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第二章 拉致
精霊王 トルデンside
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ルウファの東側の森から昼夜に関係なくマルア国の方へと向かった。1つの希望であったトモヤに渡した金色の宝石・トロンシロン。万が一のことがあれば彼に使うように言っていたのに、彼はいつまで経っても目の前に現れない。使えないとなると恐らく拘束されているのだろう。
向かう途中でマルア国の情報が耳に入ってくる。マルア国はトモヤの能力のおかげで勢力を増しているらしい。ラウリアが言っていたようにマルア国はユグラシア国を侵略し支配下におくのは時間の問題だった。そして、その次に、北側にある小さな3ヶ国を狙っているという噂がある。その3ヶ国は私の母の母国・ルゥ国、アオフモア国、ルクア国だ。その3ヶ国は精霊の加護がついていると言われていて、マルア国はその土地を狙っているようだ。その中でもマルア国に一番近い国はアオフモア国だ。
(そちら側に向かうべきだろうか?)
マルア国の近くにきたものの中に入るのは容易ではなかった。こうしている間にもトモヤの身に危険が迫っている。殺されることはないだろうが、能力を使用させられているということはトモヤには苦痛が生じているのだ。
怒りで拳がわなないた。でも、一体どうやってトモヤの元へ向かえばいいのか……。ラウリアの情報によればマルア国の城の地下にトモヤは囚われているという。入る手立てがなく困り果てていた。強行突破してもいいが、城内ではマヌケスの魔術が施されていて攻撃魔術は使えないが、逆に言うと城外では魔術が使えると言うことだ。ただ精神が不安定な今、近隣の国に影響を与えてしまうかもしれない……。
今は、マルア国の北南に位置する小さな国・クミアゴのセラースプの森だ。ここは国々に囲まれていて陸ばかりのはずなのに国の中に海があるという不思議な国だ。アドニク国は北へ行くとルゥ国に、南東へ行くとこのクミアゴ国に繋がっている。そしてこのクミアゴ国の北側からマルア国へ行けるが、傭兵だけでなく魔術で施された罠があり、近づくことはできなかった。一度、森の中に入り、考える。森に囲まれた中心に海がある。ここは魚や獣が多くいるはずなのに、戦争のせいで怯え、皆隠れてしまっている。
正面からこの身1つで突入しようと決心した時だった。目の前が光り輝き、1人の女の子が現れた。トモヤに渡したはずの金色の宝石・トロンシロンが発動したのだ。一体どうして?トモヤはどこに?そのことについて聞くよりも先に目の前の女の子がが叫んだ。
「トモヤを!トモヤを助けて!」
女の子は泣きそうになりながらも必死にこらえ気丈に振舞った。女の子は救いを求めるように私の服の裾を掴む。
「落ち着いて、トモヤは今どこに?」
「どうかっ、どうか彼を助けてっ!私のせいで……」
「私が必ず助ける。だから、どうか落ち着いて」
目の前に現れた女の子はアオフモア国のスキルと名乗った。スキルの話を聞き、トモヤは危な状況だと分かった。気性が荒いマルア国の王・マヌケス。スキルを逃がしたと知ったらトモヤを殺すことはないだろうが、死ぬ寸前までいたぶるかもしれない。スキルが一筋の涙を流した。
「トモヤが私を助けてくれたから、きっと彼はひどいめに……」
怒りと焦りを落ち着かせるために唇を噛みしめた。もしトモヤの身に何かあれば……。やはり強硬手段となるが正面突破でマルア国へ行こうとしたその時だった。
「待って。私が……私がその人をトモヤという人の所へ連れて行くわ」
突如現れたのは金色の髪を結い上げ、透き通るような肌をした女の子だった。
「……アビー?どうしてここに?」
スキルがその現れた女の子の名を小さく呼んだ。アビーと言われた女の子は、スキルに頷き、安心させるかのように微笑んだ後、こちらを向いた。一刻も争うと判断したらしい。
「あなたがトルデン王子ね……私はアオフモア国の王女・アビー」
アビーが名乗ると、不思議な感覚が自分の身体に巻き起こった。ゆらっと小さな輝きが身体の周りをくるくると回った。金色に輝く小さな精霊だ。ふと小さな頃の記憶が蘇る。それは本当に小さな頃の記憶で自分が赤子の時のものだ。精霊の名はトッチと言い、母上が子守唄を歌っていると金色に輝く精霊が母の周りを飛び回っていたことを思い出す。
「あなたのお母様には精霊の加護がついていました。あなたにも。あなたのお母様の精霊は慣れない国へ嫁ぎ、環境も変わったせいで精霊は隠れてしまったけど、2人から離れたくなくてこっそりずっと傍にいたんだと思います。でも、無理したせいで弱っているみたい」
その時、ぽわっとした光輝く精霊が1人、アビーの傍から現れた。はっきりと見えるほどのしっかりとしたオーラを纏うその精霊は精霊王のファルだとアビーが教えてくれた。精霊王が懐かしみながら、トルデンの傍にいる精霊・トッチへと近づいた。精霊王が弱った精霊におでこを当てると少し元気が出たのか先ほどより強く輝いた。精霊王はアビーに何か言っている。
「精霊王があなたを連れて行きます。あなたの結界で精霊王を守ってくれたらそのトモヤという人の元へ精霊王が連れて行ってくれるはず」
精霊王を含む精霊たちはマルア国の禍々しい空気に人々の悲鳴、血と涙が流れている国に行きたがらず、無理に行くと精霊王もその周りの精霊たちも死に至る。でも、結界で精霊王を護り、すぐに戻るなら大丈夫だと精霊王は言ったらしい。
「……ありがとう」
アビーと精霊王・ファルに御礼を言うと、精霊王は頷いて光り輝く力でトモヤのいる場所へと連れて行った。
向かう途中でマルア国の情報が耳に入ってくる。マルア国はトモヤの能力のおかげで勢力を増しているらしい。ラウリアが言っていたようにマルア国はユグラシア国を侵略し支配下におくのは時間の問題だった。そして、その次に、北側にある小さな3ヶ国を狙っているという噂がある。その3ヶ国は私の母の母国・ルゥ国、アオフモア国、ルクア国だ。その3ヶ国は精霊の加護がついていると言われていて、マルア国はその土地を狙っているようだ。その中でもマルア国に一番近い国はアオフモア国だ。
(そちら側に向かうべきだろうか?)
