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番外編
何かに夢中なあいつが憎い(森川視点)
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何かに夢中になることもなく興奮することがなくて毎日が楽しくなかった。
ある日、ゴミの掃きだめのような教室に向かう時、どこかから声が聞こえた。
「……じ、昨日のAV良かったよな!」
嬉しそうに声を弾ませて隣にいるであろう誰かにそいつは話しかけている。どうも私には気づいていないようだ。
「オナニーのおかずはぜってー巨乳!雄二は?前に買ったエロ本結局見せてもらってない!」
その声に聞き覚えがあり、雄二という名前を呼んでいることからそいつが山神慎太と分かった。雄二は寺山雄二でいつも山神の傍にいる生徒だ。2人は上へと続く階段の途中で立ち止まって喋っている。寺山に話している内容からして自分の性欲について話しているようだ。くだらない。
私はこの山神をよく思っていなかった。入学して早々に戸塚と喧嘩して、番長になった山神。いつも喧嘩ばかりして禄でもない人間。
「でも、オレは黒髪の清楚系がいいんだよな!雄二みたいなサラッとした黒髪が……」
そして、今もっと嫌いになった。
「……お前はオナニーのし過ぎだ」
寺山の表情はこちらから見えないが、呆れた声で山神に行っている。こちらから見える山神は寺山にとびっきりの笑顔を見せていて、その何かに夢中になっている山神にムカついた。喧嘩だけでなく、オナニーに夢中なことも、ペニスが勃つことも。何をしても私の下半身は反応することがなかった。私だけが灰色の世界でつまらない人生を歩んでいると言うのに、どうしてあいつはああなのだろうか?
この日以降、山神を見かければ以前にも増して嫌味を言うようになった。
一度、山神が1人の時にわざと怒らせるようなことを言った。「母親もお前のような息子を持って大変だ」とか「寺山も評判の悪いお前といていい迷惑だ」と言ってやった。怒らせて私を殴らせたら停学処分にできると思ったからだ。でも、すぐに駆け付けた寺山に妨害された。この2人の誰も割り込ませないような関係性にも腹が立った。
ある日、憎たらしい山神の変な噂を聞いた。
「欲求不満で変態プレイが好きらしい」
「色気がヤバいらしい」
「1人じゃ物足りなくて何人も関係があるらしい
「イカせたら幸運が舞い降りるらしい」
「弱くなったらしい」
他にもボクシング部の中村や体育教師の岡田とデキているなんて噂も聞こえてきた。どれも下品な噂で普通なら信じがたい内容だった。以前、階段で夢中になって寺山にオナニーの話をしていた時の山神を思い出す。あれだけ恥ずかしげもなくオナニーオナニーと言っていたのだ。欲求不満と言うのは本当かもしれない。
化学室へ向かう直前、校舎裏で喧嘩する声が聞こえた。また山神だった。でも、山神は珍しく逃げている。そして、あいつは馬鹿なことに化学室へと逃げ込んだ。もし本当にあの噂が本当なら?いや、噂が本当じゃなくてもこいつの恥ずかしい写真を撮ってばら撒けば窮地に追いやれるかもしれない。
自分より年齢の低い相手に何を愚かなことを、と思う。生きる虚しさを感じていた私はもうどうでも良かった。栄養ドリンク、興奮剤、媚薬……色々と試してみても私が興奮することはなかった。これほどまでに人生はつまらないものなのかと神を呪ったものだ。だから、山神を社会的に懲らしめたら自分の人生も楽しくなるかもしれないと思ったのだ。
普段の山神なら興奮する薬だと言えば食いつくだろう。だが、先ほどの逃げている様子と噂の内容からこいつは今、逆に興奮したくない状態なのだと分かった。真逆のことを言うとあっけなく山神はその薬を飲んだ。本当にこいつは馬鹿だな。
