32 / 80
第一章 手に入れた能力
交渉術 トルデンside
しおりを挟む
ベッドに眠るトモヤを静かに見守った。以前のようにトモヤは苦しみ続けるのだろうか?オークスが言っていたことを思い出す。トモヤが騎士の怪我を貰い受けたと。それが本当なら友也は毒だけでなく怪我も貰える……。
(オークスは何か企んでる……トモヤの能力を利用しようとしてる……)
これ以上彼を巻き込んではいけない。トモヤの汗で湿った服を着替えさせ、水分を飲ませると、部屋を出てある場所へと向かった。呼び出されてでしか行くことのない城の内部へ。私を呼ぶのは基本的に国王陛下である父上ぐらいしかいない。ルニス宰相や他の者は大概、向こうから用事があれば西の塔にやって来る。そんな私が父上が不在の今、城内のしかも3階へと向かっているのを見た騎士たちは驚いた表情をしている。
「ラウリア、いいですか?」
「トルデン?君がやって来るなんて、珍しいね。明日は雨が降るかもしれないね、ははは」
訪れたのはラウリアの部屋だった。いつものように呑気な声で出迎えた。部屋の中へと招かれ、すぐに来た理由を伝えた。
「ラウリア、頼みがあります。訓練をしっかりして魔術を使いこなせるようにするので、父上にトモヤの管理下を私に全て委ねるように交渉してください……」
ラウリアが驚いた表情でこちらを見た。確かに自分でもこんなことを頼むのは珍しいと分かっている。でも、こうやって手を打たないとトモヤに危険が及ぶかもしれない。
「このことルニスには言ったのかい?」
「いえ、ルニス宰相にはまだ……」
ルニス宰相は父上を優先する。恐らく私がこんなことを頼んでも聞いてはもらえない。その反面。国王陛下である父上はラウリアのことを可愛がっていた。膨大な魔力があり小さい頃から魔術を使いこなすラウリア。ラウリア本人も悪気はないものの魔力の膨大さと魔術の技術に自信を持っていて、いつでも自分が一番だと思っている。
父上も最初は、魔力があり、しかも珍しい雷属性の魔術を使うことが出来る私に大変期待していた。でも、人を傷つける恐れのあるこの雷の魔術を使いこなせず、父上の手に余らせた。もう1つの護る魔術はまだ使いこなせるものの、大した結界が張れないためあまり意味のないものとして扱われた。
だから、ルニス宰相に元から頼むよりもラウリアに頼んだ方が早いと思ったのだ。ラウリアもそのことを分かっているのかそれ以上何も言わなかった。
「分かったよ。その代わり、今度庭園であの花を見ながら、あの紅茶をいれて欲しいな」
ラウリアは興味のないことを覚えない。でも、ラウリアの言う花とお茶がどれを言っているのかはすぐに分かった。すぐにラウリアは父上に頼み、トモヤの管理下を私の元へと置くようにしてくれた。
「父上も驚いてたよ。でも、もしトルデンがあの魔術を使いこなせたら僕と一度戦ってよね」
「ふふっ、ラウリアには叶いませんよ」
私も魔力は多い方だが、ラウリアの方が圧倒的に多い。私が嫌そうな顔をせず、そう言ったことにもラウリアは驚いた表情をした。
訓練はトモヤの目が覚め、全快してから再開することとなった。甲斐甲斐しく世話をし、以前よりもずっと早くトモヤは目覚めた。トモヤの話を聞くと、トモヤは念じずに誰かに触れるだけで相手の毒や怪我を貰えるのだと分かった。トモヤに誰にも触れないようにと言うと悲しそうな表情をされ、そんな顔をさせた自分を呪いたくなった。トモヤが強引に私の手を握ったので、それから触れないように逃げ回ることはやめたのだけど。
(オークスは何か企んでる……トモヤの能力を利用しようとしてる……)
これ以上彼を巻き込んではいけない。トモヤの汗で湿った服を着替えさせ、水分を飲ませると、部屋を出てある場所へと向かった。呼び出されてでしか行くことのない城の内部へ。私を呼ぶのは基本的に国王陛下である父上ぐらいしかいない。ルニス宰相や他の者は大概、向こうから用事があれば西の塔にやって来る。そんな私が父上が不在の今、城内のしかも3階へと向かっているのを見た騎士たちは驚いた表情をしている。
「ラウリア、いいですか?」
「トルデン?君がやって来るなんて、珍しいね。明日は雨が降るかもしれないね、ははは」
訪れたのはラウリアの部屋だった。いつものように呑気な声で出迎えた。部屋の中へと招かれ、すぐに来た理由を伝えた。
「ラウリア、頼みがあります。訓練をしっかりして魔術を使いこなせるようにするので、父上にトモヤの管理下を私に全て委ねるように交渉してください……」
ラウリアが驚いた表情でこちらを見た。確かに自分でもこんなことを頼むのは珍しいと分かっている。でも、こうやって手を打たないとトモヤに危険が及ぶかもしれない。
「このことルニスには言ったのかい?」
「いえ、ルニス宰相にはまだ……」
ルニス宰相は父上を優先する。恐らく私がこんなことを頼んでも聞いてはもらえない。その反面。国王陛下である父上はラウリアのことを可愛がっていた。膨大な魔力があり小さい頃から魔術を使いこなすラウリア。ラウリア本人も悪気はないものの魔力の膨大さと魔術の技術に自信を持っていて、いつでも自分が一番だと思っている。
父上も最初は、魔力があり、しかも珍しい雷属性の魔術を使うことが出来る私に大変期待していた。でも、人を傷つける恐れのあるこの雷の魔術を使いこなせず、父上の手に余らせた。もう1つの護る魔術はまだ使いこなせるものの、大した結界が張れないためあまり意味のないものとして扱われた。
だから、ルニス宰相に元から頼むよりもラウリアに頼んだ方が早いと思ったのだ。ラウリアもそのことを分かっているのかそれ以上何も言わなかった。
「分かったよ。その代わり、今度庭園であの花を見ながら、あの紅茶をいれて欲しいな」
ラウリアは興味のないことを覚えない。でも、ラウリアの言う花とお茶がどれを言っているのかはすぐに分かった。すぐにラウリアは父上に頼み、トモヤの管理下を私の元へと置くようにしてくれた。
「父上も驚いてたよ。でも、もしトルデンがあの魔術を使いこなせたら僕と一度戦ってよね」
「ふふっ、ラウリアには叶いませんよ」
私も魔力は多い方だが、ラウリアの方が圧倒的に多い。私が嫌そうな顔をせず、そう言ったことにもラウリアは驚いた表情をした。
訓練はトモヤの目が覚め、全快してから再開することとなった。甲斐甲斐しく世話をし、以前よりもずっと早くトモヤは目覚めた。トモヤの話を聞くと、トモヤは念じずに誰かに触れるだけで相手の毒や怪我を貰えるのだと分かった。トモヤに誰にも触れないようにと言うと悲しそうな表情をされ、そんな顔をさせた自分を呪いたくなった。トモヤが強引に私の手を握ったので、それから触れないように逃げ回ることはやめたのだけど。
31
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる