【本編完結】イクと激弱になる喧嘩番長は皆に狙われる

最終章 俺の好きな幼馴染（雄二視点）

いつもの道

　母親たちを田舎に残して、2日かけてようやく戻って来た。母親たちは手伝いが終わった後、ちょっとのんびりしたいと言うので当分は帰るつもりはないらしい。自由な親だと思ったが、ちょうど良かった。
　家に戻って慎太に会いに行く前に、あの神とかっていう爺がいる場所へと向かうことにした。

　コンビニでおにぎりをいくつか買い、ポイポイとその場所に置いてやる。
　その時、神々しい光が放たれた。

「おぬし！コンビニ飯とは何事じゃ！こういう時は手作りが基本じゃろ！」

　爺はコンビニのおにぎりでは満足できないらしい。
　朝の早い時間でまだ誰もいないとは言え、こいつはこんな普通に出てきていいのか？

「知るか。文句を言うな」
「……満腹亭のおにぎりが食べたい」
「我慢しろ」
「嫌じゃ！満腹亭のおにぎりが良いんじゃ！じゃないと、あいつのイクと激弱になる呪いを解く別の方法を教えてやらんぞ！むしろあいつの呪いをもっと強化してやる～！！」
「慎太に何かしたらただじゃおかねぇ」
「なら満腹亭のおにぎりじゃ！今から行けば並ばずに買えるはずじゃ！」

　チッと舌打ちして満腹亭へと俺は向かった。満腹亭って高級おにぎり売ってるところじゃねぇか……。
　具が高級鮭やら高級梅干し、のりもパリパリふかふかで美味しくて行列がいつも並んでる……。
　この時、戸塚と落ちぶれたヤンキーが盗み聞きしているなんて思いもしなかった。

「あれ？雄二くん？あ、やっぱり雄二くんだったのね。さっき？学校に向かってたように思ったけど、違ったのかしら？」

　満腹亭は俺と慎太の家の近所にあり、学校から家の方へと戻っていた。
　
「こんな朝早い時間にどうしたの？」
「あ、俺はちょっと……」
「慎太に雄二くんを見たかもしれないって言ったら慌てて家を出て行って……。でも、この感じじゃ会えてないわよね……？あの子、財布を玄関先に置いて行っててどうしようかと……」

　慎太のお母さんの手の先には慎太の財布がある。

「俺が持っていきます。あ、慎太、週末、俺の家で過ごしてもいいですか？」
「もちろんよ。良かったわ。あの子、雄二君に会えなくて元気がなかったから……。よろしくね」

　慎太の財布を受け取り、その近くの満腹亭へと向かう。高級おにぎりを財布にあるお金で買える分だけ買って急いで戻る。先ほどと同様にポイポイとお供えする。

「やっほーい！ワシの大好きなおにぎりじゃ！しかも、いくつもあるぞ！」
　
　神がそのおにぎりに手を伸ばす前にさっとその神を手で捕らえた。

「し、しまった！また油断しておった。……あいつには捕まらなかったのに……」

　神が悔しそうに何かボヤいている。

「それで、どうしたらいいんだ？」
「おぬしの純愛に免じてあいつと正式な交際ができるようになれば呪いを解いてやろう。ただし！無理やりやその場しのぎもダメじゃぞ。おぬしから気持ちを伝えるのもダメじゃ。まぁ、言おうとしても言えないようにしてあるがな」
「……分かった。あと俺には色気が効かないようにしろ」
「なんで……わ、分かったから！解いてやるから！」

　掴んでいる手の力を強くすると、神は了承した。俺に色気が効かなくなったのかは分からないが、とりあえず神を離してやる。

「ありがとうな。またおにぎり持ってきてやる」
「うむ！おにぎりをよろしく頼んだぞ！」

　神が満足そうに返事した。満腹亭のおにぎりをやったのだからと、コンビニのおにぎりを回収しようとしたら神が咄嗟にそのおにぎりも奪って消えた。なんという食い意地の張った神様だ。

　俺は急いで学校にいる慎太の元へと向かった。