短編怖~い話1話完結

ムーワ

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第5章

静岡の怖い実話

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これは静岡県の某温泉地で起こった実話に基づく怖~いお話です。

男性は法事に出席したついでに彼女と近くの温泉宿に泊まりました。朝晩食事付きで2万6千円だったそうです。宿に着いてみると部屋はリビングが12畳に寝室8畳の立派な造り、風呂も大きく、食事も豪華です。

「この宿に泊まったのはラッキーだったね」と2人は喜んで食事や風呂を楽しみました。そして一通り遊んだ後、布団でテレビをつけっぱなしの状態のままいつの間にか眠ってしまいました。しばらくして男が目を覚ますと、つけっぱなしだったはずのテレビが消えていたのです。不思議に思いつつも時間を確認しようと携帯に手を伸ばした時、変な音が聞こえてきました。

「フーッ、フーッ」という荒い息。彼女がいびきをかいているのだと思い、男は携帯の明かりを彼女に向けました。携帯の明かりでかすかに見える彼女の顔。すると寝ていると思っていた彼女は目を見開き、歯を剥きだして笑っていたのです。息は歯の隙間から漏れ出る音でした。男が驚いていると彼女は居間を指さしました。見ると鴨居に何かぶら下がっています。

それは鴨居から首吊りの輪っかを作った浴衣の帯らしきものだったのです。そして、彼女はギラギラした満面の笑みを浮かべてこう言いました。「使え、使え、使え、使え」。その後、男は気を失ってしまいました、気付いた時には朝だったそうです。鴨居の紐はなくなっており、テレビも付いていました。彼女を見ると何かにうなされているようで苦悶の表情を浮かべていたのです。

急いで彼女を起こし、事情を聞くと「怖い夢を見た」と怯えた様子で話しました。曰く、夜中に目が覚めると男が布団におらず、枕元の明かりを付けて探してみると鴨居に浴衣の紐をかけ、首吊りの準備をしていたとのこと。彼女が「何してるの」と聞くと、男は振り向いて笑い「さあ、準備できたよ。これ使いな」と言ったのだそうです。

それを聞いて男もビックリしましたが、彼女には自分の話はしませんでした。何となく話してはいけないような気がしたのです。とりあえず男は彼女を慰め、食欲のないまま朝食を取りに食堂へ向かいました。その帰りにあったレセプションカウンターで男は中居さんに「僕達の部屋で首吊りがあったんですか?」と思い切って尋ねてみました。

その時は男も予想していた通り言葉を濁されましたが、チェックアウトの時に料金を見ると数千円ほど差し引かれていたそうです。

中居さんは名言を避けたようですが、宿代が割引されている事から答えは明白です。もしもあの時男が彼女に夢の話をしていたらどうなっていたのでしょうか。また、首吊りの紐を前にして気絶せずに意識があったら。もしかしたら、2人揃って鴨居にぶら下がっていたのかもしれません(続)
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