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ルクスペイ帝国編(シャラン視点)
新しい家族と忙しいミカエル様
しおりを挟む到着すると、皇帝陛下と皇后陛下、皇太子殿下と皇太子妃殿下に熱烈歓迎された。
本当に歓迎されていて安心しつつ、形式に沿って挨拶をさせてもらう。
「お義父さま、お義母さまと呼んでくれないのか……?」
と、悲しげに皇帝陛下に言われて断れるだろうか?
「もちろん、私達のことはお義兄様、お義姉様と呼んでくれるよね?」
と、皇太子殿下……お義兄様に中性的な美しいお顔に物凄い圧の笑顔で言われて断れる者などいるのだろうか?
「───これからよろしくお願いします。お義父様、お義母様、お義兄様、お義姉様。」
みんなに大喜びされたので、良かったとしか言えない。
背後からは、ぎゅうぎゅうとミカエル様が抱きしめていて、とても嬉しそうに、
「シャランは可愛いだろう?」
と、みんなに自慢する。
僕が照れて赤くなると、ミカエル様は「可愛い」を連呼してくる。
帝国で僕達のやり取りを初めて見た周囲にいた者達が、動揺を必死に隠しているのを肌で感じた一幕だった。
帝国の王宮はとても大きい。
もちろん王国の王宮も大きかったが、そんなものの比ではない。
「僕、ちゃんと部屋に戻れるのかな……?」
思わず不安げに呟くと、安心させようとするように答えてくれる。
「長年仕えているものでも、普段とは違う区画に行くと迷子になりますので、シャラン殿下はおひとりでは歩かせないようにと、ミカエル殿下から言われております……理由は他にもありますが。」
僕付きとなった者がそう教えてくれた。正直、あまり安心は出来なかったけど、徐々に慣れていこうと心に決めた。
ちなみにミカエル様は到着早々、溜まりに溜まった書類を片付けるために執務室に連行されて行った。
王国から護衛のイノックスと侍従のステンレスが夫夫で帝国まで着いてきてくれたお陰で、僕は落ち着いて帝国で暮らせている。
帝国で専属となった者たちも、好意的に感じるのでまったく不安はなかった。
ミカエル様にお願いして、帝国の歴史と帝国式の礼儀作法、魔法の勉強をするための家庭教師をつけて貰って、早く馴染めるように頑張っている。
部屋は隣同士なのに、帰国してから留守にしていた分と、外遊先から持ち帰った案件で物凄く忙しいミカエル様とは、完全にすれ違いの生活を送っていた。
ミカエル様の部屋と僕の部屋の間には二人の寝室があるが、結婚するまでは利用しないとミカエル様が宣言して、まだ使われていない。
ということで個人の部屋のべッドでお互い寝ている状態だ。
「シャラン側の扉の鍵はちゃんと掛けておいて。私が寝込みを襲わないように。」
そう軽口を言って鍵を渡してくれた。
────内緒だけど、鍵は開けっ放しだ。
顔は見れなくても、少しでもミカエル様と繋がっていたかったから。
「シャラン殿下、ミカエル殿下からお花とお手紙が届きました。」
「本当?! 凄く嬉しい!」
侍従のステンレスから、赤いカーネーションと手紙を受け取り胸に当てる。王国での手紙も、赤いカーネーションと共に貰った事を思い出す。
『貴方に会いたくてたまらない』
僕もそうです。と、心の中でつぶやく。僕の方からは、毎日手紙を書いている。
『返事は気にしないで下さい。』と、日々あったことをミカエル様に伝えている。
多分、他からも報告は入っているのだろうけど、僕の自己満足だ。ミカエル様の時間に余裕があった時に、こうやってお返事が来る。そっと開封して読み始める。
『毎日、シャランに会いたくて恋しいよ。
せめて、食事の時間が取れれば良いのに。
早く仕事を終わらせて、シャランとゆっくり過ごせる事を楽しみにしているよ。
今日は国立図書館に行くんだよね?
気を付けて行ってらっしゃい。』
一言だったとしても嬉しいのに、恋しいと言ってくれる。花言葉で気持ちを伝えてくれる。
運良く廊下で会った日には、ミカエル様は僕に突撃して、抱きしめてくれる。
「シャランが足りない。寂しい、寂しい……。」
そう言ってくれる。
「今日、会えて嬉しいですミカエル様。目の下のクマが酷いですよ。お忙しいでしょうけど、ちゃんと食べて、寝てくださいね。」
そう言って抱きしめ返す。最初はミカエル様の行動に驚愕していた方々も、今ではニコニコ見守っていてくれるのだ。
ミカエル様の気持ちは充分伝わってくる。
だから、僕は今出来ることを頑張っていこうと思えるんだ。
僕は学校創設についての歴史を調べる為に 国立図書館にきた。
王国と帝国の良いところを掛け合わせた、魅力ある学校にしたい。後日、帝都内の学園にも見学と学園長の話を聞けるように手配して貰っている。
本当は、学園都市の視察もしたいが、これは関係者が揃った次の段階の話だよね。
僕はふと、ミカエル様の話を思い出した。
王国民が芸術に触れる機会を増やすために、帝国の劇団を王国に招待するのはどうだろうか? 大衆小説も良いかもしれない。そんな事を考えながら、館内を歩いていると、小さな声で、
「あっ!」
と、言う声を聞いた。
そちらに視線を向けると、驚いた様に手で口を抑え、目を大きくした人がいた。
僕と同じくらいの年齢の銀髪の女性だった。
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