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序章
プロ棋士を目指した走る男
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走る男は全国の強豪が集まる小学生名人戦でベスト8まで進出した。
あとひとつ勝っていればNHK杯子供将棋名人戦のテレビ初出演だったので悔しさで一杯だった。
そんな走る男は小6の時には絶対に将来、プロ棋士になると心に誓い勉強もせず、道場へ通ってひたすら将棋に打ち込む日々を過ごした。当時、将棋界では大山康晴、中原誠、加藤一二三、谷川康次、羽生善治などベテラン勢から若手まで将棋界を代表するプロ棋士が活躍していた。一流のプロ棋士の棋譜を並べたり、詰将棋を解いたりひたすら将棋に打ち込んだ。そんな努力もあって中1の奨励会受験の時にはすでにアマチュア4段以上の実力を兼ね備えていた。
残念ながら中1の時はまさかの1次試験で不合格をし、悔し涙を流した。その悔しさでひたすら将棋に打ち込んだ。学校の授業が終わると将棋道場に通って、アマチュア県代表クラスを相手に将棋を指した。
将棋道場は中学生の走る男にとってはたばこ臭かったが、ただ奨励会に合格したいその一心で将棋に打ち込んだ。
そんな努力が報われ、翌年の中2の時には見事、奨励会試験に合格した。晴れて6級で奨励会に入会した走る男はただひたすら将棋に打ち込み、絶対に将来、「四段に昇段してプロ棋士になる」という目標を持って学校が終わるとひたすら将棋に打ち込む生活を過ごした。
奨励会という世界は合格するのも大変だが、合格をしてもほとんどがプロ棋士になれずに奨励会を去っていくそんな厳しい世界なのである。奨励会員は年齢制限があるため会員は小学生~20代だった。6級の頃はほとんど小中学生と一戦を交えることが多かったが、ほぼ順調に昇級を重ねていった。奨励会員は平手で対局することもあれば段級位に差がある場合は駒落ちで対局することもある。
高校へ進学した走る男は大変と感じながらも学業と奨励会生活を充実させる日々を過ごした。高校生の頃には初段に昇段し、その後しばらく停滞するが高校を卒業後、目標としていた三段リーグへの昇段を果たした。
奨励会という世界は三段リーグまで進むのも大変だが、三段リーグから四段に昇段するのが最も過酷で20人以上も将棋に人生をかけてきた神童とまで呼ばれたつわものが集まりたった二人しか昇段できない厳しい世界だ。
走る男は初めて三段リーグに参加したとき、自分の実力がどの程度通用するのか楽しみだった。勝ち越しぐらいはできるだろうと思って臨んだが、最初の三段リーグは7勝11敗の負け越しだった。この時、三段リーグの厳しさを知ると同時に自分は現状の力では三段リーグで勝ち残るのは厳しいと思った。
高校を卒業すると同時にひたすら将棋に打ち込んだ。2回目の三段リーグでは11勝7敗と勝ち越し順位もあげて、「よし」今の調子で頑張り続ければ「四段に昇段できるかもしれない」と淡い期待を抱いていた。だが、四段に昇段するには5敗以下の成績でなければ厳しい(最近では初の女性棋士誕生かと話題になった西山朋佳女流は14勝4敗の好成績を残しプロ棋士になってもおかしくない成績を残すも上位2名が14勝4敗で3番手になってしまい次点に泣かされた)。
それほど三段リーグから四段に昇段するのは実力と運の両方を兼ね備えていなければならない厳しい世界なのだ。
3回目の三段リーグで走る男は前半を7勝2敗と好スタートを切ったが、後半3連敗をするなど精神状態を乱してしまい3勝6敗と大きく崩れ、結局10勝8敗で終わった。
その後も走る男は奨励会生活で大きく負け越すことはなかったが、トントンの成績しか残せなかった。走る男はプロ棋士になる厳しさを痛感するとともに、「年齢制限まで全力でプロ棋士になることを目標に生活していくのか」それとも「第2の人生を模索しながらプロ棋士を目指すか」考えるようになった・・・(続)
