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5章 変わっていく世界
119話
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フローラ牧場にたどり着いた焔たちは、さっそくここで待つふたりの元へむかう。
建物の前まで行くと、ちょうど畑の方からそのふたりがこちらへ歩いてくるのが見えた。
「あ、焔さん」
「ひさしぶりだねまろんちゃん」
「はい、会えてうれしいです」
まろんは焔に挨拶をすると、その後舞依たちとともにおしゃべりを始めた。
ひさしぶりに会えたお友達に喜びを隠せないといった様子だ。
「帆奈もひさしぶりだな」
「あんまりひさしぶりって感じはしませんけどね」
「そりゃあんだけ連絡とってればそうかもしれないけどな。会うのはひさしぶりだろ」
「まあ、そうですが」
帆奈は口では少しそっけない態度を取っているが、内心では再会を喜んでおり、少し頬が赤くなっていた。
そんな帆奈に明日香が不思議そうな顔で声をかける。
「帆奈って焔さんと連絡とってたの?」
「ええ、まあ、いろいろ報告がてら」
そう、帆奈は実のところ、あれからも度々焔とビデオ通話で連絡をとっていた。
なぜか焔だけだったようだが、それもあって他の者ほど焔は帆奈と離れていた感覚がない。
まるで、一人で都会に出てみたら、田舎に置いてきた妹が毎日のように電話してくるような感じだ。
焔はそれを嬉しく思っていた。
「む~」
「明日香様、どうかしましたか?」
「別に~」
「なんかちょっと雰囲気変わりましたね」
「え、そう?」
「はい、なんかますますこどもっぽくなりました」
帆奈がそう言うと、すかさず明日香の軽い手刀が帆奈のおでこに炸裂。
「ますますってどういうこと?」
「えへへ……、まあそのままの意味です」
帆奈は明日香を尊敬しているが、こどもっぽいとも思っていたらしい。
明日香が昔の記憶を取り戻したことによる変化は、帆奈にはこどもっぽく映るようだ。
「うん?」
そんなやり取りの中、帆奈はふと少し離れたところにいた少女に気付く。
「って、呉羽さんじゃないですか!? どうなってやがるんですか!?」
もともと呉羽は明日香たちとそれほどいい関係ではないとされていた。
となれば、その部下である帆奈からすると、こんなところで出会うような存在では到底ない。
なのに目の前にその呉羽がいる。
さすがに驚かずにはいられないだろう。
「こんにちは帆奈さん」
「ど、どうも」
呉羽にぺこりと挨拶をされ、動揺していた帆奈はとりあえず同じようにぺこりと挨拶を返した。
そんな二人を見ていた焔はつい気になって声をかける。
「ふたりは知り合いなの?」
「ええ、明日香さんたちが私を避けるので、代わりに絡んでました」
「絡む……」
焔がちらっと帆奈の様子を見ると、微妙に笑顔が引きつっていた。
どうやら仲良しというわけではなく、本当に絡まれていただけらしい。
「帆奈さん、あの頃はあまり仲良くできませんでしたが、これからはお友達になりましょう」
「え、お友達……?」
「ダメ……ですか?」
「はわっ、かわいい……」
呉羽の必殺上目遣いが炸裂。
帆奈が少しひるんで、頬が赤くなっている。
「ま、まあ、呉羽さんがそう言ってくれるならお友達になりましょう」
「はい、よろしくお願いします」
「ではさっそく今夜は一緒にお風呂に入りましょうね!」
「……え?」
お友達宣言をした途端に、帆奈は目をキラキラさせながら呉羽に詰め寄る。
「フヒヒヒ、あ~早く夜にならないかな~。その白くてきれいな肌、触らせてくださいね」
「ひっ」
豹変した帆奈が気持ち悪かったのか、呉羽は逃げるように焔の背後に回った。
「あ、そうだ、焔さんも一緒に入りましょうね」
「なんでだよ!」
「だって久しぶりに直接会ったんですから、もっと親睦を深めたいじゃないですか! でも呉羽さんとの入浴も捨てられない。というわけで一緒に入りましょう!」
「そんなわけにはいくか!」
「いいじゃないですか、一回一緒に入ったんですから」
「ちょっ!?」
帆奈は何気なく衝撃発言をかまし、その瞬間、焔の背後から冷たい空気が流れてくる。
「一緒に……、入ったんですか焔さん」
「いや、その、俺が入ってるところに帆奈が入ってきたわけで、俺の意思だったわけじゃないよ?」
必死に言い訳をする焔だったが、帆奈はわざとやっているのか、どんどん焔を追い詰めるような発言をする。
「そうですね、私も焔さんというよりは、一緒に入ってたまろんちゃんと入りたくて乱入したんですよ」
「うお~い!? もう黙っててくれませんかね!?」
帆奈の爆弾投下によって、呉羽の目はもはや氷の女王のようになっていた。
