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第一章 手に入れた能力
手に入れた能力
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【ルウファ新聞号外】
■□■□■□■□■□■
第二王子危篤状態から復活!
毒で危篤状態だったトルデン第二王子が持ち直して徐々に回復しているとのこと
一度は瀕死状態で命を危ぶまれたものの、徐々に回復して容態が落ち着いた!
救ったのは自己犠牲能力の召喚者!
久しぶりの神託で呼び出された召喚者は自己犠牲能力者
治癒師がいないこの世界では素晴らしい人材になるだろう
ルウファ新聞
記者 ニッチス
■□■□■□■□■□■
トルデンが先ほど手渡した薄っぺらい紙はこの世界の新聞のようだ。
「トモヤについた能力の名前は『自己犠牲』です……」
トルデンが言いずらそうにオレの能力の名前を口に出して伝えた。
その名前からしても分かるようにオレの能力は自分、つまりオレを犠牲にして治すということだろう。
(なんてネーミングセンスなんだ……)
新聞を読み進めると治癒師がいないことも書かれていた。そして、普通にこの新聞の文字を読めることに気付いた。
「この世界の文字をオレは普通に読むことができるんだな」
「おそらくそれも召喚者の能力と言われています。今までの召喚者もこちらの世界の言葉を分かり、読むこともできていたので勝手に切り替わっているんだと思います」
「ふぅん。便利だな。このルウファ新聞ってのは何なんだ?」
「ルウファはグルファン王国の主要都市の名前で、この新聞自体はゴシップネタをよく書くんですが、トモヤが眠っている間にこちらの新聞が市民に出回ってしまって……」
その時、扉を叩く音がして誰かが訪れた。昨日この部屋に来たトルデンの兄弟たちだろうか?トルデンが扉を開くと、そこに立っていたのは初めて見る男だった。
「ル二ス宰相……」
「ロナベルト国王陛下がお戻りになり、2人にお会いしたいとのことです」
トルデンがチラッとこちらを見て、小さな声で「分かりました」と答えた。そっと扉を閉じてトルデンがオレの方へと戻って来た。
「父上が外交から戻って来たみたいで、私たちに会いたいみたいです……」
そのトルデンの声は震えていて怯えているようにも見える。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。トモヤ、一緒に行ってくれますか?私たちがいるこの場所は西の塔なので少し歩くことになりますが、しんどければいつでも言ってください」
「分かった」
トルデンに返事をして、オレたちは早速部屋を出ることにした。西の塔と言われているだけあって長い階段が続いている。
「うわっ……」
階段を一歩踏み外しかけて驚いた声を上げると、トルデンはすぐに振り返りオレを抱きかかえた。
「怪我はないですか?大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。だから下ろせ」
そう言っているのにトルデンはオレを下ろそうとはせずそのまま抱きかかえて階段を下りようとした。
「いや!自分で歩けるから!さっきのはつまずきかけただけでしんどくてそうなったんじゃない」
オレだって男なのでこうも軽々しく抱きかかえられるのは嫌なのだ。まぁ、身長も低いし、まともに食べてなかったのでガリガリなのは否めないんだが……。
「本当ですか?本当に大丈夫ですか?」
トルデンがオレを下ろそうとせず心配し続けるので「大丈夫だって言ってるだろ」と少し怒りを孕んだ口調で言うとしぶしぶオレを下ろした。
それから少し歩き続けて外に出ると渡り廊下があり、遠くの方に今出てきた塔と同じような塔が見えた。そして、その塔と今出てきた塔の真ん中ーーこの渡り廊下を進んだ先に城の本体があるようだ。
トルデンはオレの横に立ち、早くもないスピードで足を進める。俺に合わせているようだ。城の中へと入り、1つの部屋の前にトルデンが立ち止まりノックした。中から返事がして部屋に入ると髭を生やしたちょっと偉い風の男が座っていて、こいつがこの国の国王陛下らしい。トルデンの父親でもあるはずだ。国王陛下がチラッとこちらを見る。
「その者に失礼な態度をとったと聞いた。神殿についてはオークスに任せていて気付くのが遅れて申し訳なかった」
地下牢に何日間も閉じ込めておいたくせにその一言で許されると思っているのか!と怒りたくなったが、隣にいるトルデンが微かに震えていたので黙っておくことにした。
「トルデン、体調が戻ったのなら魔術の訓練をしておくように。召喚者殿はまだ本調子ではなかろう。ゆっくり過ごしてくれ」
国王陛下がトルデンの名を呼んだ時、トルデンはビクッと肩を震わせていた。あの金色の瞳を床に向けてじっと国王陛下の言葉に声を傾けている。だが、国王陛下がトルデンにかけた言葉はそれだけで毒に倒れていたことを心配する声などは1つもなかった。
「お前たちのことはルニスに任せてある。私はまた外交に出る必要がある。後のことは頼んだ」
国王陛下はオレたちと手短に話した後、最後はルニスと呼ばれた男に行って部屋を去って行った。先ほど部屋にオレたちを呼びに来た男はいつの間にかオレたちのいるこの部屋の扉のところに立っていたのだ。オレたちも続いて無言で部屋を出た。
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第二王子危篤状態から復活!
