げてしばし茫然とする。
「フィル……」
それは、六年前に別れた恋人の姿だった。
男らしい粗削りな容貌も強い意志が表れる緑の瞳も、ダークブラウンの髪も、記憶にある姿とほとんど変わりはない。仕立てのいいラウンジスーツを着こなした姿は、男らしさに満ちあふれていた。
ふと、フィルから体臭と香水の入りまじった、彼独特の香りが漂ってくることに気づく。
(相変わらずね……。でも、どうしてここに彼が?)
一旦はひきずられそうになった気持ちを、リュシーは秘書の仮面の下に無理矢理押し込めた。
冷静になってみると、自分の抱いた疑問が愚問であったことに彼女は気づく。
(……どうして、なんて馬鹿ね、私。ここはブランシュ王国だもの!)
リュシーは戸惑いを覆い隠すと、きっぱりとした拒絶を込めた目で彼を見つめる。フィルはリュシーのその凛としたまなざしに、掴んでいた手を放した。
リュシーは改めて距離をとり、貴人に対する礼を執った。
「お久しぶりでございます。フィリップ殿下」
「君に殿下、と呼ばれるとは……驚きだな」
フィルは一瞬驚き、リュシーの他人行儀な挨拶に顔をしかめたが、すぐに貴公子然とした微笑みを浮かべる。彼は、まるで六年間の別離がなかったかのように優しい口調で話しかけてくる。
「……久しぶりに会ったんだから、一緒に食事でもどうかな?」
リュシーは戸惑いを隠せずに、目を瞬かせた。
「お誘いは非常に嬉しいのですが、仕事が忙しいので……」
「リュシーはここに泊まっているのか?」
断りの返事を口にしかけたリュシーをフィルは遮る。
「……はい」
「もしかして、経済会議の参加者かな?」
折しも近隣の国々の代表が集まって、ブランシュ王国の首都である、ここブランシャールで経済会議が開催されている。
「ええ、政務官の秘書として同行しております」
「ちなみに、あなたの上司はどなたかな?」
「オーギュスト・アルヌー政務官です」
渋々といった体でリュシーが父の名前を口にする。
「そう。私もこのホテルに泊まっているから、滞在中にぜひ一緒に食事をしよう」
「ありがとうございます。予定が合いましたら……」
礼を述べつつ言葉をにごし、リュシーは逃げるようにロビーを立ち去った。
(どうしてこんなタイミングで、彼に再会してしまったのだろう)
この国に足を踏み入れるときに覚悟はしていたはずなのに、リュシーは動揺を抑えられなかった。
震える手を強く握りしめ、ホテルの前で待機していた馬車に向かって合図する。
「ブランシャール国際会議場までお願い」
扉のすぐ横に立つ御者に行先を告げると、その手を借りて座席に乗り込む。リュシーはため息をついて深くシートに沈み込んだ。
やがて馬車がゆっくりと動き出し、舗装された石畳の道を走り始める。
路面のおうとつにぶつかるたびに車輪がガラガラと大きな音を立てているが、物思いに耽るリュシーには気にならなかった。
次々とフィルとの記憶が思い出され、リュシーはあふれそうになる涙を必死に堪えた。
リュシーがフィルと出会ったのは、ベルナール共和国でも随一のレベルを誇る大学の構内だった。
フィルがブランシュ王国の王族として見聞を広げるため留学中の身とも知らず、ふたりは出会い、――そして恋に落ちた。
二 出会い
優美なアーチを描く、鉄製の柵が大学の敷地を囲っている。
シンメトリーに配置された植栽の中央は、噴水が勢いよく水を吐き出しており、周辺は学生たちの憩いの場だ。その奥には、三階建てのクリーム色の外壁を持つ校舎が立ち並ぶ。大きなガラス窓がいくつもはめられており、豪奢なたたずまいを見せていた。
その大学の一角、大講義室の並ぶ廊下でリュシーは足を止めた。
「これは君の忘れ物じゃないかな?」
人好きのする爽やかな笑みを浮かべて、ひとりの青年が羽ペンの入ったケースをリュシーに差し出したのだ。