そんな呉羽に焔は恐る恐る声をかける。
「呉羽ちゃん、えっと、一緒に入る……?」
「入りません!」
「ですよね~!」
建物の前まで行くと、ちょうど畑の方からそのふたりがこちらへ歩いてくるのが見えた。
「あ、焔さん」
「ひさしぶりだねまろんちゃん」
「はい、会えてうれしいです」
まろんは焔に挨拶をすると、その後舞依たちとともにおしゃべりを始めた。
ひさしぶりに会えたお友達に喜びを隠せないといった様子だ。
「帆奈もひさしぶりだな」
「あんまりひさしぶりって感じはしませんけどね」
「そりゃあんだけ連絡とってればそうかもしれないけどな。会うのはひさしぶりだろ」
「まあ、そうですが」
帆奈は口では少しそっけない態度を取っているが、内心では再会を喜んでおり、少し頬が赤くなっていた。
そんな帆奈に明日香が不思議そうな顔で声をかける。
「帆奈って焔さんと連絡とってたの?」
「ええ、まあ、いろいろ報告がてら」
そう、帆奈は実のところ、あれからも度々焔とビデオ通話で連絡をとっていた。
なぜか焔だけだったようだが、それもあって他の者ほど焔は帆奈と離れていた感覚がない。
まるで、一人で都会に出てみたら、田舎に置いてきた妹が毎日のように電話してくるような感じだ。
焔はそれを嬉しく思っていた。
「む~」
「明日香様、どうかしましたか?」
「別に~」
「なんかちょっと雰囲気変わりましたね」
「え、そう?」
「はい、なんかますますこどもっぽくなりました」
帆奈がそう言うと、すかさず明日香の軽い手刀が帆奈のおでこに炸裂。
「ますますってどういうこと?」
「えへへ……、まあそのままの意味です」
帆奈は明日香を尊敬しているが、こどもっぽいとも思っていたらしい。
明日香が昔の記憶を取り戻したことによる変化は、帆奈にはこどもっぽく映るようだ。
「うん?」
そんなやり取りの中、帆奈はふと少し離れたところにいた少女に気付く。
「って、呉羽さんじゃないですか!? どうなってやがるんですか!?」
もともと呉羽は明日香たちとそれほどいい関係ではないとされていた。
となれば、その部下である帆奈からすると、こんなところで出会うような存在では到底ない。
なのに目の前にその呉羽がいる。
さすがに驚かずにはいられないだろう。
「こんにちは帆奈さん」
「ど、どうも」
呉羽にぺこりと挨拶をされ、動揺していた帆奈はとりあえず同じようにぺこりと挨拶を返した。
そんな二人を見ていた焔はつい気になって声をかける。
「ふたりは知り合いなの?」
「ええ、明日香さんたちが私を避けるので、代わりに絡んでました」
「絡む……」
焔がちらっと帆奈の様子を見ると、微妙に笑顔が引きつっていた。
どうやら仲良しというわけではなく、本当に絡まれていただけらしい。
「帆奈さん、あの頃はあまり仲良くできませんでしたが、これからはお友達になりましょう」
「え、お友達……?」
「ダメ……ですか?」
「はわっ、かわいい……」
呉羽の必殺上目遣いが炸裂。
帆奈が少しひるんで、頬が赤くなっている。
「ま、まあ、呉羽さんがそう言ってくれるならお友達になりましょう」
「はい、よろしくお願いします」
「ではさっそく今夜は一緒にお風呂に入りましょうね!」
「……え?」
お友達宣言をした途端に、帆奈は目をキラキラさせながら呉羽に詰め寄る。
「フヒヒヒ、あ~早く夜にならないかな~。その白くてきれいな肌、触らせてくださいね」
「ひっ」
豹変した帆奈が気持ち悪かったのか、呉羽は逃げるように焔の背後に回った。
「あ、そうだ、焔さんも一緒に入りましょうね」
「なんでだよ!」
「だって久しぶりに直接会ったんですから、もっと親睦を深めたいじゃないですか! でも呉羽さんとの入浴も捨てられない。というわけで一緒に入りましょう!」
「そんなわけにはいくか!」
「いいじゃないですか、一回一緒に入ったんですから」
「ちょっ!?」
帆奈は何気なく衝撃発言をかまし、その瞬間、焔の背後から冷たい空気が流れてくる。
「一緒に……、入ったんですか焔さん」
「いや、その、俺が入ってるところに帆奈が入ってきたわけで、俺の意思だったわけじゃないよ?」
必死に言い訳をする焔だったが、帆奈はわざとやっているのか、どんどん焔を追い詰めるような発言をする。
「そうですね、私も焔さんというよりは、一緒に入ってたまろんちゃんと入りたくて乱入したんですよ」
「うお~い!? もう黙っててくれませんかね!?」
帆奈の爆弾投下によって、呉羽の目はもはや氷の女王のようになっていた。
そんな呉羽に焔は恐る恐る声をかける。
「呉羽ちゃん、えっと、一緒に入る……?」
「入りません!」
「ですよね~!」
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