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第一章 手に入れた能力

男同士での恋愛について

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 今日はトルデンとルウファに向かっている。馬車に乗るとゆっくりと進み始めた。馬車の中でトルデンは今日のことについて説明する。

「ルウファにある屋台のご飯が美味しいんです。一緒に食べましょう。午後からは私の用事に付き合ってくれますか?」

 用事ってなんだ?という顔をしたらトルデンが一から説明してくれる。

「この世界には以前攻撃魔術と護る魔術があると言ったの覚えていますか?今日はその護る魔術をルウファに教えに行くんです」
「教える?ってことは、その護る魔術が使えるってことなのか?」

 以前、魔術について言いにくそうにしていたと思ったのに、立派そうな魔術だけどな。それにあの訓練場で逃げている時には使っていなかったようにも思う。

「教えると言っても私はあまり大きな結界が張れないんです。なので、大したことはありません。結界というのは何かの物に対して張ることが出来る魔術なんですが、それを施すと触れることができなくなったり何かから守ることができるんです。結界を含む護る魔術を使える人があまりいないので、護る魔術を使える子に私が教えにいくんです。まぁ、私が教えるよりも今日会う子たちの方がもう上手に使いこなしていますが……」

 大きくなくてもそれが使えるだけで十分じゃないのか?よく分からないがトルデンの中では大した魔術ではないらしい。

「それよりも今日は街に行きますが、人に触れないように気を付けてくださいよ?」

 城を出て1時間ほどでルウファと呼ばれる街へと着いた。大きい都市と言われるだけあって、人々が行きかっていて栄えている。少し歩くと屋台が並んでいる場所が見えてきた。

 トルデンが買ってくれた揚げピニャンとパリンチョスというのを食べながら街を歩く。ピニャンはルウファの名産でカラフルな色をしているものの口に入れると溶けるように無くなりホクホクしていて美味しい。土の中から採れるというので芋みたいなものだろうか?パリンチョスは針金みたいな見た目でコップに沢山入っている。食べる度にパリパリと音がする。そして思っていた以上に甘い。でもついつい何本も食べたくなってしまう味だ。
 
 そのまま広場へと行きベンチに座り、ルウファの景色を楽しんだ。暑くなる前の季節で気持ちがいい。その広場で楽器を演奏している人がいる。その周りには子供たちや恋人同士が寄り添ってその演奏を聴いている。

 何組かいる恋人同士のうちのその1組が視界に入り驚いた。結構な体格の良い男2人が手を繋いで、なんとキスしていたのだ……。トルデンはオレがその演奏を聴いていると思ったのか目を細めて同じ方向を見ている。
 
「な、なぁ……この世界では男同士でも、その……付き合ったりするのか?」
 
 周りも変な目で見てないし、トルデンだってその2人に驚いた様子はない。

「えぇ、そうですね。昔から貴族が男同士で結婚することがあってそこから一般の人も男同士で恋愛するようになりました」
「ん……?どういうことだ?」

 どうして貴族は男同士で結婚するんだ?

「少し前に女性や子供に魔力がある人はあまりいないと言ったの覚えていますか?女性の魔力の有無にかかわらず、女性と魔力のある男性が結婚して子供を産んだとしても魔力が遺伝するかは分からないんです。例えば魔力のある女性と魔力のある男性が子を成しても、魔力が遺伝するわけではないんです。なので遺伝するか分からない子供の魔力に期待するんじゃなくて、魔力が強い者同士で結婚して一族の絆を強くしたりするんです、まぁ、国同士とかだとまた事情が変わってくるんですが……」

 男女問わず魔力があってもなくても子供には魔力量は遺伝しないってことらしい。だから、魔力が強い者同士でくっつくということみたいだ。

「ん?じゃぁ、お、男同士で子供が出来たりするのか?」
「さすがに男同士で子供はできないですよ?なので、先ほどの国同士の事情って言うのがまぁ、女性と男性が結婚して子供を産まさせる場合が多いですね……国同士の関係を強めるために……。トモヤの世界では男同士で付き合ったり、結婚はしなかったんですか?」

 さすがに男同士で子供を産むことはできないらしい。この世界に来て魔力だとか魔術だとかありえないことばかり聞くので、もしかしてと思って確認したのだ。途中トルデンの顔が曇った気がしたけど、今は普通に話している。トルデンの最後の質問について考えた。

 前の世界……オレは生きるのに必死でそういうのに疎かった。多分、大々的にではないが同性同士の恋愛も増えてきていたはずだと思う。なんか結婚はできる国とできない国があった気もする。

「んー、あんまりなかったかも?良く分からない」
「ふふっ、実は私もそういうのに疎くて」

 トルデンがそう言ってオレにフォローして、2人で広場の演奏に耳を傾けた。
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