毒で危篤状態だったトルデン第二王子が持ち直して徐々に回復しているとのこと
一度は瀕死状態で命を危ぶまれたものの、徐々に回復して容態が落ち着いた!
救ったのは自己犠牲能力の召喚者!
久しぶりの神託で呼び出された召喚者は自己犠牲能力者
治癒師がいないこの世界では素晴らしい人材になるだろう
ルウファ新聞
記者 ニッチス
■□■□■□■□■□■
トルデンが先ほど手渡した薄っぺらい紙はこの世界の新聞のようだ。
「トモヤについた能力の名前は『自己犠牲』です……」
トルデンが言いずらそうにオレの能力の名前を口に出して伝えた。
その名前からしても分かるようにオレの能力は自分、つまりオレを犠牲にして治すということだろう。
(なんてネーミングセンスなんだ……)
新聞を読み進めると治癒師がいないことも書かれていた。そして、普通にこの新聞の文字を読めることに気付いた。
「この世界の文字をオレは普通に読むことができるんだな」
「おそらくそれも召喚者の能力と言われています。今までの召喚者もこちらの世界の言葉を分かり、読むこともできていたので勝手に切り替わっているんだと思います」
「ふぅん。便利だな。このルウファ新聞ってのは何なんだ?」
「ルウファはグルファン王国の主要都市の名前で、この新聞自体はゴシップネタをよく書くんですが、トモヤが眠っている間にこちらの新聞が市民に出回ってしまって……」
その時、扉を叩く音がして誰かが訪れた。昨日この部屋に来たトルデンの兄弟たちだろうか?トルデンが扉を開くと、そこに立っていたのは初めて見る男だった。
「ル二ス宰相……」
「ロナベルト国王陛下がお戻りになり、2人にお会いしたいとのことです」
トルデンがチラッとこちらを見て、小さな声で「分かりました」と答えた。そっと扉を閉じてトルデンがオレの方へと戻って来た。
「父上が外交から戻って来たみたいで、私たちに会いたいみたいです……」
そのトルデンの声は震えていて怯えているようにも見える。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。トモヤ、一緒に行ってくれますか?私たちがいるこの場所は西の塔なので少し歩くことになりますが、しんどければいつでも言ってください」
「分かった」
トルデンに返事をして、オレたちは早速部屋を出ることにした。西の塔と言われているだけあって長い階段が続いている。
「うわっ……」
階段を一歩踏み外しかけて驚いた声を上げると、トルデンはすぐに振り返りオレを抱きかかえた。
「怪我はないですか?大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。だから下ろせ」
そう言っているのにトルデンはオレを下ろそうとはせずそのまま抱きかかえて階段を下りようとした。
「いや!自分で歩けるから!さっきのはつまずきかけただけでしんどくてそうなったんじゃない」
オレだって男なのでこうも軽々しく抱きかかえられるのは嫌なのだ。まぁ、身長も低いし、まともに食べてなかったのでガリガリなのは否めないんだが……。
「本当ですか?本当に大丈夫ですか?」
トルデンがオレを下ろそうとせず心配し続けるので「大丈夫だって言ってるだろ」と少し怒りを孕んだ口調で言うとしぶしぶオレを下ろした。
それから少し歩き続けて外に出ると渡り廊下があり、遠くの方に今出てきた塔と同じような塔が見えた。そして、その塔と今出てきた塔の真ん中ーーこの渡り廊下を進んだ先に城の本体があるようだ。
トルデンはオレの横に立ち、早くもないスピードで足を進める。俺に合わせているようだ。城の中へと入り、1つの部屋の前にトルデンが立ち止まりノックした。中から返事がして部屋に入ると髭を生やしたちょっと偉い風の男が座っていて、こいつがこの国の国王陛下らしい。トルデンの父親でもあるはずだ。国王陛下がチラッとこちらを見る。
「その者に失礼な態度をとったと聞いた。神殿についてはオークスに任せていて気付くのが遅れて申し訳なかった」
地下牢に何日間も閉じ込めておいたくせにその一言で許されると思っているのか!と怒りたくなったが、隣にいるトルデンが微かに震えていたので黙っておくことにした。
「トルデン、体調が戻ったのなら魔術の訓練をしておくように。召喚者殿はまだ本調子ではなかろう。ゆっくり過ごしてくれ」
国王陛下がトルデンの名を呼んだ時、トルデンはビクッと肩を震わせていた。あの金色の瞳を床に向けてじっと国王陛下の言葉に声を傾けている。だが、国王陛下がトルデンにかけた言葉はそれだけで毒に倒れていたことを心配する声などは1つもなかった。
「お前たちのことはルニスに任せてある。私はまた外交に出る必要がある。後のことは頼んだ」
国王陛下はオレたちと手短に話した後、最後はルニスと呼ばれた男に行って部屋を去って行った。先ほど部屋にオレたちを呼びに来た男はいつの間にかオレたちのいるこの部屋の扉のところに立っていたのだ。オレたちも続いて無言で部屋を出た。
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