リュシーはうしろを振り返って、声の主の容貌に目を瞠った。
(なんて男らしい、綺麗なひとなのだろう)
引き締まった身体つきに、彫像のように整った容貌を持つ彼は、まるで物語に出てくる王子様を思わせる優雅な物腰でリュシーの忘れ物を差し出している。
その仕草にリュシーはぼうっと見とれてしまっていた。
「違った?」
「あっ、ありがとうございました」
彼の声に我に返ったリュシーは、ずり落ちそうになった眼鏡の端を押しあげてもとに戻すと、あわてて彼からケースを受け取る。
ほんのすこしだけ触れた手のひらが、熱を持ったように感じられた。
廊下を通り過ぎる他の学生の目が彼に引き寄せられているのがわかる。リュシーは注目されるのが嫌で、一刻も早く彼が立ち去ってくれるのを待っていた。
しかしそんなリュシーの思いを裏切るように、彼はにこやかに話し続ける。
「私はフィル・カリエ。こちらへ来たばかりの留学生なんだ。できれば、大学の中を案内してもらえないかな」
柔らかな微笑みを浮かべつつも、彼の目は真剣そのもので、有無を言わせない支配者の持つ雰囲気を漂わせている。リュシーに無言の圧力がかかる。
(どうして彼は私なんかに案内を頼むのだろう?)
「ええっと、あなたのように素敵なひとなら、他のひとが喜んで案内してくれると思うのですが……」
「でも、私は君に案内してほしいんだ」
リュシーは自分の外見の地味さを自覚していた。
やぼったい黒縁の眼鏡に、シニョンにまとめただけの淡い金色の髪。加えてシンプルな白のブラウスに、くるぶしまで丈のあるプリーツの入ったスカートという、質素な服装をしている自分を魅力的だと思うひとは少ないだろう。彼が自分に案内を頼んでくる理由がわからない。
リュシーは当惑しつつも、生来の親切心から彼の願いに頷いた。
「私はリュシエンヌ・アルヌーと言います。政治経済学部の二回生です」
「リュシエンヌ……ね。とりあえずお昼を一緒に食べよう。食堂に案内してくれるかい?」
そう言って爽やかな笑みを浮かべるフィルに、いつの間にかリュシーの戸惑いはどこかへ消えていた。
リュシーは食堂へと続く、植物をモチーフとした鋳鉄のドアノブの前に立った。すかさずフィルが先にドアを開け、リュシーを先に通す。リュシーがフィルを連れて食堂に入ると、一気に視線が集中するのを感じた。注目されることに慣れていないリュシーは、居心地の悪い思いをしながらも、フィルに食堂の利用方法を説明する。
「好きな料理を取って、あそこで会計をするの。空いている場所はどこでも座っていいから。あと、食べ終えた食器はそこの返却口に自分で返してね」
緊張のため早口になりながら、リュシーは説明を終える。手本を見せようと、先にトレイを持って料理を取るための列に並んだ。
フィルは興味深そうにあたりを見回しながらリュシーにならった。
会計を済ませると、リュシーは窓際の席を選んで座る。ここからは構内にあるグラウンドがよく見渡せる。グラウンドを取り囲むように植えられた落葉樹が秋の寒さに見事に色づき、美しい景色を一望することができるのだ。リュシーのお気に入りの場所だった。
トレイを手にしたフィルが向かいに腰を下ろすと、リュシーは食事に口をつけ始める。今日も午後から夕方までびっしりと講義が詰まっている。英気を養うべく、リュシーは具だくさんのサンドイッチにかぶりつく。フィルから向けられる意味ありげな視線に気づくことなく、ただ黙々と食事に集中していた。
フィルの中ではリュシーのことをもっと知りたいという欲求が膨れ上がっていた。
明らかに上流階級とわかる雰囲気を持つ自分に対して、なんら頓着することなく話しかけてくるリュシーが新鮮に感じられる。そして、自分が意味ありげな眼差しで彼女を見つめていても、リュシーは気づいてすらいない。そんなことよりも目の前の食事に夢中なのだ。
