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1章 憧れのゲームの世界へ
29話
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「俺、街の外に出るの初めてだな」
「お兄ちゃんは別のクエストだったもんね」
焔たちがむかったのは街の門からでてすぐの平原だった。
いかにも初心者向けの見晴らしのいい場所だ。
ここならモンスターがいたらすぐに気付くことができるだろう。
「しかし何もないな」
見渡しても、海と砂浜と平原しかない。
遠くの方に山があるくらいだ。
「前はこの道をまっすぐ進んだんだよ」
「いったいどこにむかうための道なんだ……」
この島は街がここにしかないはずだった。
他の島への船も街から出ているから、街への移動に使う道ではない。
「とりあえず行ってみる?」
「そうだな、探検だしな」
千歳と焔が先に行き、その後ろに舞依と夏海がついていく。
ただひたすら伸びる道を進んでいく。
モンスターが現れることもなく、ただおしゃべりしながら海沿いの道を散歩しているだけになっていた。
「平和じゃのう……」
「そうだね~」
平和すぎて焔と千歳がお年寄りになっていた。
それを見て夏海が苦笑いをしている。
ずっと左手に海があるので景色はいいのが救いだった。
RPGをしていると、敵が出てくるのが面倒な時もあるが、これはこれで暇なんだなと焔は思った。
その後も散歩状態を続けていると、小さな看板とともに分かれ道が現れる。
「分かれ道だな」
「どっちも同じような道だね」
舞依が言うように、この先も同じようにひたすら道が続いている。
ただ片方は海沿いから外れて島の内部へとむかう道だ。
何かありそうなのはこちらの道だった。
ただ看板には何も書かれておらず、その先に何があるのかはわからない。
「とりあえず今回は海沿いで行くか」
「は~い」
焔が道を決めると舞依が賛成し、千歳と夏海も頷く。
そしてまたしばらく歩いたところで、舞依が夏海の心配をし始める。
「夏海ちゃん、こんなに歩いて体調は大丈夫? おんぶしようか?」
「ありがと、でも大丈夫だよ。やっぱりゲームの世界だし元気みたい」
「そう? 無理はしないでね」
「うん」
その会話を聞いて、焔も千歳に提案する。
「千歳はどうだ? おんぶしようか? お姫様抱っこでもいいぞ」
「だ、大丈夫だよ……」
千歳はそれを聞いて苦笑いしていた。
さらにしばらく進むと、ようやくまわりに変化が現れる。
草原のようだった右側に木や花がたくさん生えてるようになってきた。
そして少しだけ道が上り坂になっている。
そろそろ何かがありそうな雰囲気だった。
「ここからダンジョンとかあったらきついよね」
千歳が焔に話を振る。
「時間的には余裕あるんだけどな、気持ち的には見つけて満足しそうだ」
ここまで一時間近くただ歩いていただけだったので、何かにたどり着くだけで満足してしまいそうな四人だった。
さらに奥に進んでいくと、ついに建物を発見する。
まるでまわりから隠しているかのように木に囲われている神殿だった。
街にある神殿によく似ている。
というよりほぼ同じ造りだ。
「怪しい場所だな……」
「これ入ったら閉じ込められたりするんじゃない?」
焔と舞依は今までの経験から怪しげな気配を感じ取る。
「ゲーム開始序盤でそんな危険な場所あるかな?」
千歳はそういった経験があまりなかったようで警戒している様子はなかった。
「焔さんは結構そういうイベントに遭遇しますよね」
「やっぱり俺みたいなのって特殊なのか」
「多分……」
夏海はよく焔が閉じ込められたりしているところを見ていたりするので、焔の心配は理解できた。
焔はいいことも悪いことも、低い確率のものを引き当てる傾向がある。
基本的にはいいことが起こることが多いのだが、今回きっと何かが起こると警戒するのは自然だった。
「まあ、もう一回ここまで来るのは大変だし、中に入るとしますか」
「うん!」
焔がそう言って中に入ろうとする。
舞依たちも頷いて後に続く。
