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プロスペロ王国編(ミカエル視点)

シャランは剣術が好き?

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「あれ?  おはよう、シャラン。急ぎの用事?」

「おはようございます。ミカエル様。
 いいえ、朝は剣の鍛錬をしてると聞いたので見学です。気にせず続けて下さい。」

 まだ、冷んやりとした空気の中、鍛錬をしていた私のところに、シャランがやってきた。早朝から会えるのはとても嬉しい。

「じゃあ、少し退屈かもしれないけど、見ててくれる? シャランがいてくれると、私も頑張れるよ。」

 そう言って笑いかけると、少し頬を染める。
 ───可愛いな。

 そこからは、雑念を消して、エイデン相手に模擬戦だ。幼い頃から撃ち合ってきた私達は、相手の弱点を熟知している。

 最初は確かめるように型通りのものだったが、暫くするとエイデンが仕掛けて来た。そこからはひたすら相手の隙を突き、凌がれ反撃が来ると捌く。またこちらから仕掛ける。
 徐々に研ぎ澄まされていく感覚に時間を忘れる。エイデンが間合いを取った事で、今日の鍛錬が終わったことを知る。

 漸くシャランが居たことを思い出し、慌ててそちらを見ると、両手を組んで全身キラキラしているシャランがいた。

「し、シャラン?」

「カッコよかったです……。ファッチャモ兄様とは違う、舞うような剣なのですね……カッコよかったです。」

 私を見る目がうるうるして、約束通りピアスもしてない為、キラキラし放題のシャランに、私も耳が熱くなるのを感じる。

「気に入ってくれたのか。嬉しいな。エイデンとは違う師匠に師事したんだよ。力で負けて悔しくてね。」

「剣は力強いものだとばかり思っておりました。ミカエル様の剣は美しく舞っている様でした。」

「ありがとう、シャラン。照れるな───さあ、もう少しで朝食だ。一緒に食べてくれるかい?」

「勿論です! 私も着替えたら、迎賓館へ行きますね。見学させていただきありがとうございました。では、後ほど。」

 機嫌良く戻る後ろ姿が、まだキラキラしている。

「良かったですねぇ、ミカエル様。シャラン殿下が物凄く見惚れていましたよ。」

 エイデンが、にこやかに話しかけてくる。

「意識してくれていると思っても、自惚れではないよな?」

「あれだけキラキラしてたんですよ。……ただの剣術好きでなければ。」

「喜びに水を差すな。」

 軽口を言いながら汗を流しに行った。


 暫くすると、約束の時間になりシャランがやって来た。朝食を食べながら、先程の稽古の話になった。

「私と兄上……ガブリエル皇太子は、同じ師匠に師事したんだよ。私は最初、エイデンと同じ師匠が良いと思って、我儘を言って始めたけど、やはり力で勝てないのが悔しくてね。
 その後、大人しく言うことを聞いて兄上と稽古していたら、こちらの方が私に合っていたんだよ。
 ここ数代、細身の男子が続いてるんだ。体質なのかな? 病弱なわけではないよ。むしろ健康だ。私が珍しく大きく育ったんだよ。」

 私自身も細身の方ではあるが、しっかり筋肉は付いている。これはもう遺伝としか言いようがない。

「ガブリエル兄上は、私よりも線が細く中性的なんだ。ちなみに兄上は、辺境伯の令嬢だった剣術の出来る義姉上に一目惚れをして、策を練り見事心を射止めたんだよ。
 同性に絶大な人気を誇った義姉上が皇太子妃になった時、何故か皇太子である兄上を護る女騎士の格好をした義姉上との絵姿が爆発的に売れたんだ。
 男児二人を産み、現在第三子目を妊娠中。帝国は安泰だよ。」

 だから、シャランは安心して帝国に来て欲しい、と内心で付け足す。

「僕は護身程度しか習っていません。皇太子妃殿下は凄いですね。」

 興味深そうに聞いていたシャランは、少し羨ましそうに言った。もしかしたら、本当に剣術が好きなだけなのだろうか?エイデンの軽口を思い出し、チラリとエイデンを見ると、サッと視線を逸らされた。

「───良かったら、一緒に鍛錬するかい?」

「是非っ! あ、でもお邪魔じゃないですか?」

「もちろんだよ。」

「では、よろしくお願いします。」


 その後わかった事がある。
 シャランの言う『護身程度』は、イノックスにより鍛えられており、その辺の騎士などでは華麗に受け流されてしまう。

 援軍を待つまでの体力さえあれば、問題ないレベルだった。その体力も魔力で底上げ出来ている。
 イノックスに聞いたが、シャランは攻撃に転じようとすると、躊躇いが出てしまい隙が生まれるので、護り一択らしい。

 普段、イノックスとしか鍛錬していなかった為、本人も気付いていなかった様だ。私やエイデンの剣も最初は焦って受けていたが、徐々に慣れていった。

「シャラン、私達の剣をこれ程に受け流せるなら、自信を持って良いよ。」

「ありがとうございます。」

 シャランの侍従が、皆に冷えた飲み物を渡してくれた。最後にイノックスのところに行くと二人の距離が近い気がする。私が不思議に思っている事に気付いたシャランは、思いがけないことを言った。

「侍従のステンレスと護衛騎士のイノックスは夫夫なんです。二人とも空気感が似ていてお似合いですよね。
 ───実は、シロツメクサを持って帰った日に、あの泉のある場所でプロポーズされたのだと、ステンレスから聞いちゃいました。」

 シャランの護衛騎士のイノックスは、思い出の場所を教えてくれたのか。しかも、自身のプロポーズが成功した場所を。

「それは、私も負けていられないな。シャラン、シロツメクサの花言葉を忘れないで?」

「───!!」

 一気に顔を赤くしたシャランは、魔力が飛び散るのを必死に抑えていたみたいだが、代わりに全身発光している様に見えた。

 それはそれでとても可愛い姿だった。

 ちなみに、エイデンとイノックスの模擬戦でも多少見られるが、シャランは私の剣技を見る時にキラキラが増すので、少なくとも剣技は好まれている様だ。

 ───剣技も私の一部のはずだ。好かれていると思いたい。

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