(彼女はいままで自分の周りにいたどんな女性とも違っていて、面白い)
自然とリュシーを見つめるフィルの視線は、とろけるような、愛しいものを見る眼差しになっていた。
「ねえ、リュシエンヌ。君には誰か決まったひとはいるの?」
「んぐっ。ちょ、……いきなり何を言うの?」
突然話しかけられ、むせてしまったリュシーは、オレンジジュースで口の中の物を流し込んで、ようやく落ち着いたらしい。涙目になりながらもフィルを睨んだ。
「何って、君のことが気に入ったから付き合ってみたいなあと」
「冗談でしょ。いまそんな余裕もないし、お付き合いとかそういうことは考えられません」
「じゃあ、とりあえずは友人でもいいよ。付き合ってくれる気になるまで待つから」
自分の誘いをつれなく断る女性など滅多にいるものではない。フィルは自然と浮かんだ笑みを深くした。
「本当に冗談はやめて!」
「冗談だと思う?」
「ええ、そうあってほしいものね。それにあなたみたいなひとなら、もっと美しくて、素敵なひとを選べるでしょう?」
「私みたいなひとって?」
フィルは面白がって尋ねると、リュシーは憮然とした顔で答える。
「ハンサムだし、背は高いし、スタイルもいい。着ている服は上質でセンスもいい。女性には不自由していないはずよ」
少なくとも彼女が自分のことを好ましく思ってくれていることに、フィルの胸には喜びが込み上げる。
「それは私の内面とはなんの関係もないな」
「でも、内面は外見に表れるものよ」
リュシーの言葉にフィルは噴き出した。
「ははっ、そんな言葉を聞いたのは初めてだ!」
(私に対して、初対面でずけずけとこんなセリフを吐く女性がいるとは!)
フィルは可笑しさのあまり引きつりそうになる腹を押さえた。
そんなフィルを横目に、リュシーは時計を確かめ席を立った。
「ねえ、どこへ行くの?」
笑いのあまり、涙の滲んだ瞳を拭いながらフィルはリュシーを追って立ち上がる。
「次の講義が始まるの。失礼するわ」
自分の誘いよりも講義のほうが大事だというリュシーに、フィルの興味はますます深まった。
「わかったよ、リュシエンヌ。じゃあ、講義の終わる時間にここで待ち合わせしよう。君ともうすこし話したいんだ」
きっと彼女は嫌がるだろうと思いつつも、フィルは約束を取り付けずにはいられなかった。
思った通り、リュシーは不承不承という様子で頷いている。
「……夕方の六時ぐらいになると思うわ」
「わかったよ」
フィルの声を背に、リュシーは講義室へと立ち去ってしまった。
リュシーがフィルとの待ち合わせ場所に着いたとき、待ち合わせの時間を随分と過ぎていた。
(かなり遅くなってしまったし、彼はもう待っていないかもしれない)
講義でわからなかった部分を講師に質問していて、待ち合わせのことをすっかり忘れていたリュシーは望み薄だと思いつつ、念のために食堂を訪れた。
ステンドグラスを通して差し込む夕日。オレンジ色に染まるテーブルの端で、フィルは椅子に腰かけたまま眠っているようだった。
「フィル、寝てるの?」
「ん……ああ、ごめん。眠ってしまったみたいだ」
開かれた緑色の双眸は、ぼうっとして焦点が定まっていない。リュシーの視線はその美しい瞳に吸い寄せられる。けれど彼が瞬きをすると、その無防備な表情はすぐに覆い隠されてしまった。
「こちらこそごめんなさい。先生と話をしてたら、遅くなってしまって」
「いや、気にしないで。もともと私が強引に頼んだことだしね」
そう言って立ち上がる仕草は、上品で美しい。
(このひとが住む世界は、私とは違うのかもしれない……)
なぜだかそんなことを思ったリュシーの胸が、ズキンと痛んだ気がした。
「それで、なんについて話せばいいのかしら?」
リュシーの質問に、フィルは微笑んだ。
