異世界で手に入れた能力『自己犠牲』のせいで第二王子と愛の逃避行

第二章 拉致

悪趣味な発言

　少ししてこの国の王・マヌケスがやってきた。昨日はあまり怪我人が来なかったおかげで体力はそこまで消耗していなかったものの、あの見張りの男たちに手を出されるのが嫌で倒れたフリをずっとしていた。マヌケスはチラッとこちらを見た後、側室になる予定のスキルを見た。スキルは怯えているものの悲鳴も涙も見せずその視線を耐え忍んだ。

「もちろん生娘だろうな」
「はっ、生娘を出すようにと言ったので間違いないと思われます」
「見た目からしても良さそうだ」

　ニヤニヤと気色の悪い視線をスキルに投げつけた後、男は浅い呼吸を繰り返しているオレを見た。

「そいつの能力はやはり本物そうだな」
「はい、怪我した騎士や病にかかった者で試してみましたらが、全てこの者が吸収しているようで、全員怪我のない身体になりました」
「明日は満月だ。明日の夜、その娘を閨に来る時にそいつも連れてこい」
「「「…は？」」」

　スキルに対して欲望のままに見つめるこの男に腹が立ったし、何か言ってやろうかとも思った。でも、怒りのまま口を開いたところでこの状況が悪化するだけだと分かっていたので、黙って聞いていたら何故か俺も閨へ来いと言われ、思わず口を開いてしまった。そして、その言葉に驚いたのはオレだけじゃなく他の男たちも同様で、その命令に驚き、マヌケスに同じ疑問符を投げかけていた。

「私は生娘が好きだが、ほとんどの女が痛みで泣くのが煩わしい。貞操保護をかけるときもだ。そいつに全て吸収させろ」

　悪趣味な発言に、女を物扱いするかのような発言に憎しみと殺意しか湧かなかった。

「明日、閨の前に風呂に入れて綺麗にさせておけ。手は出すなよ」

　そう言うと、マヌケスはこの地下牢を出て行き、見張りの男たちだけになった。見張り役の男たちも「明日であのお嬢ちゃんともお別れか、残念だな」「まぁ、あのガキはいるからシケこもうぜ」と言って、サボって上へと行った。

　静まり返った牢屋でスキルと目が合った。やはりその目には怯えが見える。そりゃそうだ。どうすればいいだろうか？オレが代わりにと言ったところで、マヌケスは女好きのようで無理そうだ。満月の夜とマヌケスが言っていた理由を尋ねると、スキル曰く、死んだ前王も傭兵が集まるような国を治めており良い人間では全くなかったが、それ以上に息子で現王のマヌケスは、ぼんくらで自身の魔力を驕り、周りの国々を脅かしている。そして、少し迷信らしきものを信じているらしく満月の夜に生娘と閨を共にすると力がみなぎると信じているらしい。

　迷信なんてクソくらえだ。この現状を何とかしたくて必死に考えた。