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第一章 手に入れた能力
落ち込む トルデンside
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トモヤは全快したようだった。でも、本格的に訓練を始める前にちょっとくらい、トモヤと一緒に観光してもいいですよね?本当ならすぐにでも雷の魔術の訓練をすべきかもしれない。でも、まだルウファでの作業をしていなかったので、そちらを優先する方がいいと自分に言い聞かせて、トモヤを連れてルウファへと向かった。
トモヤにルウファ名産を食べさせてあげたいな。トモヤは何でも好き嫌いせず勢いよく食べる。いつもそれを見る度に食べ物は逃げないのにどうしてそんなに急いで食べるんだろうと不思議に思いながらも微笑ましかった。案の定、トモヤはピニャンを小さい口に頬張り、パリンチョスをパリパリ言わせながら食べている。
トモヤはルウファの広場で男同士の恋人を見て驚いていた。どうもトモヤの世界では普通ではなかったのだろうか?トモヤはよく分からないと言ったけど、もしトモヤが女性としか付き合わないと言うのなら、それはそれでちょっと嫌だなって思ってしまった。でも、それがどうしてか分からない。自分もそう言うのにはめっきり疎いのだ。
ユーシア、ホルアン、ジアルに合流し、少しの時間を過ごした。ユーシアに今回の神託について尋ねるもやはり詳しくは知らないようだった。トモヤを私の管理下に置いたけど、どうしても不安を拭うことができなかった。帰りの馬車の中でトモヤに、ムヒアス神官が見つかったら元の世界に戻った方がいい、そう言った。その方がいいと分かっているのに、その言葉を伝える自分がひどく嫌だった。何も答えないトモヤと一緒に外の景色を眺めた。
本格的に訓練が始まった。トモヤには私が訓練に行くことを知って欲しくなくて朝早くから支度した。トモヤに母から貰い受けた金色の小さな宝石・トロンシロンを渡した。母が昔、私に託してくれたものだった。母の故郷・ルゥ国には精霊の加護があると言われていて、手に持って助けを求めた時、トロンシロンを渡した人間の元へ帰ることができる、と言われている。トモヤにそのことを伝えると半信半疑な表情をしたものの、確かめるように私の顔をじっくり見るので恥ずかしくなった。
ーーバリバリッ
周りで見学していた騎士たちがどよめき、届かない範囲にいると分かっていても騎士たちは数歩下がっていた。雷の魔術を施した際に、勢い余って地面を削ってしまったのだ。
「素晴らしいですね……。もう少し具体的にイメージして行われるといいかもしれません」
珍しくオークスが褒めたたえた後、アドバイスを言ってくる。確かにオークスは騎士団長に上り詰めるくらいなので、それなりの知識などがあるのだろう。トモヤといる時間がとても楽しくて愛おしくて、訓練せずにずっと傍にいたいなんて思ってた。でも、トモヤを守るためなら訓練も苦ではないなと思った。
ーーバリンッ
「トルデン様、できれば私に攻撃して欲しいのですが?」
やはり人に使うのは苦手でオークスが仕掛ける攻撃を雷で打ち消していたら、オークスはめざとく注意する。
「トルデン様が魔術を使うようになったのはいい兆しです。ですが、このままではいけませんね。なので今日は違う訓練をしましょう」
訓練が始まって数日が経った頃だった。オークスが嫌な笑みを浮かべてそう言った。その日は新人の騎士たちを交えてチームを組んでの訓練だった。逃げ回りながら新人の騎士に攻撃を任せ、こちらへ向かう攻撃を打ち消していた時だった。何試合かはそれでうまくいっていた。
「トルデン様、こちらの騎士見習いも交えてあげてください。あぁ、この子、今、トルデン様の保護下にいる召喚者様に似ていらっしゃいますよね」
その一言が私をイラつかせた。他の騎士に比べて身長は低いものの、その子はトモヤには似ても似つかなかった。
「騎士見習いの子を訓練に交えるんですか?危険です」
「いえ、僕頑張ります!」
オークスが相手チームの騎士の1人に何か伝えている。試合が始まるや否や、先ほどオークスに言われていた騎士は執拗に騎士見習いの子ばかり狙った。いくら攻撃を打ち消しても、何度もその子が狙われた。最後、その子に向かって炎の雫を放とうとした。炎のしずくは放たれると回避ができず、自信に引火すれば死に至る可能性もある。
(ダメだっ……!)
