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第三章 愛の逃避行

手に入れた石

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「そうそう、それでじゃ、おぬしたちはきっとこの石も必要なのじゃ。欲しいか?欲しいじゃろう?」

 なんか腹立つな……。なんなんだこいつは。ちょっとラウリアを思い出したぞ。

「欲しいならくれてやっても良いぞ?」
「……欲しいです」
「ふぉっふぉっふぉ、くれてやろう。ただしおぬしの髪をひと房くれぬか?」
「「…………」」
「断じて変なことには使わぬと誓おう。精霊の加護があった者の髪が必要なのだ」
「分かりました。私の髪で良ければあげましょう」
「おい、トルデンッ!」
「トモヤ、別にいいんです。あ、でも私には……」
「ふぉふぉふぉ、言わんでも分かっておる。大丈夫じゃ。ふむ、それによく見たら微かに残っておるぞ」

 2人の会話が何か分からないがトルデンはスっと剣で髪を切ると、アルトロに渡した。占いに必要だと言い訳しながら、トルデンの髪をもらうと臭いを嗅いだりしていて2人でドンびきになった。

「ゴホンゴホン、ほれ、これをやろう」
 
 トルデンがその石を受け取るのを見た後、すぐにオレはここから出ようと言ってトルデンとオクアル国を後にした。別にいいと言っているのにアルトロは見送りについて来てぺちゃくちゃと喋っている。「泊まって行かれればワシが占いをしてみせますのに」とか「触ると運気が上がる壺がある」とかずっと喋ってて胡散臭さを最後の最後まで醸し出していた。ようやく門のところまでたどり着いて別れの挨拶をした時もずっと喋ってたけど、国の外へは一歩も出なかった。最後の別れの言葉は「ワシが外に出ると碌なことがないのでな」で、オレたちに対する言葉は特になかった。

「なんだか疲れましたね」
「あぁ、疲れた……」

 精神的疲労が凄くて2人でどっと疲れていたら何故か笑いが込み上げてきた。疲れた理由が胡散臭いおっさんに絡まれてたって言うのが面白くて2人で笑い合った。

「結局あれはなんだったんだ?」

 もうすっかり夜も更けていて、輝く満月が道を照らしていた。オレの問いかけにトルデンがポケットを探り、取り出すとその石は光り輝き始めた。それは月の光を集めるかのように白く輝き神秘的な空間を作り出した。それは綺麗で目を奪われる光景だった。

「……祈りの魔法石です。月の明かりを集めることが出来るみたいです」

 その時、ぴらっとトルデンのポケットから紙が一枚滑り落ちた。オレがそれを拾うと月明りに照らされ、紙に書かれた文字をはっきりと読むことが出来た。


『大評判占星術師アルトロ様直筆サイン』


「「…………」」

 このまま捨ててしまおうか……。オレが破ろうとしたら、トルデンが引き留めた。あんな奴の為に優しいな、なんて思っていたら「森にゴミを捨ててはいけません」と言った。たまに冷徹なことを言うんだよな、トルデンって。2人で笑い、綺麗に輝く祈りの魔法石を眺めながら眠りについた。
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