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ルクスペイ帝国編(シャラン視点)
最期の審判
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※流血暴力表現あり
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
本日、悪逆非道の限りを尽くした公爵家の公開処刑が行われる。
最初は帝国民の前でと言う声も出ていたが、断頭台を見つめているのは、貴族たちだけだ。
陛下が、国民に血生臭いものを見せるのを嫌ったのだ。代わりに大きく公爵家の悪事を知らせたのと、囚われた僕とミカエル様の活躍も同時に伝えた。
当然のように物語や劇になるらしい。
ちなみに、貴族に見せるのは今後の牽制の為でもあると言っていた。
────公爵家ですら、こうなるのだと。
「シャラン、熱は下がったけど、怪我はまだ完治してないよ。心の方だって気を付けろって、フランチェスコ様が言ってただろう?もし、シャランが辛い事を思い出して苦しんだらと思うと、私も辛いよ。」
ミカエル様は、しきりに僕を心配してくれているが、そこは譲ることは出来なかった。
王国の代表として、長年の二カ国に跨った一連の事件の末路を見届けようと決めていた。
そういえば、サピラの言っていた破落戸は、道中にミカエル様達の部隊とバッタリ会って、そのまま拘束されたらしい。破落戸は既に鉱山送りとなっている。
皇帝陛下と皇妃陛下が席に着く。
今回、ガブリエル皇太子殿下は欠席だ。
ここ数日、アレッシア皇太子妃の体調を優先し、心配から傍を離れないで執務をしているらしい。
兄弟揃って同じことをしている。
驚いた事にヤマティ皇国から、シャクナゲ皇太子殿下が参列したいと言い出したが、スズラン嬢が全力で止めていた。
何やら揉めた挙句、映像と音声を魔導具で残しておき、後ほど送ることになったらしい。
皇国華族であり公爵令嬢であり、未来の皇太子妃でもあるスズラン嬢に、謂れなき暴言を吐き続けたサピラに、思うところがあったようだ───それだけでは無いと、意味深にスズラン嬢は言っていたが。
スズラン嬢は、気丈にも皇国の代表として参列すると、キッパリと言い放った。
登壇させられた、四人の公爵家の者達。
淡々と読み上げられ、暴かれる悪行。
人身売買、違法麻薬輸入、違法賭博、領民への過剰重税。数え切れない程の罪が挙げられていく。
「何よりも我が国の皇族どころか、他国の王族を手に掛けようとするなど国家反逆罪と言わずして何と言う。
公爵家は取り潰し領地は今後直轄地として、領民の為に復興を図る。」
公爵夫人は、真実を知りながらも止めることは無かったとして毒杯を賜り、既に罪を贖った。
最後に言うことはないかと、公爵は猿轡を外されたが、公爵は一言も発さず、ただ我が子達を冷たい目で見てから、大人しく断頭台の露と消えた。
続いて嫡男は喚いていたが、最期は無様に命乞いをしながら、その生涯を閉じた。
サピラは自慢の縦ロールを短く切り落とされていた。ミカエル様が手加減せずに雷撃を喰らわせたが、気絶しただけで済んだらしい。そこは公爵令嬢らしく高魔力保持者であったということか。
猿轡を外された途端、いつもと変わらず甲高い声で周りのせいにしている。
今、この状態ですら自分がどんな末路を辿るのか理解していないのだろうか?
うるさすぎて、再び猿轡をされて断頭台の前に立ってようやく理解したようだった。最期まで抵抗して幕を閉じた。
最後は庶子だったユダだ。
ユダは心許なげに貴族たちに目を彷徨わせ、僕を見つけると少し目を見開き、ジッと見つめたままだった。
最期は、ホッと息を吐き、少し微笑んでいたように見えた。
『良かった、お月様。』
……そう呟いた気がする。
その後、大人しくその罪を受け入れた。
ユダは拘束されていた間、僕の安否をしきりに気にしていたようだが、誰も知らせていなかったらしく、最期に見せた微笑は安堵のものだったのかもしれない。
セグレトはエイデンの下で厳しい訓練を受けてる。
家族とも無事再会できて良かったと思った。
その日、ミカエル様と僕は言葉の少ない食事を終えた。ただ寄り添ってソファに座っていた僕達だったけど、ミカエル様が頬と頬を擦り合わせると、
「寝る前に少し飲もうか。」
と、寝酒を用意させた。
なんの説明もなかったけれど、僕も今日の区切りに必要だと思った。グラスを持ち上げて、二人で飲み干した。
眠る時間になっても、とても離れがたくて今夜はひとつのベッドで眠ることにした。
一度、お互いの部屋で汗を洗い流し、僕はミカエル様の部屋にお邪魔した。