あとひとつ勝っていればNHK杯子供将棋名人戦のテレビ初出演だったので悔しさで一杯だった。
そんな走る男は小6の時には絶対に将来、プロ棋士になると心に誓い勉強もせず、道場へ通ってひたすら将棋に打ち込む日々を過ごした。当時、将棋界では大山康晴、中原誠、加藤一二三、谷川康次、羽生善治などベテラン勢から若手まで将棋界を代表するプロ棋士が活躍していた。一流のプロ棋士の棋譜を並べたり、詰将棋を解いたりひたすら将棋に打ち込んだ。そんな努力もあって中1の奨励会受験の時にはすでにアマチュア4段以上の実力を兼ね備えていた。
残念ながら中1の時はまさかの1次試験で不合格をし、悔し涙を流した。その悔しさでひたすら将棋に打ち込んだ。学校の授業が終わると将棋道場に通って、アマチュア県代表クラスを相手に将棋を指した。
将棋道場は中学生の走る男にとってはたばこ臭かったが、ただ奨励会に合格したいその一心で将棋に打ち込んだ。
そんな努力が報われ、翌年の中2の時には見事、奨励会試験に合格した。晴れて6級で奨励会に入会した走る男はただひたすら将棋に打ち込み、絶対に将来、「四段に昇段してプロ棋士になる」という目標を持って学校が終わるとひたすら将棋に打ち込む生活を過ごした。
奨励会という世界は合格するのも大変だが、合格をしてもほとんどがプロ棋士になれずに奨励会を去っていくそんな厳しい世界なのである。奨励会員は年齢制限があるため会員は小学生~20代だった。6級の頃はほとんど小中学生と一戦を交えることが多かったが、ほぼ順調に昇級を重ねていった。奨励会員は平手で対局することもあれば段級位に差がある場合は駒落ちで対局することもある。
高校へ進学した走る男は大変と感じながらも学業と奨励会生活を充実させる日々を過ごした。高校生の頃には初段に昇段し、その後しばらく停滞するが高校を卒業後、目標としていた三段リーグへの昇段を果たした。
奨励会という世界は三段リーグまで進むのも大変だが、三段リーグから四段に昇段するのが最も過酷で20人以上も将棋に人生をかけてきた神童とまで呼ばれたつわものが集まりたった二人しか昇段できない厳しい世界だ。
走る男は初めて三段リーグに参加したとき、自分の実力がどの程度通用するのか楽しみだった。勝ち越しぐらいはできるだろうと思って臨んだが、最初の三段リーグは7勝11敗の負け越しだった。この時、三段リーグの厳しさを知ると同時に自分は現状の力では三段リーグで勝ち残るのは厳しいと思った。
高校を卒業すると同時にひたすら将棋に打ち込んだ。2回目の三段リーグでは11勝7敗と勝ち越し順位もあげて、「よし」今の調子で頑張り続ければ「四段に昇段できるかもしれない」と淡い期待を抱いていた。だが、四段に昇段するには5敗以下の成績でなければ厳しい(最近では初の女性棋士誕生かと話題になった西山朋佳女流は14勝4敗の好成績を残しプロ棋士になってもおかしくない成績を残すも上位2名が14勝4敗で3番手になってしまい次点に泣かされた)。
それほど三段リーグから四段に昇段するのは実力と運の両方を兼ね備えていなければならない厳しい世界なのだ。
3回目の三段リーグで走る男は前半を7勝2敗と好スタートを切ったが、後半3連敗をするなど精神状態を乱してしまい3勝6敗と大きく崩れ、結局10勝8敗で終わった。
その後も走る男は奨励会生活で大きく負け越すことはなかったが、トントンの成績しか残せなかった。走る男はプロ棋士になる厳しさを痛感するとともに、「年齢制限まで全力でプロ棋士になることを目標に生活していくのか」それとも「第2の人生を模索しながらプロ棋士を目指すか」考えるようになった・・・(続)
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