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第三章 愛の逃避行
名前の意味
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翌朝、目を覚まして2人で朝日を眺めながらこれからのことについて話し合った。トルデンが言うには月明りを祈りの魔法石に集め、供え物袋に供え物を入れるらしい。頭の中に言葉が入り込んできたと言っていたが、それをどこまで信じていいのか分からない。でも、あの胡散臭いアルトロより、トルデンの言葉の方が信じられるのは何故だろう。
「うーん、今は大分、北東の方に来ています。この近くから集めれる物を集めた方がいいかもしれませんね」
ラハナ国のラハナリアの森という国へと向かうことにした。今はまだその手前のライリアンの森にいる。
「この近くの森でコリンが採れるはずです」
「ふーん、どんなんなんだ?」
「丸くて甘酸っぱい果実です」
果実と言うからには木に実っているのだろう。そう思って木の枝を確認しながら歩くと、ピタッとトルデンが立ち止まり、オレはドンとぶつかった。
「ふふっ、ありました、ありました」
トルデンはしゃがみ込み、ヒョイヒョイともぎ取った。コリンという果実は木の枝ではなく木の幹に出来るらしい。
(木の枝じゃないのかよ……)
「齧ると美味しいんです。食べてみてください」
さっと目の前に出されたコリンを見て、以前の世界の果物を思い出した。
「まるでリンゴみたいだな」
「リンゴ?それはトモヤの国の言葉ですか?」
「ん?あぁ、そうだ。そっか今まで勝手に切り替わってたけど、通じない言葉もあるんだな」
「トモヤの国の言葉、もっと知りたいです。教えてください」
「お前も変なやつだな」
「お前じゃない。トルデンって呼んでください」
トルデンが久しぶりに変なことを言うので、つい「お前」と呼んでしまったら、すかさず訂正させられた。キッとした表情をしてピシッとした口調で譲らないトルデン。そして、今、トルデンの名前を呼ばなかったことにトルデンは嫌だと意思表示していた。「ごめん、トルデン」と言うと、満足そうにニコニコして、「ふふっ、許してあげます」とトルデンは言った。
「どうしました、トモヤ?」
「なぁ、トルデン、その敬語やめろよ」
「え?でも……」
「前から思ってたけど、慣れないんだよな」
基本的にトルデンは誰にでも敬語を使う。自分だけじゃないと分かっている。でも、敬語を使われることがないオレはそれに慣れない。いや、まぁそこそこ一緒にいるんだけど。
「ど、努力します」
すぐに敬語を使ったトルデンをジトっとした目で見ると、トルデンは「ど、努力する」と言い直した。クスクス笑って、2人で木の下で少し休むことにした。コリンを片手に歯を立てるとサクッと音がして瑞々しくて甘い。
「トモヤの国の言葉、もっと知りたい。教えて」
「うーん、この世界の文字は何かくにゃくにゃしてミミズみたいだ」
「ミミズ?」
「ミミズも通じないのか。何だろうこの世界の言葉は英語の筆記体よりももっとふにゃふにゃで……あー難しいな……」
「ふふっ、トモヤ、旅は長いからゆっくり教えてよ」
「そうだな……これから長くなりそうだ……」
「旅している間、トモヤの世界の言葉を教えてよ」
「オレの世界というか、オレの国にはひらがなやカタカナ、それに漢字っていうのもあって……」
そう言いなが、傍に落ちている木の枝を拾って地面に文字を書いた。リンゴとミミズをカタカナで書いて、絵も描いてやる。
「ふふっ、ミミズって何だか可愛い生き物だね。ねぇ、トモヤってどう書くの?」
「んー、ひらがなだとこうで漢字だとこう書くかな」
地面にひらがなと漢字、それぞれで自身の名前を地面に書く。
「どうして何種類も文字があるの?」
「漢字には意味があるんだ。あと、川とかは実際の見た目から漢字になったりしてる」
「ふーん、トモヤってどんな意味があるの?」
「友達に……なる……って意味かな……」
元いた世界で名前の意味なんて聞いたことなかったけど、漢字的にそうだろうと思った。
「そっか……ねぇ、友也、私と初めての友達になってくれる?」
「へ……?」
いきなり友達になってほしいと言われて、驚き隣にいるトルデンを思わず見てしまう。トルデンもこちらを見ていて、その金色の瞳に吸い込まれそうになる。
「王族として生まれて、友達が私にはいなくて寂しかった……。友也が初めての友達になってくれたら嬉しい……」