心の中で叫ぶ声よりも先に、無意識に魔術を施し、雷の竜巻を起こしていた。晴天だったはずの空はどんよりした雲が渦巻き、集まった雲と雷は次第に大きくなり、その騎士を襲おうとした。
(コントロールできないっ!このままでは……)
精神を落ち着かせようとしても興奮と焦りが入り混じり、無理だった。相手の騎士を傷つけたくなくて、どうすればいいか考える。まともに食らえばあの騎士は死に、恐らく周りも怪我をする。その時、トモヤのことを思い出して、騎士に直撃する寸前に消すことが出来た。消す時の衝撃でその騎士は結局怪我をしてしまった。かすり傷程度だと分かっていても、酷く落ち込んだ。怪我をさせただけでなく、雷の魔術を使うと興奮してしまう自分にも嫌気がさす。そんな自分をトモヤに見せたくなくて、この日から母の部屋で過ごすことにした。
トモヤにルウファ名産を食べさせてあげたいな。トモヤは何でも好き嫌いせず勢いよく食べる。いつもそれを見る度に食べ物は逃げないのにどうしてそんなに急いで食べるんだろうと不思議に思いながらも微笑ましかった。案の定、トモヤはピニャンを小さい口に頬張り、パリンチョスをパリパリ言わせながら食べている。
トモヤはルウファの広場で男同士の恋人を見て驚いていた。どうもトモヤの世界では普通ではなかったのだろうか?トモヤはよく分からないと言ったけど、もしトモヤが女性としか付き合わないと言うのなら、それはそれでちょっと嫌だなって思ってしまった。でも、それがどうしてか分からない。自分もそう言うのにはめっきり疎いのだ。
ユーシア、ホルアン、ジアルに合流し、少しの時間を過ごした。ユーシアに今回の神託について尋ねるもやはり詳しくは知らないようだった。トモヤを私の管理下に置いたけど、どうしても不安を拭うことができなかった。帰りの馬車の中でトモヤに、ムヒアス神官が見つかったら元の世界に戻った方がいい、そう言った。その方がいいと分かっているのに、その言葉を伝える自分がひどく嫌だった。何も答えないトモヤと一緒に外の景色を眺めた。
本格的に訓練が始まった。トモヤには私が訓練に行くことを知って欲しくなくて朝早くから支度した。トモヤに母から貰い受けた金色の小さな宝石・トロンシロンを渡した。母が昔、私に託してくれたものだった。母の故郷・ルゥ国には精霊の加護があると言われていて、手に持って助けを求めた時、トロンシロンを渡した人間の元へ帰ることができる、と言われている。トモヤにそのことを伝えると半信半疑な表情をしたものの、確かめるように私の顔をじっくり見るので恥ずかしくなった。
ーーバリバリッ
周りで見学していた騎士たちがどよめき、届かない範囲にいると分かっていても騎士たちは数歩下がっていた。雷の魔術を施した際に、勢い余って地面を削ってしまったのだ。
「素晴らしいですね……。もう少し具体的にイメージして行われるといいかもしれません」
珍しくオークスが褒めたたえた後、アドバイスを言ってくる。確かにオークスは騎士団長に上り詰めるくらいなので、それなりの知識などがあるのだろう。トモヤといる時間がとても楽しくて愛おしくて、訓練せずにずっと傍にいたいなんて思ってた。でも、トモヤを守るためなら訓練も苦ではないなと思った。
ーーバリンッ
「トルデン様、できれば私に攻撃して欲しいのですが?」
やはり人に使うのは苦手でオークスが仕掛ける攻撃を雷で打ち消していたら、オークスはめざとく注意する。
「トルデン様が魔術を使うようになったのはいい兆しです。ですが、このままではいけませんね。なので今日は違う訓練をしましょう」
訓練が始まって数日が経った頃だった。オークスが嫌な笑みを浮かべてそう言った。その日は新人の騎士たちを交えてチームを組んでの訓練だった。逃げ回りながら新人の騎士に攻撃を任せ、こちらへ向かう攻撃を打ち消していた時だった。何試合かはそれでうまくいっていた。
「トルデン様、こちらの騎士見習いも交えてあげてください。あぁ、この子、今、トルデン様の保護下にいる召喚者様に似ていらっしゃいますよね」
その一言が私をイラつかせた。他の騎士に比べて身長は低いものの、その子はトモヤには似ても似つかなかった。
「騎士見習いの子を訓練に交えるんですか?危険です」
「いえ、僕頑張ります!」
オークスが相手チームの騎士の1人に何か伝えている。試合が始まるや否や、先ほどオークスに言われていた騎士は執拗に騎士見習いの子ばかり狙った。いくら攻撃を打ち消しても、何度もその子が狙われた。最後、その子に向かって炎の雫を放とうとした。炎のしずくは放たれると回避ができず、自信に引火すれば死に至る可能性もある。
(ダメだっ……!)
心の中で叫ぶ声よりも先に、無意識に魔術を施し、雷の竜巻を起こしていた。晴天だったはずの空はどんよりした雲が渦巻き、集まった雲と雷は次第に大きくなり、その騎士を襲おうとした。
(コントロールできないっ!このままでは……)
精神を落ち着かせようとしても興奮と焦りが入り混じり、無理だった。相手の騎士を傷つけたくなくて、どうすればいいか考える。まともに食らえばあの騎士は死に、恐らく周りも怪我をする。その時、トモヤのことを思い出して、騎士に直撃する寸前に消すことが出来た。消す時の衝撃でその騎士は結局怪我をしてしまった。かすり傷程度だと分かっていても、酷く落ち込んだ。怪我をさせただけでなく、雷の魔術を使うと興奮してしまう自分にも嫌気がさす。そんな自分をトモヤに見せたくなくて、この日から母の部屋で過ごすことにした。
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