マルア国の近くにきたものの中に入るのは容易ではなかった。こうしている間にもトモヤの身に危険が迫っている。殺されることはないだろうが、能力を使用させられているということはトモヤには苦痛が生じているのだ。
怒りで拳がわなないた。でも、一体どうやってトモヤの元へ向かえばいいのか……。ラウリアの情報によればマルア国の城の地下にトモヤは囚われているという。入る手立てがなく困り果てていた。強行突破してもいいが、城内ではマヌケスの魔術が施されていて攻撃魔術は使えないが、逆に言うと城外では魔術が使えると言うことだ。ただ精神が不安定な今、近隣の国に影響を与えてしまうかもしれない……。
今は、マルア国の北南に位置する小さな国・クミアゴのセラースプの森だ。ここは国々に囲まれていて陸ばかりのはずなのに国の中に海があるという不思議な国だ。アドニク国は北へ行くとルゥ国に、南東へ行くとこのクミアゴ国に繋がっている。そしてこのクミアゴ国の北側からマルア国へ行けるが、傭兵だけでなく魔術で施された罠があり、近づくことはできなかった。一度、森の中に入り、考える。森に囲まれた中心に海がある。ここは魚や獣が多くいるはずなのに、戦争のせいで怯え、皆隠れてしまっている。
正面からこの身1つで突入しようと決心した時だった。目の前が光り輝き、1人の女の子が現れた。トモヤに渡したはずの金色の宝石・トロンシロンが発動したのだ。一体どうして?トモヤはどこに?そのことについて聞くよりも先に目の前の女の子がが叫んだ。
「トモヤを!トモヤを助けて!」
女の子は泣きそうになりながらも必死にこらえ気丈に振舞った。女の子は救いを求めるように私の服の裾を掴む。
「落ち着いて、トモヤは今どこに?」
「どうかっ、どうか彼を助けてっ!私のせいで……」
「私が必ず助ける。だから、どうか落ち着いて」
目の前に現れた女の子はアオフモア国のスキルと名乗った。スキルの話を聞き、トモヤは危な状況だと分かった。気性が荒いマルア国の王・マヌケス。スキルを逃がしたと知ったらトモヤを殺すことはないだろうが、死ぬ寸前までいたぶるかもしれない。スキルが一筋の涙を流した。
「トモヤが私を助けてくれたから、きっと彼はひどいめに……」
怒りと焦りを落ち着かせるために唇を噛みしめた。もしトモヤの身に何かあれば……。やはり強硬手段となるが正面突破でマルア国へ行こうとしたその時だった。
「待って。私が……私がその人をトモヤという人の所へ連れて行くわ」
突如現れたのは金色の髪を結い上げ、透き通るような肌をした女の子だった。
「……アビー?どうしてここに?」
スキルがその現れた女の子の名を小さく呼んだ。アビーと言われた女の子は、スキルに頷き、安心させるかのように微笑んだ後、こちらを向いた。一刻も争うと判断したらしい。
「あなたがトルデン王子ね……私はアオフモア国の王女・アビー」
アビーが名乗ると、不思議な感覚が自分の身体に巻き起こった。ゆらっと小さな輝きが身体の周りをくるくると回った。金色に輝く小さな精霊だ。ふと小さな頃の記憶が蘇る。それは本当に小さな頃の記憶で自分が赤子の時のものだ。精霊の名はトッチと言い、母上が子守唄を歌っていると金色に輝く精霊が母の周りを飛び回っていたことを思い出す。
「あなたのお母様には精霊の加護がついていました。あなたにも。あなたのお母様の精霊は慣れない国へ嫁ぎ、環境も変わったせいで精霊は隠れてしまったけど、2人から離れたくなくてこっそりずっと傍にいたんだと思います。でも、無理したせいで弱っているみたい」
その時、ぽわっとした光輝く精霊が1人、アビーの傍から現れた。はっきりと見えるほどのしっかりとしたオーラを纏うその精霊は精霊王のファルだとアビーが教えてくれた。精霊王が懐かしみながら、トルデンの傍にいる精霊・トッチへと近づいた。精霊王が弱った精霊におでこを当てると少し元気が出たのか先ほどより強く輝いた。精霊王はアビーに何か言っている。
「精霊王があなたを連れて行きます。あなたの結界で精霊王を守ってくれたらそのトモヤという人の元へ精霊王が連れて行ってくれるはず」
精霊王を含む精霊たちはマルア国の禍々しい空気に人々の悲鳴、血と涙が流れている国に行きたがらず、無理に行くと精霊王もその周りの精霊たちも死に至る。でも、結界で精霊王を護り、すぐに戻るなら大丈夫だと精霊王は言ったらしい。
「……ありがとう」
アビーと精霊王・ファルに御礼を言うと、精霊王は頷いて光り輝く力でトモヤのいる場所へと連れて行った。
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西条ネア
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