本当にただ抱きしめ合って眠るだけでも、ミカエル様の匂いと温かい腕の中で安心して眠れたんだ。
明日には、普段の僕に戻るからね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
本日、悪逆非道の限りを尽くした公爵家の公開処刑が行われる。
最初は帝国民の前でと言う声も出ていたが、断頭台を見つめているのは、貴族たちだけだ。
陛下が、国民に血生臭いものを見せるのを嫌ったのだ。代わりに大きく公爵家の悪事を知らせたのと、囚われた僕とミカエル様の活躍も同時に伝えた。
当然のように物語や劇になるらしい。
ちなみに、貴族に見せるのは今後の牽制の為でもあると言っていた。
────公爵家ですら、こうなるのだと。
「シャラン、熱は下がったけど、怪我はまだ完治してないよ。心の方だって気を付けろって、フランチェスコ様が言ってただろう?もし、シャランが辛い事を思い出して苦しんだらと思うと、私も辛いよ。」
ミカエル様は、しきりに僕を心配してくれているが、そこは譲ることは出来なかった。
王国の代表として、長年の二カ国に跨った一連の事件の末路を見届けようと決めていた。
そういえば、サピラの言っていた破落戸は、道中にミカエル様達の部隊とバッタリ会って、そのまま拘束されたらしい。破落戸は既に鉱山送りとなっている。
皇帝陛下と皇妃陛下が席に着く。
今回、ガブリエル皇太子殿下は欠席だ。
ここ数日、アレッシア皇太子妃の体調を優先し、心配から傍を離れないで執務をしているらしい。
兄弟揃って同じことをしている。
驚いた事にヤマティ皇国から、シャクナゲ皇太子殿下が参列したいと言い出したが、スズラン嬢が全力で止めていた。
何やら揉めた挙句、映像と音声を魔導具で残しておき、後ほど送ることになったらしい。
皇国華族であり公爵令嬢であり、未来の皇太子妃でもあるスズラン嬢に、謂れなき暴言を吐き続けたサピラに、思うところがあったようだ───それだけでは無いと、意味深にスズラン嬢は言っていたが。
スズラン嬢は、気丈にも皇国の代表として参列すると、キッパリと言い放った。
登壇させられた、四人の公爵家の者達。
淡々と読み上げられ、暴かれる悪行。
人身売買、違法麻薬輸入、違法賭博、領民への過剰重税。数え切れない程の罪が挙げられていく。
「何よりも我が国の皇族どころか、他国の王族を手に掛けようとするなど国家反逆罪と言わずして何と言う。
公爵家は取り潰し領地は今後直轄地として、領民の為に復興を図る。」
公爵夫人は、真実を知りながらも止めることは無かったとして毒杯を賜り、既に罪を贖った。
最後に言うことはないかと、公爵は猿轡を外されたが、公爵は一言も発さず、ただ我が子達を冷たい目で見てから、大人しく断頭台の露と消えた。
続いて嫡男は喚いていたが、最期は無様に命乞いをしながら、その生涯を閉じた。
サピラは自慢の縦ロールを短く切り落とされていた。ミカエル様が手加減せずに雷撃を喰らわせたが、気絶しただけで済んだらしい。そこは公爵令嬢らしく高魔力保持者であったということか。
猿轡を外された途端、いつもと変わらず甲高い声で周りのせいにしている。
今、この状態ですら自分がどんな末路を辿るのか理解していないのだろうか?
うるさすぎて、再び猿轡をされて断頭台の前に立ってようやく理解したようだった。最期まで抵抗して幕を閉じた。
最後は庶子だったユダだ。
ユダは心許なげに貴族たちに目を彷徨わせ、僕を見つけると少し目を見開き、ジッと見つめたままだった。
最期は、ホッと息を吐き、少し微笑んでいたように見えた。
『良かった、お月様。』
……そう呟いた気がする。
その後、大人しくその罪を受け入れた。
ユダは拘束されていた間、僕の安否をしきりに気にしていたようだが、誰も知らせていなかったらしく、最期に見せた微笑は安堵のものだったのかもしれない。
セグレトはエイデンの下で厳しい訓練を受けてる。
家族とも無事再会できて良かったと思った。
その日、ミカエル様と僕は言葉の少ない食事を終えた。ただ寄り添ってソファに座っていた僕達だったけど、ミカエル様が頬と頬を擦り合わせると、
「寝る前に少し飲もうか。」
と、寝酒を用意させた。
なんの説明もなかったけれど、僕も今日の区切りに必要だと思った。グラスを持ち上げて、二人で飲み干した。
眠る時間になっても、とても離れがたくて今夜はひとつのベッドで眠ることにした。
一度、お互いの部屋で汗を洗い流し、僕はミカエル様の部屋にお邪魔した。
本当にただ抱きしめ合って眠るだけでも、ミカエル様の匂いと温かい腕の中で安心して眠れたんだ。
明日には、普段の僕に戻るからね。
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