「あ、あぁ……いいよ……友達になってやる……」
カッコつけて友達になってやるなんて言ったものの、オレにも友達なんてものはずっといなかったし、必要もないと思っていた。でも、トルデンに改まって言われると自分のどこかに温もりを感じた気がした。
「うーん、今は大分、北東の方に来ています。この近くから集めれる物を集めた方がいいかもしれませんね」
ラハナ国のラハナリアの森という国へと向かうことにした。今はまだその手前のライリアンの森にいる。
「この近くの森でコリンが採れるはずです」
「ふーん、どんなんなんだ?」
「丸くて甘酸っぱい果実です」
果実と言うからには木に実っているのだろう。そう思って木の枝を確認しながら歩くと、ピタッとトルデンが立ち止まり、オレはドンとぶつかった。
「ふふっ、ありました、ありました」
トルデンはしゃがみ込み、ヒョイヒョイともぎ取った。コリンという果実は木の枝ではなく木の幹に出来るらしい。
(木の枝じゃないのかよ……)
「齧ると美味しいんです。食べてみてください」
さっと目の前に出されたコリンを見て、以前の世界の果物を思い出した。
「まるでリンゴみたいだな」
「リンゴ?それはトモヤの国の言葉ですか?」
「ん?あぁ、そうだ。そっか今まで勝手に切り替わってたけど、通じない言葉もあるんだな」
「トモヤの国の言葉、もっと知りたいです。教えてください」
「お前も変なやつだな」
「お前じゃない。トルデンって呼んでください」
トルデンが久しぶりに変なことを言うので、つい「お前」と呼んでしまったら、すかさず訂正させられた。キッとした表情をしてピシッとした口調で譲らないトルデン。そして、今、トルデンの名前を呼ばなかったことにトルデンは嫌だと意思表示していた。「ごめん、トルデン」と言うと、満足そうにニコニコして、「ふふっ、許してあげます」とトルデンは言った。
「どうしました、トモヤ?」
「なぁ、トルデン、その敬語やめろよ」
「え?でも……」
「前から思ってたけど、慣れないんだよな」
基本的にトルデンは誰にでも敬語を使う。自分だけじゃないと分かっている。でも、敬語を使われることがないオレはそれに慣れない。いや、まぁそこそこ一緒にいるんだけど。
「ど、努力します」
すぐに敬語を使ったトルデンをジトっとした目で見ると、トルデンは「ど、努力する」と言い直した。クスクス笑って、2人で木の下で少し休むことにした。コリンを片手に歯を立てるとサクッと音がして瑞々しくて甘い。
「トモヤの国の言葉、もっと知りたい。教えて」
「うーん、この世界の文字は何かくにゃくにゃしてミミズみたいだ」
「ミミズ?」
「ミミズも通じないのか。何だろうこの世界の言葉は英語の筆記体よりももっとふにゃふにゃで……あー難しいな……」
「ふふっ、トモヤ、旅は長いからゆっくり教えてよ」
「そうだな……これから長くなりそうだ……」
「旅している間、トモヤの世界の言葉を教えてよ」
「オレの世界というか、オレの国にはひらがなやカタカナ、それに漢字っていうのもあって……」
そう言いなが、傍に落ちている木の枝を拾って地面に文字を書いた。リンゴとミミズをカタカナで書いて、絵も描いてやる。
「ふふっ、ミミズって何だか可愛い生き物だね。ねぇ、トモヤってどう書くの?」
「んー、ひらがなだとこうで漢字だとこう書くかな」
地面にひらがなと漢字、それぞれで自身の名前を地面に書く。
「どうして何種類も文字があるの?」
「漢字には意味があるんだ。あと、川とかは実際の見た目から漢字になったりしてる」
「ふーん、トモヤってどんな意味があるの?」
「友達に……なる……って意味かな……」
元いた世界で名前の意味なんて聞いたことなかったけど、漢字的にそうだろうと思った。
「そっか……ねぇ、友也、私と初めての友達になってくれる?」
「へ……?」
いきなり友達になってほしいと言われて、驚き隣にいるトルデンを思わず見てしまう。トルデンもこちらを見ていて、その金色の瞳に吸い込まれそうになる。
「王族として生まれて、友達が私にはいなくて寂しかった……。友也が初めての友達になってくれたら嬉しい……」
「あ、あぁ……いいよ……友達になってやる……」
カッコつけて友達になってやるなんて言ったものの、オレにも友達なんてものはずっといなかったし、必要もないと思っていた。でも、トルデンに改まって言われると自分のどこかに温もりを感じた気がした。
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