「友人としてでいいから私と付き合ってほしい」
「んーと……」
戸惑うリュシーにフィルは畳みかけてくる。
「恋人にはなってくれないんだろう?」
「それは昼間も断ったでしょう?」
「ああ、わかっている。だから長期戦で行くことにした。リュシエンヌみたいな女性は私の周りにはいなかったから、とても楽しそうだ」
「それって、私が変わっているって言いたいの?」
褒めているようには聞こえないセリフに、リュシーはジロリとフィルを睨むふりをする。
「そうだね。変わっているよ。すごくいい意味で」
「もう、仕方ないわね。でも、あくまで友人としての範囲でよ?」
「ああ、ありがとう」
本当に嬉しそうに笑うフィルに、不覚にもリュシーは見とれてしまう。
(どうせ、私みたいに地味で、大した取り柄のない女は彼の周りにいなかったから、愛玩動物か珍獣のように思っているんだわ。いちいち彼の言葉を真に受けて、ドキドキしちゃだめ……)
翌日から、リュシーはフィルと行動を共にすることが増えた。
講義の待ち時間に図書館で予習をしていると、どこからともなくフィルが現れ、向かいに腰を下ろしている。ふと見上げると真摯な眼差しに出会い、リュシーはどきりと鼓動を高鳴らせた。かと思うと、フィルはいままで見つめていた視線が嘘のように、にこりと笑って見せたりする。
フィルと共に過ごすうちに、リュシーはいつの間にか彼の姿を探し始めている自分に気づいた。
確かに彼は人目を引きつける力を持っている。
フィルの容姿に引かれて近寄る女性はあとを絶たない。けれど、フィルはリュシーが好きだと公言してはばからなかった。それに対し、リュシーは迷惑そうにフィルの言葉を受け流すばかり。そんなふたりの様子に、次第にフィルに近付く女性は少なくなっていった。
すぐに付き合ってほしいと言い出すことを除けば、フィルは友人として、付き合いやすい男性だった。しかも、同じ政治分野に興味があることもあって、ふたりで意見を戦わせることはとてもためになった。リュシーよりもひとつ年上のフィルは、やはりその分長じており、リュシーの足りない部分を指摘し、導いてくれることも多い。
リュシーはいつの間にかリュシエンヌではなくリュシーという愛称で自分を呼ばせるほどに、フィルに気を許していた。
毎日のように好きだと囁かれると、その気がなくても勘違いしてしまいそうになるのがたまに傷だった。
(彼にすぐになびかない女が珍しいだけ。だから……絶対に勘違いしちゃだめよ)
リュシーはフィルにときめいてしまう自分を必死に制した。
フィルが付き合ってほしいと口にするたび、リュシーは決まって断りの言葉を口にする。それでもフィルは気を悪くすることなく笑って引き下がるので、やはり冗談に違いないと安堵とも失望ともつかぬ気持ちにさせられた。
§
ふたりが出会ってから数か月が過ぎ、季節は冬へと移り変わり始めていた。
冷え性気味のリュシーは、冷たくなった手をケープの下に隠しつつ、ガラスと鉄で作られた時計塔の下でフィルを待っていた。
コルセットとバッスルで作られた美しい曲線を描くドレスを纏ったリュシーは、周囲の男性から向けられる好意的な視線に気づいていない。金のメダイヨンを掛けた胸元では、まろやかな膨らみがその存在を主張していた。
レースで作られた花飾りのついた帽子をかぶり、リュシーは時計を見上げる。待ち合わせの時間からはすこし過ぎていた。
「リュシー、ごめん」
リュシーの姿を見つけ、駆け寄るフィルの髪の毛は走ってきたのか、わずかに乱れている。
「急にこいつが一緒に来るというから、ちょっと手間取って……」
リュシーはようやくフィルのうしろにいる男性の姿に気がついた。フィルよりもすこし背の低い、がっしりとした体格のいい男性が顔をのぞかせる。