外観は街の神殿に似ていたが、その中はまったく別のものだった。
こちらは教会のような内装で、もしここで戦闘なんてことになったらかなり足場が悪い。
警戒を強めつつ、奥へと進んでいく。
「教会なんて初めて入ったな」
「そうだね、ゲームでしか入ったことないもんね」
「まあここもゲームっちゃゲームだけどな」
焔と舞依の会話を聞きつつ、千歳や夏海も教会は初めてでキョロキョロとしていた。
「教会って結婚式とかするんだよね?」
「そうだね」
夏海が少し目を輝かせながら舞依に話しかける。
「俺、結婚式用の教会があるんだと思ってた」
「そういう場所もあるんだよ、あとホテルとかもね」
焔はあまりそういうことに詳しくなく、千歳が補足をいれる。
「普段お参りする神社でも結婚式とかあるじゃない? それと同じだよ」
「そういえばそうか。俺は神社派だな」
「そうなんだ。じゃあ焔と結婚する人はウェディングドレス着れないんだね」
「あれ、俺はこれだけの理由で結婚から遠のいてしまうのか?」
「そんなことはないかもだけど……」
「まあ別に強くこだわってるわけじゃないからな、千歳がウェディングドレス着たいっていうならそっちでいいんだぞ」
「ありがとう焔」
焔と千歳が結婚を前提に話をしていく。
そんなことはよくあることなので、このメンバーでは気にする者がいなくなっていた。
千歳が本当は男であることも完全にスルーされている。
「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんの好きな方でいいからね」
「舞依を嫁に出すつもりはない」
「やだな、お兄ちゃんとの結婚式だよ」
「そうか、ならいいんだが」
よくないだろうと、ツッコみが入りそうな会話が続く。
夏海は少し離れて、三人の話に入らないようにしていた。
距離をとって苦笑いする、よくある光景だった。
話が終わった後、特にイベントが起こらないのでこの場所を調べ始める。
何も起こらないということは、まだ奥へ進む道があるかもしれないと焔たちは考えていた。
焔の経験上、こういう場所は台座やその付近が怪しいと思い、一番に目をつける。
地下への階段とか、そういったものが出てくると思われたが、見つかったのは台座の裏にプリントされた二次元コードだった。
「なんでこんなところに……」
焔はデバイスのアプリの中にコードスキャナーがあるのを見つけていたので、それを使って読み込んでみる。
すると、焔のデバイスにとあるフォルダがダウンロードされてきた。
怪しいと思いながらも、セキュリティスキャンも通ったため開いてみることにする。
その中から出てきたものは、焔にとって最高のお宝画像、汐音の写真だった。
「もしかして、ここは英雄である汐音さんを崇めている場所なのか? これは信者たちが集めたお宝とか?」
あまりにかわいく美しい汐音の姿たちに焔の心臓が高鳴る。
清楚で可憐な姿を見ているだけで、焔は昇天しそうな気分だった。
しかし画像をスライドしていくうちに様子が変わってくる。
だんだんときわどい画像が増え、水着なのか下着なのかわからないようなものまで出てくる。
画像に関して目の利く焔は、途中からそれらが合成画像であることに気づいた。
汐音信者たちの暴走だろうか。
画像はどんどん過激さを増していき、ついに焔の求めるものものが姿を現す。
それは英雄汐音様の生まれたままのお姿だった。
あまりの神々しさに、焔の頭の中が真っ白になる。
もちろん合成なのだが、あまりに精巧なため、満足度の高いものだった。
焔はこれを作った誰かに、心の底から感謝をした。
さらに数点画像が続き、焔は幸せの絶頂にいたが、その時もう一つフォルダがダウンロードされていることに気づく。
ドキドキしながらそのフォルダを開いた焔は、一気に地面に墜落したような気持ちになった。
その中身はなんと、焔自身の全裸画像集だったのだ。
「完全にねつ造してるじゃないか……、いったいどこのどいつがこんなことを」
英雄である汐音ならともかく、なぜ焔の画像がこんなところに存在するのか。
可能性があるとしたら、焔の母くらいだろう。
焔を特別に扱い、さらに運営側にいる人間なんてそれくらいしかいなかった。
