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第一章 手に入れた能力

地下牢へ放り込まれる

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「あいつ、まだ死なないのか?早く上に戻りたいんだが……」

 話し声がしたので、そちらを見ると俺をここへと押し込んだ騎士2人が見張り役として立っているようだ。
 倒れてから数日経ったであろう今もまだ痛みは消えていない。

「うぅ……死にそう……」

 身体中どこもかしこも痛いのに、気を失うこともできず苦しみ悶え続けた。
 地面は冷たく、誰かの命を救ったはずなのに、どうしてオレは牢屋に転がされているんだ……。

「本当によく生きてるよな……。猛毒のはずなのに」
「死んだら上に戻れるのに」
「オークス騎士団長の命令だから破ると大変だぞ」
「……あぁ、そうだな。それにしても今までの召喚者に比べてみすぼらしいガキだったな」

 男たちが愚痴りながら何か言っている。苦しんでいるオレなんかどうでもよさそうで、こちらを心配するどころか見向きもしない。

(ーー召喚者?)

 聞きなれない言葉だが、どうもオレはこの世界に召喚された人間のようだった。
 勝手に呼び出しておいて、この仕打ちは中々のだと思う。

 それからまた少し時間が経った頃、立派な騎士服を着た男ーー見張りの騎士が、オークス騎士団長と呼んでいた男ーーが地下牢へとやって来た。薄っすらと目を開き、声の方を確認すると、黒髪で鋭い目で狡猾そうな中年の男が立っていた。

「まだ生きているのか?」
「はい、意外としぶとくて……」
「もし生き延びそうなら適当に水と食事を与えておけ。もしかすると使えるかもしれん」

 男はオレを不潔な物でも見るように見下ろした後、地下牢から出て行った。
 それからまた数日間、オレは地下牢でほったらかしにされていた。見張り役の騎士2人はいつ死ぬのか?と苛立ちを隠しもせず、オレを見下ろしている。

「の、のどが……かわいた……」
 
 途切れ途切れに伝えると騎士が舌打ちしてコップを持って地下牢の傍へとやって来た。
 その水を差しだしてくれるのかと思えば、目の前でコップを下に向けてジャーっと零した。

「どうせ動けないんだったら這いつくばってそれで舐めてろ」

 床の隙間に水がどんどん流れていくのでオレは慌てて文字の通り這いつくばってその水を舐めた。騎士たちはそんなオレの様子を見て、せせら笑っている。

 猛烈な苦しみからは解放されたもののまだ身体は冷たく死にそうな気分だった。少し動いただけで頭がクラクラしたのでまた瞼を閉じた。
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