勃起している山神を裸に剥いても興奮しない。噂にあるような色気も感じない。落胆した。万が一の可能性にでも興奮するのではないかと思ったのだ。高い媚薬をただ山神にくれてやっただけで終わった。くそっ。
でも、山神の口を無理やり開けさせて誰かの体内を見た時、初めて綺麗だと思った。初めて誰かの粘膜をじっくりと見た。そしてもっと見たいと。口の中を直接触るのではなく、見ることで興奮するのだと分かった。歓喜した。今までどんなに頑張っても勃起しなかった自身のペニスに少しの硬さをもたらした。あぁ、神よ、ありがとう。
内臓はもっときれいなのかもしれない。でも、内臓を見ることはできない。あぁ、どうすれば……。あぁ、そうだケツ……いや、尻の穴を見たい。私としたことが下品な言い回しをしてしまった。
ケツ……尻の穴を見ながら素股をしたら完全なる硬さを維持して私のペニスは勃起し、射精した。こんなこと人生で初めてだ。目の前が明るくなった気がした。
残念なことに山神に返り討ちに会い、挿入することは叶わなかったが……。
屋上でこっぴどく寺山にやられてからは数日間、家で寝込んだ。夢に出てくるのは山神の粘膜だ。口の中、ケツ……いや、尻。いや、もう勃起するならケツでも尻でも何でもいい。口の中、ケツの穴。あぁ、今度は尿道が見たい……。
スマホを取り出して写真を見る。
あの日、実は山神の写真を撮っていた。無音シャッターで撮った写真は隠しフォルダに保存されるようになっているから山神は気付かなかったらしい。でも、裸の写真では物足りない。あの時、粘膜の写真を撮っていなかった自分が呪わしい。
それでも、山神の裸の写真を見ては自身のペニスに芯を持たせて射精することができた。いや、写真というよりかはもう記憶の中の山神の粘膜に興奮しているのだが……。
家で寝込んでいるだけでは事足りず、学校でも時折スマホを見てはオナニーしていた。思い出すのは山神の粘膜。
『森川と番長がデキているらしい』
そんな噂が流れ始めた。おそらく時折、私がスマホを見て微笑んでいることからそんな噂が流れたのだろう。
その噂を聞きつけた寺山にあっけなくスマホのデータは消され、痛めつけられたのだが……。
『今度は目玉をくりぬく』
寺山は私のメガネを粉々に破壊するとそう言った。あの表情からは次は本当に目玉をくりぬかれてしまいそうだ。
1人でやって来た寺山に頷いて返事をすると去って行った。
大丈夫。そっと瞼を閉じる。私には記憶の中の山神の粘膜があるのだから。
ある日、ゴミの掃きだめのような教室に向かう時、どこかから声が聞こえた。
「……じ、昨日のAV良かったよな!」
嬉しそうに声を弾ませて隣にいるであろう誰かにそいつは話しかけている。どうも私には気づいていないようだ。
「オナニーのおかずはぜってー巨乳!雄二は?前に買ったエロ本結局見せてもらってない!」
その声に聞き覚えがあり、雄二という名前を呼んでいることからそいつが山神慎太と分かった。雄二は寺山雄二でいつも山神の傍にいる生徒だ。2人は上へと続く階段の途中で立ち止まって喋っている。寺山に話している内容からして自分の性欲について話しているようだ。くだらない。
私はこの山神をよく思っていなかった。入学して早々に戸塚と喧嘩して、番長になった山神。いつも喧嘩ばかりして禄でもない人間。
「でも、オレは黒髪の清楚系がいいんだよな!雄二みたいなサラッとした黒髪が……」
そして、今もっと嫌いになった。
「……お前はオナニーのし過ぎだ」
寺山の表情はこちらから見えないが、呆れた声で山神に行っている。こちらから見える山神は寺山にとびっきりの笑顔を見せていて、その何かに夢中になっている山神にムカついた。喧嘩だけでなく、オナニーに夢中なことも、ペニスが勃つことも。何をしても私の下半身は反応することがなかった。私だけが灰色の世界でつまらない人生を歩んでいると言うのに、どうしてあいつはああなのだろうか?
