異世界で手に入れた能力『自己犠牲』のせいで第二王子と愛の逃避行

miian

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第一章 手に入れた能力

あれ?実はお前ら……

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 誰かに口を塞がれたオレはどこかの部屋へと引きずり込まれた。ドンと床に放り投げられ、その相手を見上げると、そこにいたのはオークスだった。

「お前、オレに手を出したら処罰を受けるって聞いたぞ。こんなことしてていいのかよ?」
「別に処罰なんてどうでもいい。お前が手に入るなら」

 オークスは壁に手をかざすとその壁が開き、どこかへと繋がる通路が出てきた。そして、尻餅をついていたオレの腕を掴むとその通路へと引きずって行った。

「なっ、はなせよっ……」

 抵抗など虚しくオークスは奥へとオレを引きずる。行きついた先は見慣れない森の中で、馬車が用意されていた。オークスがその馬車にオレを乗せようとするので抵抗し、オークスの足を踏んづけた。

「大人しく言うことを聞け」
「……うぁっ」

 オークスがオレの頬を殴り、吹っ飛んで壁に打ち付けられる。それでもオレは反抗的な目でオークスを睨みつけた。
 
「あぁ、お前は怪我を貰わせたほうが大人しくなるか」

 オークスは剣を取り出すと、自身の腕を切りつけた。地面に滴るオークスの血を見るに傷はあまり深くないようだが、嫌な予感がする。オークスがオレの方へと近づき、手を伸ばした。

「クソッ」

 もう少しでオークスの手が触れようとしたところで、ヒュンと金色に輝く雷の矢がオークスに向かって放たれた。目の前に金色に輝く髪を振り乱しながらトルデンが現れ、庇うように前に立つ。オークスは舌打ちしてトルデンに斬りかかろうと剣を振りかざす。

ーーゴォオッ

「ぐぁっ……!」

 オークスが剣を振り下ろすよりも先に赤い炎が目の前に現れ、オークスに襲い掛かった。オークスめがけて炎の刃と切り裂くような風が左右から飛び掛かり、オークスの腕を切り裂く。火の魔術をラウリアが、風の魔術をエンフィルが仕掛けたようだ。その2つの魔術は上手に組み合わさり、風の魔術がラウリアの放った火の威力を上げてオークスの右腕に深い傷を与えた。

 オークスは、目の前のトルデン、その背後にいるラウリアとエンフィルを見て分が悪いと思ったのだろう。舌打ちすると何かを掲げて目の前から消え失せた。

「トモヤ、大丈夫ですか?!」

 トルデンがオレを抱きかかえる。ラウリアとエンフィルもオレの傍へとやって来た。
 
(こいつら仲良くないって思ってたけど……)

「なんだよ、お前ら息ピッタリじゃん」 
 
 オレがそう言うと3人は目を合わせて少し照れたような仕草をした。


◇◇◇◇◇◇


 それから少しの日にちが経った。オークスは城から消えて騎士たちが行方を追ったものの依然として見つかっていない。オークスがいなくなって平和に過ごしていたそんなある日。今日は庭園でトルデンとお茶をしていた。訓練試合があったあの日以降も俺はトルデンの管理下のままだ。まぁ、オークスにもトルデンは勝ってたし、どっちにしろそのオークスは今いない。

 「トルデン、僕たちもいいかい?」

 ラウリアがエンフィルを連れてやって来た。オレもトルデンも頷く。まぁ、頷く前にラウリアは座ってたけど。トルデンが2人にお茶を入れると、ラウリアはすぐにそのお茶をゴクゴクと飲んだ。エンフィルはゆっくりと口をつけている。庭園の花は赤くて瑞々しい花や薄い黄色の花がこの前と同じように綺麗に咲き誇っている。

「綺麗に咲いているね。エンフィルはこの花が好きだったよね?」

 ラウリアがお菓子のボルを頬張りながらそう言った。エンフィルは一瞬止まってちょっと動揺したように見えたけど、その後すぐに「あぁ」と小さな声で返事した。

「綺麗だもんな」

 オレも前見た時に思ったけど、この花は綺麗だと思った。オレも同調して綺麗だと言うと、トルデンは嬉しそうに微笑んで「私の母の母国、ルゥ国のお花です」と言った。ラウリアが何故か対抗意識を出して「僕も好きだ」と言い始めた。何だこいつ?

 その後は他愛もない話をして解散した。と言っても、基本的にラウリアばかりが喋ってたけど。
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