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第三章 愛の逃避行
出くわしたくない相手
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緩やかな道だったので大した怪我がなくて済んだのは幸いだった。きょろきょろと見渡すもトルデンは見えない。
「これはこれは。嬉しいことにこんなところでお会いできるなんて」
よろよろと立ち上がり、手枷が再び音を立てた時だった。人と会いませんように、と心の中で願っていたにも関わらず、声をかけられた。それも会いたくなかった相手にだ。
「お前、どうして……」
目の前にいたのはオークスだった。逃げようと後ずさるもいとも簡単にオークスはオレを捕らえた。
「クソッ、離せっ」
「手間が省けた」
オークスに抵抗しようと暴れるも無駄に終わり、オークスは剣を取り出した。いつかのように自身の手を斬りつけてオレに貰わせて大人しくさせる気だ。その時、またオークスの背後からザリッと落ち葉を踏む音が聞こえた。2人でそちらを見て驚いた。トルデンが追いついたのかと思えば、そこにいたのはエンフィルだった。
「エンフィル……」
「おやおや、これまた面白いところに……。国王陛下の命ですか?外交官に使い走りと大変なことで」
エンフィルはオレを見た後、オークスを睨んだ。その初めて見るエンフィルの感情的な表情に少し驚いた。あまり喋らず、何を考えているか分からないエンフィルが、オークスに対してそんな表情をするのが意外だったのだ。
「もしや国王陛下の命に逆らうつもりで?今、ここでこの子供を逃がしたところで、あなたの罪がなくなるわけじゃないですが……」
「……罪?」
「おや、ご存じないので?エンフィル様はトルデン様に毒を持った張本人ですよ」
「え……?」
その驚愕の事実に驚いている時、エンフィルの背後から「トモヤッ」とオレの名を呼ぶ声がした。トルデンがようやく追いついたのだ。小枝や落ち葉が服についている所を見ると慌てて追いかけてきてくれたようだ。
「……エンフィル」
トルデンが驚いた表情で名を呟いた。そして、オークスとオレをその先に見るとキッと睨んだ。エンフィルはトルデンがいるのに後ろを振り向かない。先ほどのトルデンに毒を持ったと言うのがどうしても気になる。何故エンフィルがトルデンに毒を盛るのだろう?仲が良さそうには見えなかった。でも、だからといって毒を盛るほど憎んでいるようにも見えなかった。どちらかというと2人も言葉足らずで色々な隔たりがあり、仲良くなれるはずなのに仲良くなれないみたいに勝手に思っていた。
「あぁ、トルデン様、噂に聞いていましたが、国を一晩で一掃するなんて見事な物です」
先ほどのエンフィルとトルデンの関係とは一転して、またオークスが変なことを口走る。国を一晩で一掃?どういうことだ?
「どうですか?血で汚れた手の感触は?きっとお父上もお喜びになるでしょう。大丈夫です。すぐに慣れます」
トルデンはその事実を思い出したのか、悲しそうな表情をした。シーンと辺りが静まり返る。オークスはオレの襟首をしっかりと掴んでいて、逃げ出すこともできない。少しでも離れればトルデンとエンフィルが何とかしてくれるという思いはあった。
「これはこれは。嬉しいことにこんなところでお会いできるなんて」
よろよろと立ち上がり、手枷が再び音を立てた時だった。人と会いませんように、と心の中で願っていたにも関わらず、声をかけられた。それも会いたくなかった相手にだ。
「お前、どうして……」
目の前にいたのはオークスだった。逃げようと後ずさるもいとも簡単にオークスはオレを捕らえた。
「クソッ、離せっ」
「手間が省けた」
オークスに抵抗しようと暴れるも無駄に終わり、オークスは剣を取り出した。いつかのように自身の手を斬りつけてオレに貰わせて大人しくさせる気だ。その時、またオークスの背後からザリッと落ち葉を踏む音が聞こえた。2人でそちらを見て驚いた。トルデンが追いついたのかと思えば、そこにいたのはエンフィルだった。
「エンフィル……」
「おやおや、これまた面白いところに……。国王陛下の命ですか?外交官に使い走りと大変なことで」
エンフィルはオレを見た後、オークスを睨んだ。その初めて見るエンフィルの感情的な表情に少し驚いた。あまり喋らず、何を考えているか分からないエンフィルが、オークスに対してそんな表情をするのが意外だったのだ。
「もしや国王陛下の命に逆らうつもりで?今、ここでこの子供を逃がしたところで、あなたの罪がなくなるわけじゃないですが……」
「……罪?」
「おや、ご存じないので?エンフィル様はトルデン様に毒を持った張本人ですよ」
「え……?」
その驚愕の事実に驚いている時、エンフィルの背後から「トモヤッ」とオレの名を呼ぶ声がした。トルデンがようやく追いついたのだ。小枝や落ち葉が服についている所を見ると慌てて追いかけてきてくれたようだ。
「……エンフィル」
トルデンが驚いた表情で名を呟いた。そして、オークスとオレをその先に見るとキッと睨んだ。エンフィルはトルデンがいるのに後ろを振り向かない。先ほどのトルデンに毒を持ったと言うのがどうしても気になる。何故エンフィルがトルデンに毒を盛るのだろう?仲が良さそうには見えなかった。でも、だからといって毒を盛るほど憎んでいるようにも見えなかった。どちらかというと2人も言葉足らずで色々な隔たりがあり、仲良くなれるはずなのに仲良くなれないみたいに勝手に思っていた。
「あぁ、トルデン様、噂に聞いていましたが、国を一晩で一掃するなんて見事な物です」
先ほどのエンフィルとトルデンの関係とは一転して、またオークスが変なことを口走る。国を一晩で一掃?どういうことだ?
「どうですか?血で汚れた手の感触は?きっとお父上もお喜びになるでしょう。大丈夫です。すぐに慣れます」
トルデンはその事実を思い出したのか、悲しそうな表情をした。シーンと辺りが静まり返る。オークスはオレの襟首をしっかりと掴んでいて、逃げ出すこともできない。少しでも離れればトルデンとエンフィルが何とかしてくれるという思いはあった。
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