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ルクスペイ帝国編(シャラン視点)

シャランと情報交換

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 貴族のほぼ全員が帝都に集まる社交シーズンの最後を飾る、王家主催の夜会。
 そこで正式に僕はミカエル様の婚約者だと紹介される。
 そんな大規模な夜会が数日後に迫り、誰もが忙しい中、わざわざスズラン嬢とミラ嬢が時間を合わせて訪問してくれた。

「とうとう、サピラ公爵令嬢と遭遇したとお聞きしました。本当なら、もっと早くシャラン殿下にお会いしたかったのですが、私も容疑が掛かっても仕方がない状況でしたので、今日まで大人しくしていました。」

 皇太子妃教育をほぼ終わらせたと聞かされていたスズラン嬢が、今は肩を落とし項垂れている。思わずミラ嬢を見ると困った顔をして頷く。
 僕はスズラン嬢がここまで責任を感じているとは思いもよらず、慌てて慰めることにした。

「スズラン嬢の容疑など無かったも同然、一瞬で吹き飛ぶ程度の話だよ?  事件直後に手紙を書いたと思うけど、本当に心配は要らなかったんだよ。
 そちらの方に居たネズミも見つけて排除したのでしょう? こちらにも一匹居たけど、早々に捕まえたんだ。下っ端だから、情報はあまり出なかったのだけれど。でも、そちらのネズミと通じていたんだよね。」

 スズラン嬢が、顔を上げ答えた。

「はい。新入りだったのと、殿下の所にいたネズミと繋がっていた事、そして情報は同じ男に渡していた、という事しかわかりませんでした。」

 僕はスズラン嬢に続いて話す。

「他にも新入りの侍従が姿を消していたんだよ。その男が例の下剤入りのものを持ってきたとのことだった。失礼な話だけど正直なところ、直接会ってみたサピラ嬢に、そこまでの人脈と知恵があるとは思えない、というのが印象かな。」

 ミラ嬢が、頷いて学園での出来事を教えてくれた。

「私達も、サピラ嬢に散々色々な事を言われてきましたが、あの方は直接ご自分の目に見えるところで嫌がらせをしてきます。
 あの甲高い声から繰り出される口撃が一番多いですし、直情的な令嬢です。
 確かに、シャラン殿下に会えない状況だった、と言われればそれまでですが、入れ知恵をした人物がいたのではないかと思うのです。」

 ミラ嬢の学園時代の話と、僕の印象は一致する。
 頷いてから、少し考えて質問してみた。

「あの二人の護衛騎士は、学園の時からいつも連れて歩いているの?」

「いいえ。初めて見たのは卒業直後の夜会でしたね。しきりに自慢して歩いていたので、よく覚えています。」

 スズラン嬢も少し浮上してきたようだ。

「私に向かって、シャクナゲ様と交換しても良いと言われて、本国に貴女の事を連絡すると言ったら、両脇にいた二人が慌てて謝罪してきたのです。
 そんな事で済むと思っているのかと言ってやりましたわ。勿論遠回しにですけど。それでも理解出来なかったようなので、正式に公爵家に抗議したのよ。
 もちろん、シャクナゲ様にも言いつけてやりました。当然のことながら、サピラ嬢の父親である公爵は、帝国の皇帝陛下からも叱責されたそうです。
 父親が青い顔をして謝罪に来た時も後ろにいたのですよ、あの二人。間違いなく、護衛兼お守りでしょうね。
 さすがに公爵も、危機感をおぼえたらしくて、しばらく謹慎させていたらしく大人しかった時期もあったのですけど、動き出した途端、このような事を起こしているなんて。」

 スズラン嬢は、項垂れているより、怒りをあらわにしていた方が良い……と、いうのもどうかと思うが、少し安心した。普段は凛とした未来の皇太子妃に相応しい令嬢だと聞いているが、僕達の前では表情豊かな女性だ。

「 まあ、ほぼそうなんだろうけど、あの黒髪紫眼の護衛が遮ったからね……厄介だなあ。
 ミカエル様やエイデンの方でも動いてくれているらしいから、何か掴んでいるかもね。
『ちょっと進展したよ。』と、ミカエル様から聞いたから。」

 ミラ嬢もエイデンに同じように慰められたらしく、頷いている。

「職務上の事なので、流石に詳しくは知らされませんけど、素性を調査していく上で内通者が出来たらしく、情報が入りやすくなったとか。一気に片付くと良いですね。」

 その後、届けられた物がどのようなものだったのか、面白おかしく説明して、二人を和ませた。
 スズラン嬢は、かなり憤慨した様子だった。

「今回の事が落ち着いたら、またお茶会で本物のおはぎを披露します!」

 と怒り気味に言っていた。

 帰る頃には、来た時より明るくなった二人を見て、僕はほっとして見送りしたのだった。

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