この日以降、山神を見かければ以前にも増して嫌味を言うようになった。
一度、山神が1人の時にわざと怒らせるようなことを言った。「母親もお前のような息子を持って大変だ」とか「寺山も評判の悪いお前といていい迷惑だ」と言ってやった。怒らせて私を殴らせたら停学処分にできると思ったからだ。でも、すぐに駆け付けた寺山に妨害された。この2人の誰も割り込ませないような関係性にも腹が立った。
ある日、憎たらしい山神の変な噂を聞いた。
「欲求不満で変態プレイが好きらしい」
「色気がヤバいらしい」
「1人じゃ物足りなくて何人も関係があるらしい
「イカせたら幸運が舞い降りるらしい」
「弱くなったらしい」
他にもボクシング部の中村や体育教師の岡田とデキているなんて噂も聞こえてきた。どれも下品な噂で普通なら信じがたい内容だった。以前、階段で夢中になって寺山にオナニーの話をしていた時の山神を思い出す。あれだけ恥ずかしげもなくオナニーオナニーと言っていたのだ。欲求不満と言うのは本当かもしれない。
化学室へ向かう直前、校舎裏で喧嘩する声が聞こえた。また山神だった。でも、山神は珍しく逃げている。そして、あいつは馬鹿なことに化学室へと逃げ込んだ。もし本当にあの噂が本当なら?いや、噂が本当じゃなくてもこいつの恥ずかしい写真を撮ってばら撒けば窮地に追いやれるかもしれない。
自分より年齢の低い相手に何を愚かなことを、と思う。生きる虚しさを感じていた私はもうどうでも良かった。栄養ドリンク、興奮剤、媚薬……色々と試してみても私が興奮することはなかった。これほどまでに人生はつまらないものなのかと神を呪ったものだ。だから、山神を社会的に懲らしめたら自分の人生も楽しくなるかもしれないと思ったのだ。
普段の山神なら興奮する薬だと言えば食いつくだろう。だが、先ほどの逃げている様子と噂の内容からこいつは今、逆に興奮したくない状態なのだと分かった。真逆のことを言うとあっけなく山神はその薬を飲んだ。本当にこいつは馬鹿だな。
勃起している山神を裸に剥いても興奮しない。噂にあるような色気も感じない。落胆した。万が一の可能性にでも興奮するのではないかと思ったのだ。高い媚薬をただ山神にくれてやっただけで終わった。くそっ。
でも、山神の口を無理やり開けさせて誰かの体内を見た時、初めて綺麗だと思った。初めて誰かの粘膜をじっくりと見た。そしてもっと見たいと。口の中を直接触るのではなく、見ることで興奮するのだと分かった。歓喜した。今までどんなに頑張っても勃起しなかった自身のペニスに少しの硬さをもたらした。あぁ、神よ、ありがとう。
内臓はもっときれいなのかもしれない。でも、内臓を見ることはできない。あぁ、どうすれば……。あぁ、そうだケツ……いや、尻の穴を見たい。私としたことが下品な言い回しをしてしまった。
ケツ……尻の穴を見ながら素股をしたら完全なる硬さを維持して私のペニスは勃起し、射精した。こんなこと人生で初めてだ。目の前が明るくなった気がした。
残念なことに山神に返り討ちに会い、挿入することは叶わなかったが……。
屋上でこっぴどく寺山にやられてからは数日間、家で寝込んだ。夢に出てくるのは山神の粘膜だ。口の中、ケツ……いや、尻。いや、もう勃起するならケツでも尻でも何でもいい。口の中、ケツの穴。あぁ、今度は尿道が見たい……。
スマホを取り出して写真を見る。
あの日、実は山神の写真を撮っていた。無音シャッターで撮った写真は隠しフォルダに保存されるようになっているから山神は気付かなかったらしい。でも、裸の写真では物足りない。あの時、粘膜の写真を撮っていなかった自分が呪わしい。
それでも、山神の裸の写真を見ては自身のペニスに芯を持たせて射精することができた。いや、写真というよりかはもう記憶の中の山神の粘膜に興奮しているのだが……。
家で寝込んでいるだけでは事足りず、学校でも時折スマホを見てはオナニーしていた。思い出すのは山神の粘膜。
『森川と番長がデキているらしい』
そんな噂が流れ始めた。おそらく時折、私がスマホを見て微笑んでいることからそんな噂が流れたのだろう。
その噂を聞きつけた寺山にあっけなくスマホのデータは消され、痛めつけられたのだが……。
『今度は目玉をくりぬく』
寺山は私のメガネを粉々に破壊するとそう言った。あの表情からは次は本当に目玉をくりぬかれてしまいそうだ。
1人でやって来た寺山に頷いて返事をすると去って行った。
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