絶対にそうとは言えないが、焔としては一番怪しい人物だと思った。
(今度会ったら自分の画像と交換させてやろうか……)
一通り画像に目を通したところで、教会の探索を再開する。
しかし他には特に何も見つからず、みんなでいったん集まった。
「何か見つかったか?」
「何にもないね~」
焔が他のみんなに聞いてみるが、舞依は特に何も見つけられず、他の二人も同じだった。
「結局何もないのか……、わざわざこんな離れたところに教会だけ作ったなんてことあるか?」
「う~ん、もしかしてイベントを作る前に世界が変わっちゃったとか?」
「あ~、なんかありそうな話だな……」
焔の疑問に千歳が予想で答えるが、なんとなく焔は納得してしまった。
結局ここはゲームの世界ではなく、元ゲームの世界ということなのだろう。
なので今はなんの意味もない建物や場所だって存在するということだ。
もちろん今後ここで重要なイベントが発生する可能性があることを、焔は完全に捨てているわけではない。
ゲームによっては開始時の街がラストバトルの地になるものだってある。
特にこの教会は汐音を女神のように扱っているようなので、焔は可能性としてゼロではないと思っている。
「どうするかな、もういったん戻って、あの時の分かれ道の逆側行ってみるか?」
焔はまず舞依に提案をしてみる。
「うん、そうだね、ここはもう何もなさそうだもんね」
舞依はすぐに賛成し、他の二人からも特に反対はなさそうだった。
「じゃあ、暗くなる前には帰りたいし、いけるとこまで行ってみるか」
「了解!」
焔たちはこの場所に見切りをつけて足早に撤収していく。
何も見つけることのできなかった教会だったが、焔たちが去った後、その後ろ姿を見送るものがいた。
実は焔たちが着いた時にはすでに教会内におり、ずっと姿を隠していたのだった。
四人がかりの探索を乗り切り、気配すら感じ取らせないのだから相当な実力者であろう。
「……まあ今はいいかしらね。あの子たちが明日香の言ってた子たちなら、またそのうち会うことになるでしょうし」
その女性はそうつぶやいた後、すぅっとその場から姿を消した。
「お兄ちゃんは別のクエストだったもんね」
焔たちがむかったのは街の門からでてすぐの平原だった。
いかにも初心者向けの見晴らしのいい場所だ。
ここならモンスターがいたらすぐに気付くことができるだろう。
「しかし何もないな」
見渡しても、海と砂浜と平原しかない。
遠くの方に山があるくらいだ。
「前はこの道をまっすぐ進んだんだよ」
「いったいどこにむかうための道なんだ……」
この島は街がここにしかないはずだった。
他の島への船も街から出ているから、街への移動に使う道ではない。
「とりあえず行ってみる?」
「そうだな、探検だしな」
千歳と焔が先に行き、その後ろに舞依と夏海がついていく。
ただひたすら伸びる道を進んでいく。
モンスターが現れることもなく、ただおしゃべりしながら海沿いの道を散歩しているだけになっていた。
「平和じゃのう……」
「そうだね~」
平和すぎて焔と千歳がお年寄りになっていた。
それを見て夏海が苦笑いをしている。
ずっと左手に海があるので景色はいいのが救いだった。
RPGをしていると、敵が出てくるのが面倒な時もあるが、これはこれで暇なんだなと焔は思った。
その後も散歩状態を続けていると、小さな看板とともに分かれ道が現れる。
「分かれ道だな」
「どっちも同じような道だね」
舞依が言うように、この先も同じようにひたすら道が続いている。
ただ片方は海沿いから外れて島の内部へとむかう道だ。
何かありそうなのはこちらの道だった。
ただ看板には何も書かれておらず、その先に何があるのかはわからない。
「とりあえず今回は海沿いで行くか」
「は~い」
焔が道を決めると舞依が賛成し、千歳と夏海も頷く。
そしてまたしばらく歩いたところで、舞依が夏海の心配をし始める。
「夏海ちゃん、こんなに歩いて体調は大丈夫? おんぶしようか?」
「ありがと、でも大丈夫だよ。やっぱりゲームの世界だし元気みたい」
「そう? 無理はしないでね」
「うん」