灰色でまとめられたカシミアのラウンジスーツを身につけた男は、フィルと同じ上流階級に属しているであろう雰囲気を漂わせている。
「君がフィルの愛しの君なんだね」
琥珀色の瞳にブラウンの髪を持つ青年は、フィルよりもすこし年かさに見えた。
「パトリック・セドランです。どうぞよろしく」
男らしい分厚い大きな手を差し出され、リュシーはあわてて手を出して握手に応えた。
「フィルの愛しの君は私ではありませんが、まあ、よろしくお願いします」
「ひどいな、リュシー。いい加減認めてくれてもいいのに」
大げさに打ちひしがれた風を装い、芝居がかった口調で嘆くフィルに、リュシーはふざけて言葉を返す。
「いつもそんな暇はないと言っているでしょう?」
「でも、今日は一緒に買い物に付き合ってくれって言うから、てっきりその気になってくれたのかと」
「説明したでしょう? 聖ピエール生誕祭の家族のプレゼントを選ぶのを手伝ってほしいと伝えたはずよ」
ふたりの軽妙な掛け合いに、パトリックはくすくすと堪えきれずに笑いを漏らした。
「噂通り、フィルがこれだけ口説いてもまったく脈なしなんだな」
「ああ、残念ながら私の魅力が彼女にはわかってもらえないようだ」
大げさに嘆きつつ軽口をたたくフィルを、パトリックは嬉しそうに眺めていた。
「リュシエンヌさん、できればこれからもフィルの良き友人でいてやってくださいね」
「私のことはリュシーと。フィルとはとっくに友人のつもりでした。パトリックさん」
「僕のこともリックでかまいませんよ。こいつが女性に振られるところを見るのは、実に痛快です」
「あら、そんなに珍しいの?」
「ええ、それはもう」
リックは嬉しそうに瞳をくるりと回し、おどけた表情を見せる。
リュシーはリックにつられて顔が自然とほころび、ふんわりと笑みを浮かべた。フィルはその自然な笑みに見とれていた。
(ああ、可愛い。リュシーは控えめな装いをしていても、こんなに周囲の目を集めている。着飾ればさぞ美しくなることだろう。こうして無邪気に笑っていると本当に可愛い。だが、この笑顔を引き出したのがパトリックだというのが気に入らない)
ふたりの仲の良い様子に苛立ちが募り、フィルは気づけば大きな声を上げていた。
「ああ、もう! ふたりとも早く行こう」
フィルがリュシーの腕を掴み、最近できたボン・マルシェというデパートへ向かって歩み始める。取り残されそうになったリックがあわててふたりのあとを追う。
「ちょっと、待ってー!」
リックの様子を尻目に、フィルは強引にリュシーの腕を掴んで先に進んで行く。
「それで、私は何を手伝えばいいのかな?」
「母と妹へのプレゼントは決まっているの。でも、父へのプレゼントに何を選んだらいいのか思いつかなくて……。いつもはタイやハンカチーフを贈っているのだけれど、あまり同じものばかり贈るのも芸がないし。フィルならいいアイデアを出してくれそうだと思って」
そう言ってフィルの顔を見上げるリュシーの様子に、フィルは愛しさが込み上げてくる。
(やはり、彼女がほしい。けれど、彼女にはまだ私を受け入れる準備ができていない。それに……、まだ伝えていないこともある。いま、不用意に想いを告げても、彼女の負担になるだけだ)
フィルはリュシーへの想いを胸の奥に押し込めた。
「さて、どこから行こうか」
「まずは香水を売っているお店を探してちょうだい。母と妹の分を先に買ってしまうから」
「了解」
店を探しだしたあと、リュシーひとりのほうがゆっくりとプレゼントを選べるだろうと、遠慮することにする。フィルはリックと共に店の前のベンチに腰を下ろし、リュシーのうしろ姿を見送った。
リュシーはふたりをそう待たせることなく、プレゼントが入った袋を手に店を出てきた。
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