その会話を聞いて、焔も千歳に提案する。
「千歳はどうだ? おんぶしようか? お姫様抱っこでもいいぞ」
「だ、大丈夫だよ……」
千歳はそれを聞いて苦笑いしていた。
さらにしばらく進むと、ようやくまわりに変化が現れる。
草原のようだった右側に木や花がたくさん生えてるようになってきた。
そして少しだけ道が上り坂になっている。
そろそろ何かがありそうな雰囲気だった。
「ここからダンジョンとかあったらきついよね」
千歳が焔に話を振る。
「時間的には余裕あるんだけどな、気持ち的には見つけて満足しそうだ」
ここまで一時間近くただ歩いていただけだったので、何かにたどり着くだけで満足してしまいそうな四人だった。
さらに奥に進んでいくと、ついに建物を発見する。
まるでまわりから隠しているかのように木に囲われている神殿だった。
街にある神殿によく似ている。
というよりほぼ同じ造りだ。
「怪しい場所だな……」
「これ入ったら閉じ込められたりするんじゃない?」
焔と舞依は今までの経験から怪しげな気配を感じ取る。
「ゲーム開始序盤でそんな危険な場所あるかな?」
千歳はそういった経験があまりなかったようで警戒している様子はなかった。
「焔さんは結構そういうイベントに遭遇しますよね」
「やっぱり俺みたいなのって特殊なのか」
「多分……」
夏海はよく焔が閉じ込められたりしているところを見ていたりするので、焔の心配は理解できた。
焔はいいことも悪いことも、低い確率のものを引き当てる傾向がある。
基本的にはいいことが起こることが多いのだが、今回きっと何かが起こると警戒するのは自然だった。
「まあ、もう一回ここまで来るのは大変だし、中に入るとしますか」
「うん!」
焔がそう言って中に入ろうとする。
舞依たちも頷いて後に続く。
外観は街の神殿に似ていたが、その中はまったく別のものだった。
こちらは教会のような内装で、もしここで戦闘なんてことになったらかなり足場が悪い。
警戒を強めつつ、奥へと進んでいく。
「教会なんて初めて入ったな」
「そうだね、ゲームでしか入ったことないもんね」
「まあここもゲームっちゃゲームだけどな」
焔と舞依の会話を聞きつつ、千歳や夏海も教会は初めてでキョロキョロとしていた。
「教会って結婚式とかするんだよね?」
「そうだね」
夏海が少し目を輝かせながら舞依に話しかける。
「俺、結婚式用の教会があるんだと思ってた」
「そういう場所もあるんだよ、あとホテルとかもね」
焔はあまりそういうことに詳しくなく、千歳が補足をいれる。
「普段お参りする神社でも結婚式とかあるじゃない? それと同じだよ」
「そういえばそうか。俺は神社派だな」
「そうなんだ。じゃあ焔と結婚する人はウェディングドレス着れないんだね」
「あれ、俺はこれだけの理由で結婚から遠のいてしまうのか?」
「そんなことはないかもだけど……」
「まあ別に強くこだわってるわけじゃないからな、千歳がウェディングドレス着たいっていうならそっちでいいんだぞ」
「ありがとう焔」
焔と千歳が結婚を前提に話をしていく。
そんなことはよくあることなので、このメンバーでは気にする者がいなくなっていた。
千歳が本当は男であることも完全にスルーされている。
「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんの好きな方でいいからね」
「舞依を嫁に出すつもりはない」
「やだな、お兄ちゃんとの結婚式だよ」
「そうか、ならいいんだが」
よくないだろうと、ツッコみが入りそうな会話が続く。
夏海は少し離れて、三人の話に入らないようにしていた。
距離をとって苦笑いする、よくある光景だった。
話が終わった後、特にイベントが起こらないのでこの場所を調べ始める。
何も起こらないということは、まだ奥へ進む道があるかもしれないと焔たちは考えていた。
焔の経験上、こういう場所は台座やその付近が怪しいと思い、一番に目をつける。
地下への階段とか、そういったものが出てくると思われたが、見つかったのは台座の裏にプリントされた二次元コードだった。
「なんでこんなところに……」
焔はデバイスのアプリの中にコードスキャナーがあるのを見つけていたので、それを使って読み込んでみる。
すると、焔のデバイスにとあるフォルダがダウンロードされてきた。
怪しいと思いながらも、セキュリティスキャンも通ったため開いてみることにする。
その中から出てきたものは、焔にとって最高のお宝画像、汐音の写真だった。
「もしかして、ここは英雄である汐音さんを崇めている場所なのか? これは信者たちが集めたお宝とか?」
あまりにかわいく美しい汐音の姿たちに焔の心臓が高鳴る。
清楚で可憐な姿を見ているだけで、焔は昇天しそうな気分だった。
しかし画像をスライドしていくうちに様子が変わってくる。
だんだんときわどい画像が増え、水着なのか下着なのかわからないようなものまで出てくる。
画像に関して目の利く焔は、途中からそれらが合成画像であることに気づいた。
汐音信者たちの暴走だろうか。
画像はどんどん過激さを増していき、ついに焔の求めるものものが姿を現す。
それは英雄汐音様の生まれたままのお姿だった。
あまりの神々しさに、焔の頭の中が真っ白になる。
もちろん合成なのだが、あまりに精巧なため、満足度の高いものだった。
焔はこれを作った誰かに、心の底から感謝をした。
さらに数点画像が続き、焔は幸せの絶頂にいたが、その時もう一つフォルダがダウンロードされていることに気づく。
ドキドキしながらそのフォルダを開いた焔は、一気に地面に墜落したような気持ちになった。
その中身はなんと、焔自身の全裸画像集だったのだ。
「完全にねつ造してるじゃないか……、いったいどこのどいつがこんなことを」
英雄である汐音ならともかく、なぜ焔の画像がこんなところに存在するのか。
可能性があるとしたら、焔の母くらいだろう。
焔を特別に扱い、さらに運営側にいる人間なんてそれくらいしかいなかった。
絶対にそうとは言えないが、焔としては一番怪しい人物だと思った。
(今度会ったら自分の画像と交換させてやろうか……)
一通り画像に目を通したところで、教会の探索を再開する。
しかし他には特に何も見つからず、みんなでいったん集まった。
「何か見つかったか?」
「何にもないね~」
焔が他のみんなに聞いてみるが、舞依は特に何も見つけられず、他の二人も同じだった。
「結局何もないのか……、わざわざこんな離れたところに教会だけ作ったなんてことあるか?」
「う~ん、もしかしてイベントを作る前に世界が変わっちゃったとか?」
「あ~、なんかありそうな話だな……」
焔の疑問に千歳が予想で答えるが、なんとなく焔は納得してしまった。
結局ここはゲームの世界ではなく、元ゲームの世界ということなのだろう。
なので今はなんの意味もない建物や場所だって存在するということだ。
もちろん今後ここで重要なイベントが発生する可能性があることを、焔は完全に捨てているわけではない。
ゲームによっては開始時の街がラストバトルの地になるものだってある。
特にこの教会は汐音を女神のように扱っているようなので、焔は可能性としてゼロではないと思っている。
「どうするかな、もういったん戻って、あの時の分かれ道の逆側行ってみるか?」
焔はまず舞依に提案をしてみる。
「うん、そうだね、ここはもう何もなさそうだもんね」
舞依はすぐに賛成し、他の二人からも特に反対はなさそうだった。
「じゃあ、暗くなる前には帰りたいし、いけるとこまで行ってみるか」
「了解!」
焔たちはこの場所に見切りをつけて足早に撤収していく。
何も見つけることのできなかった教会だったが、焔たちが去った後、その後ろ姿を見送るものがいた。
実は焔たちが着いた時にはすでに教会内におり、ずっと姿を隠していたのだった。
四人がかりの探索を乗り切り、気配すら感じ取らせないのだから相当な実力者であろう。
「……まあ今はいいかしらね。あの子たちが明日香の言ってた子たちなら、またそのうち会うことになるでしょうし」
その女性はそうつぶやいた後、すぅっとその場から姿を消した。
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